街の希望となり、ラップスターを夢見る GANG51E JUNE - Kisses 2 The Sky (2023)
アメリカの中南部に位置するオクラホマ州は、古代の山々、大草原、東部に森林などがあり、いずれも厳しい天候に見舞われやすい地域で知られています。
歴史的には、ミシシッピ川の東から排除された政府公認のネイティブアメリカンの領土であり、テキサスや関連地域からのキャトルドライブ(牛の群れを移動させること)のルートであり、南部の入植者の目的地でした。
音楽シーンでは、カントリーミュージックのシンガーが多く生まれた地として知られており、中でもGarth Brooksは、かつてのビートルズが記録した6枚のダイヤモンドアルバムを超えて、音楽史上唯一、アメリカで9枚のアルバムをリリースしたアーティストとなりました。
また、同郷のReba McEntireは、1970年代からビルボードのホットカントリーソングチャートに100曲以上のシングルをチャートインさせ、そのうち25曲が1位を獲得しています。
そのほかにもToby KeithやBlake Sheltonなど、カントリーミュージックのシーンに影響を与えたアーティストを数多く輩出したこの地から、今回はラッパーのGANG51E JUNEをピックアップ。
ここでは、彼の新曲「Kisses 2 The Sky」とこれまでのキャリアについて解説します。
レーベル : GANG51E JUNE, LLC & Atlantic Records
リリース日 : 2023年1月13日
名前 : GANG51E JUNE
出身地 : オクラホマ州北タルサ
GANG51E JUNE - Kisses 2 The Sky (2023)
キャリア
GANG51E JUNEはオクラホマ州北タルサの出身で、この地域は1980年代後半から1990年代前半にかけてクラックやコカインの氾濫と近隣のギャングによる暴力が蔓延した治安の悪い地域として知られています。
1980年から1983年にかけてのギャング関連犯罪が顕著になり、1990年には1981年のピーク時から最も多い60件の殺人を記録しています。
今でも北タルサは市内で最も犯罪率が高く、日本の観光メディアサイトでも注意喚起されるほど危険な地域とされています。
このような環境で育ったGANG51E JUNEは、家庭環境に恵まれず、ギャングなどの暴力に囲まれていたため、祖母は常に彼こそがタルサから脱出できるチャンスがあると常に信じ、彼にThe Hopeというニックネームを付けました。
また、2パックやニプシー・ハッスルに影響を受け、祖母と一緒に教会でリリックを書き始め、その後GANG51E JUNEは、家族やストリート(51st)だけでなく、自分が街の希望であることを実感するようになりました。
そして2020年、デビュープロジェクト「Preaching from the Projects」をリリースし、ジャネット・ジャクソンの「Any Time, Any Place」をサンプリングした収録曲「Base’ Body」はYouTubeで390万再生を記録。
GANG51E JUNE - BASE' BODY (2020)
Janet Jackson - Any Time, Any Place (1993)
2022年、Kevin Gatesをゲストに迎えた2作目のプロジェクト「This 2 Shall Pass」をリリース。
この作品の制作過程で、友人や父親を亡くしたことを自身のInstagramで明かしています。
兄弟・・・嘘もつけないよ・・・。
俺はこのプロジェクトで血を流したんだ。
これを作っている間に、たくさんの事が俺に起こった。
友人や家族と仲違いしたり、子供に恵まれたり、一緒にこのプロジェクトを始めた人(DTRE)を失ったり、パパを失ったりね。
この曲を聴く準備はみんなより俺の方が出来ているはずだ。
この曲は1時間のストリート・サービスになるんだ🖤
これを聴いたら、俺の世界に足を踏み入れることになる。
人生には多くの困難が待ち受けているが、真実であり続ける人は常にトップに立つことができる。
全ての愛と、俺と立ち上がってくれたすべての人たちに永遠に感謝するよ!
GANG51E JUNE feat. Kevin Gates - 4Reign Gangsta (2022)
続けて同年末には、3作目のプロジェクト「It's Hard Being A MoonStar」(2022)をドロップ。前述の「BASE' BODY」と同様、サンプリングしたビートを中心とし、彼のメロディアスなラップが多く収録されています。
GANG51E JUNE - Fall 4 You (2022)
気になる「Kisses 2 The Sky」 のサンプリングソースは？
GANG51E JUNEの2023年最初のシングルとなるこの曲は、YoungBoy Never Broke Againの楽曲を多く手掛けるMook On The Beatsと、Lil DurkやRod Waveなどを手掛けるTre Gilliamが共同プロデュースしています。
そんな、心地よいコーラスとメロディが印象的なこの曲は、アトランタで結成されたR&BグループJagged Edgeの「Heartbreak」(1999)をサンプリング。
この曲は、R&BグループNew Editionのヒット曲「N.E. Heart Break」(1989)にちなんで名付けられたJagged Edgeのセカンドアルバム「J.E. Heartbreak」(1999)に収録され、アルバムはR&B/Hip Hopチャート1位を獲得しています。
Jagged Edge - Heartbreak (1999)
おわりに
ゲットーから脱出するために音楽での成功を夢見るGANG51E JUNEは、オクラホマのラップシーンで急速に注目を集め、アメリカの音楽メディアからも高く評価されているようです。
未だカントリーミュージックの影響力が色濃く残るオクラホマから、新たなラップスターが誕生するのか？
その未来を是非ご自身の耳で確かめてみてはいかがでしょうか。
こちらで紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️
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