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IDKとナイキのコラボレーション: 新アルバム「F65」から生まれる音楽とファッションのシナジー

前回の記事では、メリーランド州プリンスジョージズ出身のラッパー、IDKの経歴をご紹介しました。今回は、その彼の2023年リリースの最新アルバム「F65」について、収録曲を解説・紹介します。

レーベル  : Clue No Clue & Warner Records
リリース日 : 2023年5月5日
名前    : IDK
本名    :    Jason Aaron Mills
年齢    : 30歳


出身地   :    メリーランド州プリンスジョージズ

アートワークに隠された意味とは?

2023年2月、アルバムのリリースに先駆けて、最初のシングル「Radioactive」が公開されました。
この曲では、最新のトレンドであるジャージークラブ調のアップテンポなビートが取り入れられています。

IDK - Radioactive

アルバムのリリースに向けて、3月にはRich The Kidをフィーチャーしたセカンドシングル「850 (We On Top)」がリリースされ、翌月には、SNS上でアルバムのアートワークが公開されました。
これにより、アルバムのリリースへの期待が一層高まりました。

IDK feat. Rich The Kid - 850 (We On Top)

Instagramでは、F1のレーシングスーツに身を包んだアートワークと共にコメントが投稿されており、そのカラーパターンはガーナと西アフリカのシエラレオネの国旗を組み合わせたもののようです。

たびたびアフリカ系アメリカ人は、自分たちの歴史を理解していないと疑問視され、さらには嘲笑されることがあるんだ。
しかし...大西洋奴隷貿易の影響やアメリカの学校教育の中での教育不足は、一部の人が期待するほど簡単に学べるものではないね。
「フリーコースト」は、ガーナのケープコースト(奴隷が西アフリカからアメリカに連れて行かれた場所)とシエラレオネのフリータウン(奴隷が解放された場所)への意識を高めるために創られた世界であり、両国の旗と歴史的な要素を組み合わせて一つの運動を作り出しているんだ。

スティービー・ワンダーのカバーも収録!

この作品は、これまでのアルバムの中でも最多の22曲が収録されており、Snoop DoggNLE ChoppaBenny the ButcherMusiq SoulchildSaucy Santanなど、ベテランから若手まで多様なアーティストがゲスト参加しています。

「Pit Stop」

アルバムの2曲目である「Pit Stop」は、オーストリア出身のプロデューサーBLWYRMNDが手掛けており、彼はこのアルバムで「Radioactive」「850 (We On Top)」など、計4曲をプロデュースしています。

IDK - Pit Stop

「Mr. Police」

アルバムからの3枚目のリードシングルとしてリリースされた7曲目の「Mr. Police」は、美しいピアノの音色にのせて、IDKがメロディアスなラップを披露しています。
しかし、歌詞では警察に対する不信感と憤りを表現し、警察から不当に標的にされる黒人の経験を示唆しています。
また、この曲のMVでは、衝撃的なシーンが描かれ、警察官との対立が視聴者に強い印象を与えることでしょう。

IDK - Mr. Police

「Pinot Noir」

8曲目の「Pinot Noir」は、2022年にXXLの「Freshman Class」に選出されたトランスジェンダーラッパーSaucy Santanaと、メンフィス出身のフィメールラッパーJucee Frootをフィーチャーしています。

この曲では、イントロ部分からシンガーのSmokey Robinsonのサンプルを用いており、加えてKhiaのヒット曲「My Neck, My Back (Lick It)」(2001)も取り入れています。表面的にはこれら2つの曲は対照的に見えますが、その巧みな融合はジャージーな雰囲気を持つ卓越したグルーヴを創出しています。

IDK feat. Saucy Santana & Jucee Froot - Pinot Noir

「Pinot Noir」の0:04〜

Smokey Robinson - A Quiet Storm (1975)

「Pinot Noir」の0:09〜

Khia - My Neck, My Back (Lick It) (2001)

「Superwoman」

Musiq Soulchildをゲストに迎えたアルバムの21曲目「Superwoman」は、Stevie Wonderの「Superwoman (Where Were You When I Needed You)」のカバーバージョンです。

この曲では、Musiq Soulchildの魅力的なボーカルに加え、IDKの卓越した歌唱能力が映えています。これは彼のアーティストとしての底力を見せつける一曲となっています。

IDK feat. Musiq Soulchild - Superwoman

Stevie Wonder - Superwoman (Where Were You When I Needed You) (1972)

注目のナイキコラボスニーカー発表!その裏側に隠された意味とは?

新作のアートワーク公開と同時に、彼はナイキとの共同制作スニーカーを発表しました。このパートナーシップでは、ナイキブランドの名高いスニーカー、エアーマックス95やエアーマックス97などがラインナップに並びます。

これら5種のシューズは、彼自身や彼の家族、友人だけが手に入れることができる特別な品のようですが、IDKはDiscordチャンネルを通じて、エアーマックス97の限定品を抽選で提供することを計画しています。

IDKは以前からエアーマックス95とエアーマックス97の2つのスニーカーを愛用していたようで、特にエアーマックス95はThe Gameのシングル「Hate It or Love It」の歌詞にも登場しており、それがこのコラボレーションの触発源となったようです。

また、5月に開催された全世界的な音楽フェスティバル「コーチェラ」でのパフォーマンスでは、IDKが新作アートワークと同じデザインの衣装で登場し、その新たなコラボスニーカーを早速披露しました。

ご覧の通り、スニーカーもアートワークで使用されたカラーパターンを用いており、IDKはアルバムとスニーカーのコラボレーションについて以下のように述べています。

このF65というアルバムは、人間として望む変化が、交わす対話の内容が必ずしも肯定的なものでなくとも、心地良い対話から引き出されるという認識を基に作り上げたものなんだ。だから、心地よい音楽であるジャズと、心地良さの欠ける会話を混ぜ合わせて、少数派として、その話題に賛同できない人々とも共感できる橋を架けることを試みたんだ。このスニーカーは、その対話を助ける道具なんだ。スニーカーも含めて俺が行っている全ての事は、俺たちが愛し、求め、そして消費するものを取り込み、俺たち全員が必要とするものを伝達するための舞台として活用しているんだよ。

おわりに

ラッパーとしてのアイデンティティを深く追求するだけでなく、スニーカーを通じて更に幅広い共鳴を求めるIDKは、音楽の領域を飛び越え、自己の芸術的才能を全面的に表現しようとしています。彼の視点は、音楽を単なる音の組み合わせと捉えず、文化的な表現、思考の交換、そして社会的な対話のプラットフォームとして捉えています。

ナイキとの協力は、IDKがアートとファッションの境界を曖昧にし、それらを融合させることで、彼自身のメッセージをより大きく伝えるための一歩となりました。この試みは彼がただのラッパーでなく、ビジョナリーなアーティストであることを示しています。

彼の音楽は、それぞれの聴き手に新たな感情や見識をもたらすパワーがあります。このアルバムを通して、IDKの独特な世界観を体験し、彼が築き上げる音楽的な風景を一緒に体感してみてはいかがでしょうか。

今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

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