French Montanaの『Mac & Cheese 5』 ラップ界に再びミックステープ旋風を巻き起こす?
モロッコで生まれ育ったFrench Montana(フレンチ・モンタナ)は、13歳の時にニューヨークのサウスブロンクスへ移住しました。彼は、ラッパーのMax Bから多くを学び、ヒップホップ界の著名人や有名人のインタビューに焦点を合わせたDVDシリーズ『Cocaine City』の司会を務めるなど、その才能を開花させ、その名を世に知らしめました
その後、ディディ率いるレーベルBad Boyやリック・ロスのレーベルMaybach Music Groupと契約し、これまでに4枚のアルバムをリリースしてきました。特に、セカンドアルバム『Jungle Rules』に収録されたスウェイ・リーとのシングル『Unforgettable』は、世界15カ国のチャートでトップ10入りを果たし、YouTubeでは驚異の16億回再生を記録しています。
また、キャリア初期から現在に至るまで、20本以上のミックステープをリリースしたことで知られており、ミックステープがヒップホップシーンの一時代を築く上で重要な役割を果たしてきました。
そして2024年2月23日、フレンチ・モンタナはミックステープ『Mac & Cheese 5』をリリースしました。この記事では、『Mac & Cheese 5』に焦点を当て、その魅力を探求します。興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
レーベル : Coke Boys Records
リリース日 : 2024年2月23日
名前 : French Montana
本名 : Karim Kharbouch
年齢 : 39歳
出身地 : モロッコ
『Mac & Cheese』シリーズを振り返る
『Mac & Cheese 5』は、フレンチ・モンタナによる人気ミックステープシリーズ『Mac & Cheese』の第5弾です。この新作に触れるにあたり、まずはシリーズの歴史を振り返ってみましょう。約15年前に始まったこのシリーズは、最初の作品『Mac Wit Da Cheese』(2009)から、Beanie Sigel、Gucci Mane、Jadakissといった豪華ゲストを迎え、注目を集めました。
特に、収録曲の中で印象に残っているのが、Don Henleyのヒット曲を大胆にサンプリングした『New York Minute』です。この曲では、フレンチ・モンタナとJadakissがニューヨークでのラップゲームを歌い、OGたちにリスペクトを送るリリックが特に印象的でした。
Don Henley - New York Minute (1989)
その翌年に発表された2作目の『Mac & Cheese 2』は、フレンチ・モンタナが立ち上げたレーベルCoke Boysからリリースされました。この作品には、前述の『New York Minute』のリミックスが収録されており、この曲にはNicki Minaj、Chinx Drugz、Ma$eが参加しています。さらに、Waka Flocka Flameのヒット曲『Hard in da Paint』のビートをジャックした曲も収録されています。
当時、人気曲がリリースされると、多くのラッパーが参加して華やかなリミックスを発表することが一般的でした。さらに、これらのヒット曲をフリースタイルやリミックスの形でミックステープに収録することも頻繁にありました。『Mac & Cheese 2』は、まさにその時代の傾向を反映した作品であり、その文化を象徴した作品の一つと言えるでしょう。
その後、FutureやMachine Gun Kellyらと共にXXL誌の『Freshman Class』に選出されたフレンチ・モンタナは、2012年に3作目『Mac & Cheese 3』をリリースしました。ミックステープサイトDatpiffによると、この作品はリリースから2週間で43万回以上のダウンロードを記録しました。ディディやMachine Gun Kellyらが参加した収録曲「Ocho Cinco」はクラブでのヒットとなり、彼の音楽キャリアにおいて重要な転機を迎えさせました。
この楽曲は、彼が翌年にリリースしたデビューアルバム『Excuse My French』のデラックスエディションにも収録され、アルバムは全米チャートで4位を記録する成功を収めました。このように、アーティストによっては、ミックステープはアルバムの前哨戦的な役割を果たし、無料の作品であっても、その後のキャリアに大きな影響を与えることがあります。
2016年にリリースされた4作目の『MC4』は、当初フレンチ・モンタナのセカンドアルバムとして計画されていました。しかし、アルバムのリリースが予定されていた2ヶ月前、アメリカのディスカウントショップTargetが非公式にアルバムをCDでリリースし、それが後にネット上に全曲流出したため、アルバムのリリースは中止されました。
その影響からか、『MC4』にはドレイクとの『No Shopping』やKodak Blackとの『Lockjaw』などのヒット曲が収録されています。さらに、カニエ・ウェストやナズ、エイサップ・ロッキーなど、豪華なアーティストがゲスト参加しています。
収録曲について
最新作『Mac & Cheese 5』には全21曲が収録されており、そのラインナップは豪華絢爛です。カニエ・ウェスト、リル・ウェイン、リック・ロスといったヒップホップ界の大御所から、現在のラップシーンを支えるLil Durk、Lil Baby、Westside Gunn、JID、Jeremih、Bryson Tillerなど、15組以上のアーティストが参加しています。
フレンチ・モンタナは、自身のミックステープにこれほど多くの著名アーティストが参加したことに関して、ミックステープが音楽業界における重要性を示していると強調しています。彼は、ミックステープ文化がかつて経験した最盛期を再現し、その輝きを取り戻したいとい思いを抱いているようです。
『Stand United』
アルバム『Mac & Cheese 5』の第3曲「Stand United」は、カニエ・ウェスト、ブジュ・バントン、ガイアナ出身のSAINt JHNをゲストに迎え、団結と真実を追求する重要性を訴えています。世界の混沌とした状況の中で一丸となり立ち上がり、真実を求めること、人種差別や社会的不公正に対する闘い、個人の経験や信念の反映を通じて、社会的課題に団結し真実を追求する必要性を強調しています。
French Montana, Kanye West, SAINt JHN, Buju Banton - Stand United
『Okay』
5曲目に収録された『Okay』は、Lil BabyとプロデューサーATL Jacobによる曲で、2023年12月にリードシングルとして発表されました。公開されたミュージックビデオでは、フレンチ・モンタナが間接的に自分自身をイーロン・マスクに例え、ロケット製造の様子を描いています。これは彼が音楽業界においてトレンドをリードしていることを象徴していると捉えられます。歌詞では、豪華な生活、恋愛、成功、金銭にスポットを当てており、ラッパーたちが享受する高級なライフスタイルや恋愛の複雑性、成功への渇望を描写。これにより、現代のラップカルチャーや若者の価値観を映し出しています。
French Montana, Lil Baby & ATL Jacob - Okay
『Money Ain’t a Thing』
12曲目に収録された『Money Ain’t Thing』は、過去にCoke Boysのクルーの1人であったLil Durkとの曲で、イントロからJuvenileの『400 Degreez』(1998)をサンプリングしています。
この曲では、都市生活、犯罪、そして成功を求める強烈な願望に焦点を当てており、二人は、自身の経験や直面した困難を通じて、個人のアイデンティティを保持することの重要性を訴えています。さらに、金銭的な成功や社会的地位が人生に与える影響についても触れ、友情や家族といったテーマに深く迫っています。
French Montana & Lil Durk - Money Ain’t a Thing
Juvenile - 400 Degreez (1998)
『Where We Came From』
16曲目の『Where We Came From』は、イントロから早回しされたフレーズが印象的なナンバーで、このサンプル元はThe Weekndの未発表曲『Marylyn (Witches and Panthers)』で、彼のヒットソングを手掛けたIllangeloとDoc McKinneyがプロデュースしています。
この楽曲では、フレンチ・モンタナが自身の過去からの成長と現在の成功を讃えています。過去の経験や達成に感謝を示しながら、自分たちのライフスタイルや思考についても語ります。さらに、成功への強い願いや、未来への希望についても歌っていて、聞く人に前向きに考えるきっかけを与えています。
French Montana - Where We Came From
The Weeknd - Marylyn (Witches And Panters)
おわりに
フレンチ・モンタナが8年ぶりに発表したシリーズの続編『Mac & Cheese 5』は、インストやアカペラ、さらにはスピードアップバージョンなどの5つの異なるバージョンをリリースし、その総数は126曲にものぼりました。しかし、このアプローチがストリーミング数を増やすことに繋がり、音楽チャートを操作しているとして、批評家やオーディエンスから批判を受けました。
フレンチ・モンタナによれば、彼はこのシステムを悪用しようとしたのではなく、テイラー・スウィフトから複数のバージョンをリリースするアイデアを得たと述べています。
『Mac & Cheese 5』はフレンチ・モンタナの手によって、ミックステープへの長年の敬意と新たな音楽形式への探求心が見事に融合された作品として生まれました。
このアルバムは、ラップ業界におけるミックステープの価値を見直し、革新的な手法と音楽への深い愛情を各トラックに織り込むことで示しています。特に、TikTok向けにスピードアップしたバージョンや、インストゥルメンタル、アカペラバージョンのリリースは、多様な世代へとリーチし、ファンへの奉仕という形で新たな音楽のアプローチを提示しています。この動きは、過去にミックステープを通じてラップシーンに大きな影響を与えたフレンチ・モンタナの経験に根差し、ミックステープの重要性を改めてクローズアップする試みです。
『Mac & Cheese 5』がラップ界に再びミックステープ旋風を巻き起こすかどうかは未知数ですが、その可能性を直接あなたの耳で確かめる価値は十分にあるのでは。
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