14年続くミックステープの続編をリリース! Meek Mill - Flamerz 5 (2022)
SoundCloudやTikTokなどのSNSが音楽シーンのトレンドとなる前、2000年代後半から2010年代前半のラップシーンでは、ベテランから日の目を見ない若手アーティストまで、多くのラッパーがミックステープをリリースし、自己を表現してきました。
その中、Wiz Khalifa、Chance the Rapper、A$AP Rocky達がミックステープでチャンスを掴み、レーベル間で熾烈な入札争いが繰り広げられました。
今回紹介するMeek Mill(ミーク・ミル)もその1人で、彼はラップグループThe Bloodhoundzでキャリアをスタートさせ、ソロでリリースしたミックステープがレーベル社長の目に留まり、T.I.、Rick Rossといった大物たちとの共演に繋がりました。
そんなミックステープと縁深い彼が、ミックステープ「Flamerz 5」(2022)をリリース。
ここでは、この作品とミーク・ミルとミックステープの関係について解説します。
レーベル : Atlantic Records, Dream Chasers Records & Maybach Music Group
リリース日 : 2022年11月21日
名前 : Meek Mill
本名 : Robert Rihmeek Williams
年齢 : 35歳
出身地 : ペンシルベニア州フィラデルフィア
過去にサイトのサーバーをダウンさせたミーク・ミル
2008年にミックステープ「Flamers」をリリースした彼は、215 Aphillyated Recordsの創設者兼社長であるCharles "Charlie Mack" Alstonの目に留まりました。
Will Smith、DJ Jazzy Jeff、Boyz II Menなどの代理人を務めていたこの人物は、ミーク・ミルの実力に感銘を受け、彼と契約を結ぶことになります。
これがきっかけでT.I.と出会い、T.I.のレーベルGrand Hustle Recordsと契約し、2009年に続編のミックステープ「Flamers 2: Hottest In Tha City」をリリース。
Grand Hustle Recordsには、専属としてDJ Dramaが在籍しており、彼の人気ミックステープシリーズ「Gangsta Grillz」とコラボした「Flamers 3: The Wait Is Over」を2010年にリリースしています。
しかし、ミーク・ミルは法的トラブルにより、Grand Hustle Recordsからアルバムをリリースできず、2010年にレーベルを離れ、2011年にリック・ロス率いるMaybach Music Group (MMG)と契約。
その頃、業界からも注目されていたミーク・ミルは、XXL誌の「Freshman Class 2011」に選出され、同年末にはレーベルのコンピレーションアルバム「Self Made Vol.1 」(2011)からシングル「Tupac Back」「I'm a Boss」をリリース。
「I'm a Boss」は、2011年に発表したミックステープ「Dreamchasers」にも収録され、クラブアンセムとなり、YouTubeでは1億回再生されています。
2012年のデビューアルバム「Dreams and Nightmares」は全米チャート2位を記録、同年にミックステープ「Dreamchasers 2」をリリース。
ミックステープサイトDatpiffで公開されたこの作品は、リリース後6時間で150万ダウンロードを記録し、サイトのサーバーがクラッシュするほどの人気となり、24時間で250万ダウンロードを記録。同サイト史上、最も人気のミックステープとなりました。
2013年、キャリアに勢いがつく中、Travis Scott、Birdman、Diddy、Future、Nicki Minaj、Jadakissなど錚々たるメンツが参加したミックステープ「Dreamchasers 3」をリリース。
DatPiffで現在までに160万ダウンロードされ、同サイトで13番目にダウンロードされた作品となっています。
今作でカニエを名指しでDisる
今作、「Flamerz 5」は、14年以上前に始まったミックステープシリーズの続編で、ミーク・ミルのミックステープとしては、前述の「Dreamchasers 3」以来、9年振りのリリースとなりました。
また「Flamerz 4」は実際にはリリースされなかったものの、過去に何者かが「Flamerz 4」というタイトルで偽物をリリースしており、Twitterでは「誰かが偽物を過去にドロップしたからスキップしたよ!」と、ファンからの質問に答えています。
「Flamerz 5」は、これまでのシリーズと同様に、現在のラップシーンのヒット曲をビートジャックしたもので、全15曲が収録。
1曲目の「Intro」ではSurvivorの「Eye of the Tiger」を大胆にサンプリングしており、壮大なビートの上で繰り広げられる彼らしい畳み掛けるようなラップが印象的です。
Meek Mill - Intro
Survivor - Eye Of The Tiger
2曲目のDJ Khaledの曲をビートジャックした「God Did」は、リリースと同時にMVが公開されています。
この曲では、カニエ・ウェストを名指しで痛烈にディスっており、今後両者の間に亀裂が入る可能性も。
Meek Mill - God Did
DJ Khaled feat. Rick Ross, Lil Wayne, Jay-Z, John Legend, Fridayy - God Did
4曲目「Super Gremlin」は、Kodak Blackのヒット曲をビートジャックし、彼のフロウやリリックを引用しながら、自分のライフスタイルや価値観についてラップしています。
Meek Mill - Super Gremlin
Kodak Black - Super Gremlin
おわりに
今作はビートジャックものがメインとなり、原点回帰とも言える内容ですが、ミーク・ミルは今作について「ストリーミングサービスに出したくないんだ」と明かし、チャートに縛られることなく、純粋に音楽を評価してもらいたいと考えているようです。
そう明かすように、今作は主要ストリーミングプラットフォームではリリースされておらず、彼がキャリアを築き上げてきたDatpiff、大手ミックステープサイトのみでリリースされています。
これは、彼が多くの楽曲をビートジャックしているため、著作権の問題があり、ストリーミング・プラットフォームでのリリースができないためだと推測されています。
ともあれ、これをきっかけに一時代を風靡したビートジャックが再び脚光を浴びる良い機会かもしれませんね。
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