「父子の絆から生まれた傑作『Paisley Dreams』:BIG HIT & HIT BOYとTHE GAMEの融合」
ザ・ゲーム(The Game)は、アメリカのヒップホップアーティストとして、2000年代から活躍してきました。彼の本名はジェイション・テレル・テイラー(Jayceon Terrell Taylor)で、1979年11月29日にカリフォルニア州コンプトンで生まれました。
ザ・ゲームはミックステープを通じてその才能を発揮し、ドクター・ドレ(Dr. Dre)の目に留まり、彼のレーベル、アフターマス・エンターテイメント(Aftermath Entertainment)にサインしました。彼のデビューアルバム「The Documentary」は、2005年にリリースされ、ビルボード200で1位を獲得し、その後も成功を収めています。
彼のキャリアは、ウェストコースト・ヒップホップをメインストリームに再び浮上させるのに大きく貢献しており、これまでにリリースされたスタジオアルバムは合計10枚で、その中で3枚がビルボード200で1位を獲得し、8枚がR&B/ヒップホップチャートで1位に輝いています。また、ラップアルバムチャートでも8枚のアルバムが1位を獲得しています。
ザ・ゲームは40歳を超えてもなお、若手アーティストに引けを取らない活躍を見せており、2024年1月1日には、ラッパーのビッグ・ヒット(Big Hit)とのコラボアルバム「Paisley Dreams」をサプライズでリリースしました。
この記事では、このコラボアルバムに焦点を当て、その魅力に迫っていきます。ご興味のある方は、ぜひ最後までお付き合いください。
レーベル : Surf Club inc., STB Entertainment
リリース日 : 2024年1月1日
名前 : The Game & Big Hit
本名 : The Game / Jayceon Terrell Taylor
Big Hit / Chauncey Hollis Sr.
年齢 : The Game / 44歳
Big Hit / 52歳
出身地 : The Game / カリフォルニア州コンプトン
Big Hit / カリフォルニア州ロサンゼルス
Big Hitの過去
新アルバムに触れる前に、ザ・ゲームのコラボレーション相手、ビッグ・ヒットについてご紹介します。
ビッグ・ヒットは、ラヴィス・スコットやドレイク、ビヨンセ、ナズなど、数多くの著名アーティストの作品に関わってきたプロデューサー、Hit-Boy(ヒット・ボーイ)の父親です。彼は1980年代にラップのキャリアをスタートさせた実力派です。しかし、ビッグ・ヒットは長年にわたりハスラーとしての生活を送り、その結果、20年間もの長きに渡って刑務所生活を余儀なくされました。
釈放された2014年、ビッグ・ヒットは息子であるプロデューサーヒット・ボーイの制作によるシングル「Grindin’ My Whole Life」を、彼の所属するレーベルHS87よりリリースしました。
この頃、ヒット・ボーイは既にジェイ・Zとカニエ・ウェストによるシングル「Niggas in Paris」でグラミー賞を受賞しており、ケンドリック・ラマーやA$AP Rockyなどの当時の若手ラッパーの楽曲プロデュースも手がけ、キャリアを大きく飛躍させていました。
「Grindin’ My Whole Life」のリリース時、ヒット・ボーイは、父親がギャングスターの生活から異なる道を歩むために、新たな選択肢や機会を提供していると話しています。
HS87 feat. Big Hit, N.No, Hit-Boy, BMac the Queen, Audio Push, Kent M$ney & B.CaRR - Grindin’ My Whole Life (2014)
「Grindin’ My Whole Life」はYouTubeで1000万回再生を超えるなど大きな注目を集めましたが、リリース後ビッグ・ヒットはひき逃げ事故を起こし、再度9年間の投獄生活を余儀なくされました。2023年5月に出所した彼は、息子とともに早速スタジオへと向かい、翌月には親子コラボプロジェクト「SURF OR DROWN, Vol. 2」をリリースしました。
この頃には既に息子のヒット・ボーイは、数々のヒット曲を生み出す天才プロデューサーとして世界に名を馳せており、父親であるビッグ・ヒットとの共同制作でも、彼は決して妥協することなく、その完璧主義者としての側面をビッグ・ヒットにより明かされています。
そして、2023年12月にビッグ・ヒットは待望のデビューアルバム「The Truth Is In My Eyes」をリリースしました。このアルバムは、Bandcampで独占配信されており、ゲストにはSnoop Dogg、Benny the Butcher、DOM KENNEDY、Musiq Soulchild、The Alchemistなどが参加しています。
また、このアルバムでエグゼクティブプロデューサーを務めたヒット・ボーイは、小学生の頃から、父親と一緒に音楽を作る夢を抱いていたようで、自身のInstagramで次のように明かしています。
Big Hit - The Pain Is Deep
収録曲について
プロデューサーのヒット・ボーイによると、「Paisley Dreams」のレコーディングは、たった一晩で完了したそうです。
新作について述べられた通り、全9曲が収録されており、ゲストにはDOM KENNEDYとTeeFliiの西海岸出身の2人が参加し、全曲をヒット・ボーイがプロデュースしています。
「Paisley Dreams」
アルバムの2曲目であり、アルバムタイトルの「Paisley Dreams」は、JAY-Zのヒットシングル「Girls, Girls, Girls」(2001)のサンプリングでも知られるTom Brockの「There's Nothing in This World That Can Stop Me From Loving You」(1974)をイントロからネタ使いしています。
この曲では、彼らは個人的な体験や社会問題に光を当てています。ザ・ゲームは自分の価値観や地元コミュニティの喪失について述べ、ビッグ・ヒットは黒人としての人生、社会的不平等、医療や司法制度に対する不満を歌っています。これらの歌詞は、黒人コミュニティが直面する挑戦への認識と、それに対する抗議の声を伝えます。曲は、感情的な「Ooh, baby」というフレーズで終わり、聴き手に深い印象を残します。
The Game & Big Hit - Paisley Dreams
Tom Brock - There's Nothing in This World That Can Stop Me From Loving You (1974)
Jay-Z feat. Q-Tip, Slick Rick and Biz Markie - Girls, Girls, Girls (2001)
「P Fiction」
アルバムの3曲目の「P Fiction」は、前述の「Paisley Dreams」と共にYouTubeでMVが公開されています。この曲で彼らは、力と地位を持つ「ボーラー(富裕層)、ボス、ギャングスタ」のライフスタイルを表現しており、NBAチームに例えることで自らの強さや、いつでも準備ができている様子を歌っています。ギャングスタとしての生活、家族の問題、警察との対立、そして暴力を通じて自分たちの地位を守ることの重要性が語られています。歌詞は、彼らの生き方が彼らを形作るが、それには代償があることを示唆しています。
The Game & Big Hit - P Fiction
「The Game Won’t Stop」
6曲目の「The Game Won’t Stop」は、早回したサンプリングフレーズがループし、ビートは1990年代の雰囲気を醸し出しています。
この曲では、困難やギャング文化に直面しながらも、成功を追い求める強い意志を歌っており、ビッグ・ヒットがコーラスで「ゲームは止まらない」と繰り返す中、新しい車を手に入れたり、警察や金目当ての人々との戦いを経て、成功への道を進んでいく様子が描かれています。
ザ・ゲームは自らの家族や過去の選択に対する後悔や反省を歌いつつも、信仰や自分の人生に対する強い信念を示しています。また、彼らは逮捕を避けながら成功を追求することの重要性を強調しています。
The Game & Big Hit - The Game Won't Stop
「Crisis」
7曲目の「Crisis」は、DOM KENNEDYが参加した曲で、NasやBenny the Butcherなどのプロデュースで知られ、サンプリングを得意としたJansport Jとヒット・ボーイがプロデュースしています。
この曲では、DOM KENNEDYは成功と愛に焦点を当て、ビッグ・ヒットは緊張感を持ちながらも前に進む姿勢を歌います。ザ・ゲームは成功と自身の経験に焦点を当て、コンプトンの出身であることを誇りにしています。
The Game, Big Hit & DOM KENNEDY - Crisis
The Game、Hit-Boyに感謝の意を表す
今作は、Apple Musicのヒップホップ/ラップチャートで1位を獲得しており、これについてザ・ゲームは自身のInstagramで喜びを伝え、またプロデューサーであるヒット・ボーイに感謝の意を表しています。
おわりに
2000年代から、ザ・ゲームは10枚のアルバムと多くのヒットを生み出し、ヒップホップシーンを牽引してきた実績を誇っています。一方で、ビッグ・ヒットはプロデューサーであるヒット・ボーイの父親として、20年間の刑務所生活を経て苦境を乗り越え、息子とのコラボで新たな成功を収めました。
そうしてリリースされた「Paisley Dreams」は、個人的な経験や社会的な問題に焦点を当て、サンプリングや独自のビートを交えながら、ザ・ゲームとビッグ・ヒットが異なる視点から語りかけています。アルバムには、成功と愛、ギャング文化、家族、経済的な困難など、多岐にわたるテーマが織り交ぜられており、聴き手に深い感銘を与えることでしょう。
興味深いのは、2人がビデオ制作とアルバム制作にわずかな時間で全力を尽くし、その成果がチャートの1位獲得につながったことです。ザ・ゲームとビッグ・ヒットは、単に共同制作者以上の関係を築きながら、情熱を込めたリアルな音楽で聴き手に感動と共感を提供しています。
今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️
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