『Y2K!』で再解釈される2000年代、アイス・スパイスの視点とは?
ニューヨークのブロンクスで、ナイジェリア系アメリカ人の父親とドミニカ系の母親の間に生まれたIce Spice(アイス・スパイス)。彼女は2021年に音楽活動を開始し、翌年にはMartin GarrixとBebe Rexhaによるヒット曲『In The Name Of Love』(2016)をサンプリングした『Name of Love』をリリース。この楽曲はSoundCloud上で多くの注目を集め、Ice Spiceの名前を広く知らしめました。
2022年夏には、ノトーリアス・B.I.G.のバックDJとして知られるDJ Enuffの息子、RiotUSAがプロデュースしたシングル『Munch (Feelin' U)』を発表。この曲がTikTokでバイラルヒットとなり、一躍話題に。これをきっかけに、彼女は10K ProjectsとCapitol Recordsと契約を結び、さらにラップ界のスター、ドレイクから彼のフェスティバルに招待されるなど、一層注目を集めました。そして2023年1月には、デビューEP『Like..?』をリリースし、その独自のスタイルでリスナーを魅了しています。
さらに、2024年7月には待望のデビューアルバム『Y2K!』を発表。今回の記事では、この最新作にフォーカスし、その魅力を深掘りしていきます。
レーベル : 10K Projects, Capitol Records, Dolo Entertainment
リリース日 : 2024年7月26日
名前 : Ice Spice
本名 : Isis Naija Gaston
年齢 : 24歳
出身地 : ニューヨーク、ブロンクス
全米チャート席巻とグラミー賞ノミネート: アイス・スパイスの2023年の成功
デビューEPを皮切りに、アイス・スパイスにとって2023年は非常に重要な年となり、多くのオーディエンスやファンから大きな期待を寄せられました。その輝かしい成功についてご紹介いたします。
2023年2月、アイス・スパイスはイギリス出身のシンガー、PinkPantheressをInstagramでフォローしました。それに応え、PinkPantheressは「アイス・スパイスがイギリスに来る際にはぜひ会いたい」とDMを送りました。この交流がきっかけで二人の共演が実現し、シングル「Boy's a Liar Pt. 2」がリリースされました。この曲は全米チャートで3位を記録し、二人にとって初のトップ10入りとなる成功を収めました。
4月には、デビューEP『Like..?』のデラックス版に収録されたニッキー・ミナージュとのシングル「Princess Diana Remix」をリリースし、再び全米チャートのトップ10入りを果たしました。続く5月には、ポップスターのテイラー・スウィフトとのコラボレーションシングル「Karma」を発表しました。アイス・スパイスは以前からテイラー・スウィフトのファンであり、一方でテイラー・スウィフトも自身のツアー中にアイス・スパイスの楽曲を聴き、「新しいお気に入りのアーティスト」と称賛していました。こうした背景から生まれた「Karma」は、アイス・スパイスにとって3曲目の全米チャートトップ10入りを果たしました。
6月には、映画『バービー』のサウンドトラックに収録されたシングル「Barbie World」で再びニッキー・ミナージュと共演しました。この楽曲では、デンマークのポップグループAquaの「Barbie Girl」をサンプリングしており、映画の成功と元ネタの知名度によって世界各国のチャートにランクインしました。特に全米チャートでは7位を記録し、大きな成功を収めました。
これにより、アイス・スパイスは4曲すべてが全米シングルチャートのトップ10入りを果たし、同じ年に複数の曲でトップ10入りを達成した初のラッパーとなりました。
収録曲について
アイス・スパイスは、数々の大物アーティストとの共演を経てリリースされたデビューアルバムについて、成功を期待する声やプレッシャーが多く寄せられていることに触れていますが、彼女自身はそのプレッシャーをあまり気にしていないと述べています。
新作『Y2K!』は、全10曲、23分が収録されたコンパクトな作品に仕上がり、Travis Scott、Gunna、Central Ceeがゲストとして参加しています。
『Phat Butt』
アルバムの幕開けを飾る「Phat Butt」は、冒頭でも触れたRiotUSAがプロデュースした一曲で、彼はアルバムの大部分を手掛けています。この楽曲では、Dem Franchize Boyzの2004年のヒット曲「Oh I Think Dey Like Me」をサンプリングし、自信に満ちた女性の視点を鮮やかに描き出しています。歌詞では、成功した自分に嫉妬する他の女性たちについて語り、自身の魅力や豊かさを堂々とアピール。彼女のスタイルを模倣しようとする人々に対して、自信を持って自身の個性を際立たせ、批判に屈せず成功を堂々と示しています。
Ice Spice - Phat Butt
Dem Franchize Boyz - Oh I Think Dey Like Me (2004)
『Oh Shhh...』
アルバム2曲目『Oh Shhh...』は、Travis Scottとのコラボ曲です。アイス・スパイスはこの曲をマイアミでレコーディングし、その後Travis Scottに送ったところ、彼がこの曲を気に入り、共演が実現しました。
「Oh Shhh...」は、自信や成功、そしてパーティーの盛り上がりをテーマにした曲です。この曲では、銃を持つ強さやダンス、稼いだお金、自分たちの影響力を見せています。Travis Scottのパートでは、彼自身の成功やニューヨークでの生活が描かれており、全体的に彼らの自信や周囲に与える影響が表現されています。
Ice Spice, Travis Scott - Oh Shhh...
『Did It First』
6曲目『Did It First』は、アイス・スパイスとUKのラッパーCentral Ceeのコラボレーションであり、アルバムからリードシングルとして2024年7月12日にリリースされました。この楽曲はリリース前にTikTokで一部が公開され、瞬く間にバイラルヒットとなり、1万件以上の動画で使用されました。
この曲では、パートナーの浮気に対して仕返しをするというテーマが描かれています。アイス・スパイスとCentral Ceeはそれぞれの視点から、浮気に対する反応をラップし、浮気への怒りや関係の複雑さを表現しています。特に「相手が浮気をしたら、自分も同じように仕返しをする」というメッセージが込められています。
また、この曲に関しては、Central Ceeの元恋人であるMadeline Argyとの関係も話題となりました。Madeline Argyは、アイス・スパイスとCentral Ceeが浮気をしていると疑い、彼らの関係がこの曲のマーケティングに利用されたと主張しています。彼女はTikTokで、彼が浮気をしていると感じた経緯や、マーケティング戦略に巻き込まれたという自身の視点を語る5本の動画を投稿し、大きな反響を呼びました。
Madeline ArgyとCentral Ceeは2022年に交際を始め、2023年9月に破局しましたが、2024年6月にはナイジェリアで休暇を共に過ごす写真が流出し、ファンの間では彼らが復縁したのではないかという憶測が広まりました。さらに7月初めには、Central Ceeがロンドンでアイス・スパイスと買い物をしているところを目撃され、2人の関係についての疑惑が深まりました。
その後、7月12日に『Did It First』がリリースされ、歌詞の中でお互いのパートナーを裏切る内容が描かれていることから、これがさらに疑惑を強めました。同じ日にMadeline ArgyはTikTokで自分の視点を語り、Central Ceeとアイス・スパイスがクラブで過ごしていた写真を見たことで関係が終わったと感じたと述べました。アイス・スパイスとCentral Ceeはまだ直接的な反応を示していませんが、この騒動はファンの間で広がり続けています。
Ice Spice, Central Cee - Did It First
『Gimmie A Light』
9曲目『Gimmie A Light』は、イントロからSean Paulの『Gimme the Light』(2002)を大胆にサンプリングしたナンバーです。アルバムタイトルの『Y2K!』は、2000年前後のファッションやカルチャーを指しており、アイス・スパイスは、その当時大ヒットとなっていたSean Paulをサンプリングしたかったと語っています。
この曲では、自信に満ちた女性が自分の魅力をアピールし、他の女性から男性を奪ったり、パーティーを思い切り楽しむ姿が描かれています。また、男性が彼女に夢中になっている様子や、自分の成功に対する誇りも表現されています。全体として、パワーと独立心を強調した内容になっています。
Ice Spice - Gimmie A Light
Sean Paul - Gimme the Light (2002)
おわりに
2000年1月1日に生まれたアイス・スパイスは、その誕生日にちなんでデビューアルバム『Y2K!』をリリースしました。アルバムタイトルには、2000年前後のカルチャーへの深い愛情が込められており、当時のヒットソングをサンプリングすることでその思いを表現しています。彼女自身も、その時代が大好きで、幼少期ながらも強くインスパイアされていると明かしています。
アルバムには、当時のヒットソングを巧みにサンプリングしたトラックが散りばめられており、ノスタルジーと新鮮さが絶妙にブレンドされています。これは、彼女が幼少期に影響を受けた音楽や文化を現代の視点で再解釈し、自身のアイデンティティとして確立していることを示しています。
前作のEP『Like..?』が7曲16分というコンパクトな作品であったのに対し、『Y2K!』は10曲23分で構成されており、一見すると物足りなさを感じるかもしれません。しかし、この凝縮されたアルバム構成は、ストリーミング時代のリスナーの嗜好に合わせ、繰り返し再生されることを意図しているのでしょう。短い中にも濃密なエネルギーとメッセージ性が詰まっており、聴くたびに新たな発見があります。
さらに、アルバム全体を通じて彼女の成長と進化が感じられ、デビュー作としてだけでなく、アーティストとしての新たなマイルストーンとなっています。彼女がどのようにして音楽業界での成功を収め、新世代のアイコンとして台頭してきたかを物語るこのアルバムは、今後の彼女の活躍を予感させるに十分な内容となっています。
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