ソングライターとして才能を開花させるも、レーベルとの確執で活動を休止。アルバムを引っさげて再スタートを切ったRAYEとは?
近年の音楽シーンでは、TikTokやYouTubeなどのSNSでバイラルヒットを記録し、一気にブレイクする新人アーティストが数多く誕生しています。
また一方で、Muni Long、Tems、Lucky Dayeなどのシンガーは、ソングライターとして多くのアーティストに楽曲提供を行い、自らのアーティスト活動の糧にしています。
今回紹介するRAYE(レイ)もアーティストとしての活動をしながら楽曲提供でブレイクの夢を追い続け、2023年に待望のデビューアルバム「My 21st Century Blues」をリリースしました。
今回は、そんな彼女のこれまでの経歴を解説します。
レーベル : Human Re-Sources
リリース日 : 2023年2月3日
名前 : RAYE
本名 : Rachel Agatha Keen
年齢 : 25歳
出身地 : イギリス、ロンドン
経歴
ガーナ系スイス人の母親とヨークシャー出身のイギリス人の父親の間に生まれたレイは、幼い頃から教会でゴスペルを歌い、14歳でアデルやエイミー・ワインハウスを輩出したパフォーミングアートカレッジBRITスクールに入学します。
RAYE - HOTBOX
2014年、在学中にジェネイ・アイコやドレイクに影響受けたという初のEP「Welcome to the Winter」をリリースするも、BRITスクールを2年で中退。
しかし、この作品をイギリスのエレクトロポップバンドのYears & YearsのボーカルOlly Alexanderが聴いたことをきっかけに、彼が契約しているレーベルPolydor Recordsと契約を結びます。
2016年には、StormzyをフィーチャーしたセカンドEP「Second」をリリースし、このEPにはイギリスのポップシンガーCharli XCXが作詞、MVの監督を務めた「I, U, Us」が収録されています。
RAYE - I, U, Us
同年、レイはイギリスを拠点に活動するDJ兼プロデューサーJonas Blueのシングル「By Your Side」(2016)の客演に抜擢され、UKダンスチャート6位、YouTubeでの再生回数は1億回を超えるヒットとなりました。
この曲でイギリス国内で一躍脚光を浴びましたが、友人の父親がJonas Blueを車に乗せてくれたことがきっかけで、今回のコラボレーションが実現したという裏話があったようです。
Jonas Blue feat. RAYE - By Your Side
この年末には、イギリス人DJ兼プロデューサーJax Joneのシングル「You Don't Know Me」にも抜擢され、世界10カ国以上のチャートでトップ10入りを果たし、UKシングルチャートでは最高位3位を記録し、一気に知名度がアップしました。
Jax Jones feat. RAYE - You Don't Know Me
2018年には、Mabel、Stefflon Don、RAY BLKなどをフィーチャーした3枚目のEP「Side Tape」をリリース。
このEPには、Ja Ruleの「Always on Time」(2002)をサンプリングしたMr. Eaziとの「Decline」が収録されており、リードアーティストとして当時の彼女のキャリア最高位となるUKシングルチャート15位を記録しています。
RAYE, Mr Eazi - Decline
Ja Rule feat. Ashanti - Always On Time
ソングライターとして実績を積む
これまでにレイは、ソングライターとしてリタ・オラ、リトル・ミックス、Charli XCXなど、名だたるアーティスト達へ楽曲提供しており、エリー・ゴールディングのシングル「Sixteen」(2019)は、Spotifyで3億回以上ストリーミングされ、収録されているアルバム「Brightest Blue」はUKアルバムチャート1位を獲得しています。
Ellie Goulding - Sixteen
また、リアーナのライティングキャンプにも招待されたことを明かしており、その才能はイギリス国内だけでなく、アメリカの音楽シーンからも注目されているようです。
2019年にはビヨンセのアルバム「The Lion King: The Gift」にフィーチャーされ、2020年にはミニアルバム「Euphoric Sad Songs」をドロップ。
このEPからは5枚のシングルがリリースされており、コソボ、アルバニア出身のプロデューサーRegardとのリードシングル「Secrets」は、Spotifyで3億回のストリーミングを達成し、UKダンスチャートで1位を飾っています。
Regard, RAYE - Secrets
2021年には、イギリス人DJのJoel Corry、フランス人プロデューサーDavid Guettaとコラボシングル「BED」をリリースし、UKダンスチャート1位を獲得、Spotifyでは4億回ストリーミングされ、世界のDJやプロデューサーからも熱い眼差しを受けているようです。
Joel Corry x RAYE x David Guetta - BED
所属レーベルに裏切られ、脱退を決意
ヨーロッパを中心にダンスナンバーで多くのオーディエンスを魅了し、着実にキャリアを積んできたかのように見えますが、所属していたPolydor Recordsが数年前からデビューアルバムのリリースを見送っていたことが明らかになります。
彼女はTwitterで怒りを露わにし、レーベルとの契約では4枚のアルバムをリリースすることになっていましたが、1枚もリリースできず、一方でレーベルのアーティストに楽曲を提供することを余儀なくされていたようです。
また、ヒット曲を提供しても所属レーベルからロイヤリティが支払われないなど、ソングライターの地位の低さにも怒りを露わにしました。
アルバムをリリースできない、つまりアーティストとしての成長を止められた一方で、ソングライターとしては馬車馬のように使われている彼女の声明は、Charli XCXやMNEKといった同業者からも支持されているようです。
その後、彼女は活動を休止を発表し、2021年7月にはレーベルを離れてインディペンデントアーティストとして再スタートを切りました。
おわりに
そんな苦い経験をした彼女は、自らの体験と失敗をもとに、若い女性たちに次のようにアドバイスして締めくくっています。
レイの才能は多くのアーティストやプロデューサーに認められ、一心不乱に制作に取り組みましたが、所属レーベルに裏切られる残念な結果に終わりました。
しかし、インディペンデントに転向後、ついに待望のデビューアルバム「My 21st Century Blues」のリリースに漕ぎつけました。
次回はこの待望のデビューアルバムにスポットを当て解説します。
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