「俺の時代だ」 新たな一面を見せたニューアルバムをドロップ! YG - I GOT ISSUES (2022)
カリフォルニア州南部のコンプトンは、貧困率が高くギャングの抗争や犯罪率の高い町として知られています。
また、Dr.Dre、Eazy-Eをはじめ、伝説のラップグループN.W.A.が結成された地でもあり、他にもDJ Quik、Coolio、MC Eiht、The Game、Kendrick Lamarなど、90年代初頭から現在に至るまでヒップホップシーンに欠かせないラッパーを多く輩出しています。
今回紹介するYGもコンプトン出身で、2010年にデビューシングル「Toot It and Boot It」のヒットで脚光を浴び、Def Jam Recordingsと契約を交わし、デビューアルバム「My Krazy Life」(2014)は全米チャート2位を記録。
「My Nigga」「Who Do You Love?」などのクラブヒットを放ち、3枚目のアルバム「Stay Dangerous」(2018)からのシングル「Big Bank」は、ソロシングルとして自身最高位の全米チャート16位を記録。
その後もコンスタントにアルバムを発表し続け、これまでに発表したソロアルバム全て(5枚)が全米チャートトップ10入りを果たし、DJ MustardやTy Dolla $ignと共に2010年代の西海岸ヒップホップシーンを牽引してきました。
そんな彼が、約2年振りとなる6枚目のアルバム「I GOT ISSUES」(2022)をドロップ。
ここでは、このアルバムについて解説します。
レーベル : 4Hunnid Records, Def Jam Recordings
リリース日 : 2022年9月30日
名前 : YG
本名 : Keenon Dequan Ray Jackson
年齢 : 32歳
出身地 : カリフォルニア州コンプトン
アルバムリリースに至るまで
2020年、ジョージ・フロイド氏の死で全米で抗議デモが盛んになる中、発表された5枚目のアルバム「My Life 4Hunnid」には、警察による黒人差別を歌った「FTP」(Fuck the Policeの略)が収録され、ラッパーらしく曲で「BLM運動」を表現しました。
翌年2021年には、Mozzyとコラボアルバム「Kommunity Service」をリリースしたほか、Nas、Terrace Martinのアルバムに参加。
2022年に2月にJ. Cole、Moneybagg Yoとコラボシングル「Scared Money」(2022)をリリース。
このリリースに先立ち、YGは自身のレーベル名である「4Hunnid」のチェーンを2人にプレゼントしたようです。
また、意外にもYGとJ. Coleはこれが初共演となり、コラボレーションに至った経緯について、次のように語っています。
YG feat. J. Cole & Moneybagg Yo - Scared Money (2022)
6月にはTyga、21 Savage、BIAとのコラボシングル「Run」をリリース。
しかし、どういう理由か不明ですが、この曲はアルバムには収録されていません。
YG, Tyga, 21 Savage feat. BIA - Run (2022)
8月にはMary J. Bligeの「Be Happy」を大胆にサンプリングしたシングル「Toxic」をリリース。この曲は、現在も西海岸のラジオ局を中心にエアプレイされています。
YG - Toxic (2022)
収録曲について
今作のリリース前に、YGはアルバムタイトルを「Pray for Me」になると発表しており、これは彼らの日常を奪ったパンデミックと大きく結びついているようでした。
しかし、最終的にアルバムは「I GOT ISSUES」(問題あり)というタイトルでリリースされました。
このアルバムには、全14曲が収録され、前述のJ. Cole、Moneybagg YoのほかNas、Post Malone、Roddy Ricch、H.E.R.などがゲスト参加しています。
その中から4曲目「Maniac」は、アルバムリリースの1週間前に発表され、ヒットメーカーHit-Boy、Terrace Martinがプロデュースしています。
YG - Maiac
6曲目「I Dance」は、アルゼンチン出身のラッパーDuki、カリフォルニア州ホーソーン出身のシンガーCUCOを抜擢し、彼らが放つスペイン語を織り交ぜたラテン感溢れる1曲となりました。
また、MVにはドミニカ共和国出身の女優Emily Tostaが出演し、俳優のEmilio RiveraとDanny Trejoがそれぞれ牧師と花嫁の父親役でカメオ出演しています。
YG feat. Duki, Cuco - I Dance
8曲目の「Go Dumb」は、今作で紅一点である西海岸で最も注目されているシンガーH.E.R.をフィーチャーしています。
また、E-40のクラシック「Tell Me When to Go」(2006)をサンプリングするなど、彼女が生まれ故郷ベイエリアへのオマージュが感じられる1曲です。
YG feat. H.E.R. - Go Dumb
E-40 - Tell Me When To Go (2006)
しかしながら、今回のハイライトは、Roddy Ricch、Post Maloneをフィーチャーした10曲目「Sober」ではないでしょうか。
メロウなナンバーに仕上がっていますが、酒に酔っ払ったことがきっかけで、恋人が去っていったことを歌にしています。
YG feat. Roddy Ricch, Post Malone - Sober
おわりに
今作について、YGはデビューアルバムとセカンドアルバムと同じようなアプローチで制作しており、自身の人生を描いていると語っています。
冒頭で述べたように、2010年代にはクラブアンセムを多く放ってきたYGですが、今作は「Toxic」を筆頭に全体的にメロウな楽曲が多く、30歳を過ぎ一皮むけたYGの姿を見せているように感じます。
ラッパーとして、人間として、成熟期を迎えた彼の新作をチェックしてみてはいかがでしょうか。
今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️
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