ファッションピープルには新しい音楽を、ミュージックピープルには新しいファッションを。 NIGO - I Know NIGO! (2022)
NIGO(ニゴー)は、世界的に有名なアパレルブランド「A BATHING APE」のクリエーターとして知られる、世界有数のファッションデザイナーの1人です。
またKanye West(カニエ・ウェスト)やPharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)とも親交があり、彼らと日本のヒップホップグループTeriyaki Boyzとのコラボレーションは多くのオーディエンスを驚かせました。
そんなNIGOが、自身の名義では約20年振りとなるニューアルバム「I Know NIGO!」(2022)をこの度ドロップ。
全11曲が収録された今作は、A$AP Rocky、Tyler, The Creator、Lil Uzi Vert、Pop Smokeなど、日本人クリエイターによる作品とは思えないほど豪華な顔ぶれが揃っています。
ここでは、彼のこれまでのキャリアとアルバムについて解説します。
レーベル : A$AP Rocky Recordings, RCA Records, Republic Records, Victor Victor
リリース日 : 2022年3月25日
名前 : NIGO
本名 : NIGO / 長尾 智明
年齢 : 51歳
出身地 : 群馬県前橋市
A BATHING APEで一躍有名に
NIGOは在学中にDJ、ライター、スタイリストとしてのキャリアをスタートさせ、当時アパレルブランドUNDERCOVERをデザインしていた高橋盾とアパレルショップ「NOWHERE」をオープンさせます。
そこでは、猿のキャラクターをデザインしたアパレルブランド「A BATHING APE」がティーンエージャーから人気を集め「裏原宿系」と呼ばれるブランド群の代表格として知られるようになります。
また「A BATHING APE」は、コーネリアスやスチャダラパーなどのツアーTシャツを手掛けて、若者を中心とした人気に拍車をかけました。
そして、活躍の場所は日本だけではなく海外にも及び、2004年にはファレル・ウィリアムスとともにファッションブランド「BBC(ビリオネアボーイズクラブ)」シューズブランド「ice cream(アイスクリーム)」を立ち上げるなど、活動は止まるところを知りませんでした。
このように、アメリカのトップアーティストが着用したことで、その名は世界中に知れ渡ることになりました。
2010年に「過去と未来の融合」をコンセプトとしたライフスタイルブランド「HUMAN MADE」を立ち上げ、現代美術家のKAWSやPop Smokeなどのアーティストとのコラボレーションが実現。
2020年にはフランスのハイブランドルイ・ヴィトンと「LV MADE」でコラボレーションし、翌年にはLil Uzi Vertとカプセルコレクションを発表しています。
音楽シーンへ進出
2000年に自身の名義のアルバム「Shadow of the Ape Sounds」をリリースし、ゲストにはBiz Markie、Rakim、The Beatnutsなどニューヨークのラッパーが参加。
その後、2004年にはRIP SLYMEのILMARI、RYO-Z、m-floのVERBAL、WISEと共にラップグループTERIYAKI BOYZを結成し、2005年にデビューアルバム「BEEF or CHICKEN」を発表、Mark Ronson、Daft Punk、The Neptunes、Just Blaze、DJ PREMIERなど一流のヒップホッププロデューサーがずらりと名を連ね、話題になりました。
TERIYAKI BOYZ feat. Pharrell Williams - 超 L A R G E (2005)
続く2006年には映画「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」のサントラにThe Neptunesが手掛けた「Tokyo Drift」が収録され、YouTubeでは3億回再生を記録。
またリリースから約15年の時を経て、2020年にインドネシアのラッパーで88rising所属しているRich Brianがこの曲でフリースタイルを披露しました。
この曲は、彼がパンデミック時に自宅で生活している様子をラップした動画で、これに続いて日本のラッパーがYouTubeにアップするなど、瞬く間にネット上で話題となりました。
Teriyaki Boyz - Tokyo Drift (2006)
Rich Brian - TOKYO DRIFT FREESTYLE (2020)
Rich Brianについての記事はこちら。
2007年にはカニエ・ウェストをゲストに迎え、カニエのプロデュースによるシングル「I Still Love H.E.R.」をリリース。
カニエも来日し、日本のテレビ番組「ミュージックステーション」でライブを行い、多くのヒップホップヘッズが、テレビに釘付けになったのは記憶に新しいでしょう。
Teriyaki Boyz feat. Kanye West - I Still Love H.E.R. (2007)
アルバム "I Know NIGO!"
今作のアートワークは前述した現代美術家KAWSが担当。
Travis Scott & Kid KudiのプロジェクトTHE SCOTTS(2020)以来となる、ラッパーとのコラボレーションとなりました。
また、長年交流のあるファレル・ウィリアムスがエグゼクティブプロデューサーを務め、カニエ・ウェストの作品を多く手がけるBoogzDaBeast、Travis Scottの「SICKO MODE」をプロデュースしたCuBeatzなど、人気プロデューサーが脇を固めています。
そして、今作は、Pop Smokeが在籍していたレーベルVictor Victor Worldwideからリリースされていますが、レーベルのCEO、Steven Victorは、これが大変な作業だったと明かしています。
NIGOとは2004年頃、Pusha TとNo MaliceのラップデュオClipse(VictorはPushaを何十年もマネージメントしている)を通じて出会い、すぐに打ち解けたようで、NIGOについてもこのように話しています。
また今作は、2022年1月23日にKenzoのアーティスティック・ディレクターとして参加したパリコレでプレビューされ、GunnaやPusha T、Kanye West、Tyler The Creatorらも出席して話題になっていました。
終わりに
最後にSteven Victorは、このアルバムについて「NIGOのカルチャーへの貢献に敬意を表している」と明かしています。
またNIGOは「ファッションピープルには新しい音楽を、ミュージックピープルには新しいファッションを提示できて幸せだよ」と語り、音楽とファッションのコラボレーションにおける可能性を表現できた事を明かしています。
ファッションと音楽という隣接する文化を発展させ、リードしてきたNIGOだからこそできた、豪華な顔ぶれが揃ったアルバム、この機会に楽しんでみてはいかがでしょうか。
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