テイクオフとの絆と音楽の力:クエイヴォの新作アルバム『Rocket Power』
前回の記事で取り上げたMigos(ミーゴス)は、ジョージア州ローレンスビルで結成されたラップグループです。今回は、このグループの一員であるQuavo(クエイヴォ)が2023年にリリースした最新アルバム「Rocket Power」にスポットを当て、収録曲を詳しく解説・紹介します。
レーベル : Capitol Records, Motown Records & Quality Control Music
リリース日 : 2023年8月18日
名前 : Quavo
本名 : Quavious Keyate Marshall
年齢 : 32歳
出身地 : ジョージア州ローレンスビル
「感情、成功、そして敬意:クエイヴォの最新アルバム「Rocket Power」
前回の記事で触れたように、ミーゴスのメンバー、テイクオフの訃報後、クエイヴォは新アルバムから「Without You」と「Greatness」という2曲をリリースしました。
特に「Greatness」は新アルバム「Rocket Power」の主要なシングルで、ジャケット画像にはトロフィーに囲まれたクエイヴォが描かれています。
これらのトロフィーは、彼、そしてミーゴスの3人それぞれの成功と幸運を称える盾や業績であり、取り組んできた音楽キャリアの長い道のりと努力、そして成果を表しています。
彼らの楽曲やアルバムが業界内外でどれほどの評価を受けているかを物語る象徴的なシーンと言えるでしょう。
Quavo - Greatness
2023年5月、クエイヴォは自身のInstagramを通じてライブ配信を行い、ファンに向けて新しい楽曲を披露し、アルバムのリリースを予告しました。
このライブ配信の中で、クエイヴォは新アルバムのタイトルを「Rocket Power」と発表しました。そして、このアルバムタイトルには、テイクオフへの深い敬意が込められていることが分かりました。
彼のInstagram投稿によれば、このアルバムは彼自身の感情を素直に表現したものであることがわかります。
7月には、アルバムから2枚目のシングルとして、Futureをゲストに迎えた「Turn Yo Clic Up」がリリースされました。この曲のリリースから1週間後、クエイヴォは自身のInstagramアカウントを通じてアルバムの正式なリリース日を発表し、「このアルバムは、俺のすべての感情を体現している」と述べています。
Quavo & Future - Turn Your Clic Up
収録曲について
クエイヴォ5年ぶりとなる新ソロアルバムには全18曲が詰め込まれており、テイクオフ、Young Thug、Baby Drill、Hunxhoといったアーティストがゲスト参加しています。
「Fueled Up」
アルバムのオープニング曲「Fueled Up」は、2022年のテイクオフとのアルバム「Only Built for Infinity Links」に収められた「Hotel Lobby」のリリックを引用しています。この引用されたパートは「Fueled Up」の2分44秒から聴くことができます。
※「Fueled Up」の2:44〜
Quavo - Fueled Up
Quavo & Takeoff - Hotel Lobby (2022)
「Patty Cake」
2曲目の「Patty Cake」は、故テイクオフとの共演による迫力溢れるラップが印象的なトラックです。この楽曲のサウンドをより一層際立たせているのは、ミーゴスの公式DJであり彼らの魅力を深く理解するDJ Durelの共同制作にあります。
Quavo feat. Takeoff - Patty Cake
「Hold Me」
6曲目「Hold Me」は、そのタイトル通り「抱きしめて欲しい」という思いを繰り返し歌詞に込めた感情的な楽曲です。
歌詞は、困難な時期や家族の重要性について深く触れています。また、ミュージックビデオでは、クエイヴォがテイクオフの顔がプリントされたシャツを着用し、「EST. 1994 - Infinity」という文字が背中に刻まれています。
この映像では、クエイヴォが家族や友人たちと共に草原に向かい、テイクオフへの追悼の意を込めて空にランタンを放つ情景が描かれています。
Quavo - Hold Me
「Wall To Wall」
8曲目の「Wall To Wall」は、プロデューサーMurda Beatzとのタッグで生まれました。Murda Beatzは、このアルバムの4曲の制作にも貢献しています。この曲では、1970年のThe Georgettesのヒット「Would You Rather」からのサンプリングが特徴で、その温かみのあるコーラスが曲の始めと終わりでに挿入され、聴く者の気持ちを高めてくれます。
Quavo - Wall To Wall
The Georgettes - Would You Rather (1970)
「Stain」
15曲目の「Stain」は、BabyDrillとHunxhoという注目の若手ラッパー2人をフィーチャーしています。このトラックは特に注目すべきもので、イントロ部分ではオーストラリアのトップシンガー、Kylie Minogueのヒット曲「Come Into My World」(2001)が巧みにサンプリングされています。この楽曲は、Kylie Minogueの8枚目のアルバム「Fever」に収録されており、2004年のグラミー賞で「最優秀ダンス・レコーディング賞」を受賞。この受賞は、Kylie Minogueにとって初めての快挙であり、現在も彼女のキャリアの中で唯一のグラミー賞受賞曲として知られています。
Quavo feat. Hunxho & BabyDrill - Stain
Kylie Minogue - Come Into My World (2001)
おわりに
「Rocket Power」はクエイヴォの深い感情と絆を伝えるアルバムです。テイクオフというメンバーであり親族の訃報を背景に、彼の心の中の感情がリアルに伝わります。
アルバムの中で繰り返し触れられるのは、家族の絆、友情の深さ、そして逆境を乗り越える力。それはまるで、彼が音楽を通じてテイクオフに向けての手紙を書いているかのようです。特に「Greatness」や「Hold Me」では、クエイヴォの心の中の葛藤や痛み、そして希望がリアルに伝わってきました。
そして、アルバムを彩るゲストアーティストたち。彼らはクエイヴォの物語の中で特別な役割を果たしており、それぞれのトラックで彼の感情やメッセージをさらに深く、鮮やかにしています。
最後に、このアルバムは単なる楽曲の集まりではなく、クエイヴォの魂の深さ、彼の人生での特別な瞬間、そして彼の未来への希望と意志を伝えるものです。
彼の音楽は、私たちの心の中で永遠に響き続けることでしょう。
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