バッド・バニー新作『Debí Tirar Más Fotos』—音楽で伝える人生の大切な瞬間
プエルトリコ出身のBad Bunny(バッド・バニー)は、2016年にSoundCloudへシングル「Diles」を投稿したことがきっかけで一躍注目を集め、瞬く間にスターの座へと駆け上がりました。彼のキャリアがさらに加速したのは、Cardi Bとのコラボシングル「I Like It」が全米チャート1位を獲得し、続くドレイクとのコラボ「Mía」も大ヒットを記録したことが大きな要因です。
こうして急速に世界的な人気を得た彼は、2020年のアルバム『YHLQMDLG』でスペイン語アルバムとして歴代最高位の全米アルバムチャート2位を記録。その勢いは衰えることなく、同年リリースの『El Último Tour Del Mundo』ではスペイン語アルバムとして初めて全米アルバムチャート1位を獲得し、地位をいよいよ確立します。さらに2022年の4枚目のアルバム『Un Verano Sin Ti』は全米アルバムチャートで13週にわたり首位を獲得し、アメリカおよび世界で最も売れたアルバムとして認定。スペイン語アルバムとして初めてグラミー賞「最優秀アルバム賞」にノミネートされるなど、音楽業界に大きな衝撃を与えました。
また、音楽だけでなくプロレスラーとしての才能も発揮し、2021年からWWEに出演。WrestleMania 37でのリングデビューやWWE 24/7王座の獲得など、多方面での活躍を見せる“マルチ・エンターテイナー”ぶりは、多くのファンを魅了し続けています。
そして2025年1月、新年の幕開けとともに6枚目となるアルバム『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』をリリース。30代に突入した今、さらに深みを増したバッド・バニーの最新作に世界中の目が注がれています。
レーベル : Rimas Music
リリース日 : 2025年1月5日
名前 : Bad Bunny
本名 : Benito Antonio Martínez Ocasio
年齢 : 30歳
出身地 : プエルトリコ
音楽の力で希望を届ける―新アルバムと社会問題への思い
「ラテントラップのキング」と称されるバッド・バニーは、スペイン語ラップを世界規模へ広める存在として大きな役割を果たしてきました。2020年から2022年にかけては3年連続でSpotifyで最もストリーミングされたアーティストとなり、名声はさらなる高みに到達。しかし、その人気の裏側で、彼は社会的な問題や困難に直面している人々への思いを常に胸に抱いています。
特に、2024年に故郷プエルトリコを襲ったハリケーンの大被害や停電の長期化を受け、音楽を届けることへの意義とタイミングに、複雑な感情を抱いていたようです。インタビューの中で、彼は次のように語っています。
アルバム未収録となったシングル「Una Velita」
2024年9月にリリースされた「Una Velita」は、今回の新アルバム『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』には収録されませんでした。この曲ではプエルトリコが嵐や自然災害に翻弄される様子と、政府の無策・腐敗を批判しつつ、人々が助け合う重要性を強調。最終的には嵐の後に見いだされる希望や、愛と連帯で困難を乗り越えるポジティブなメッセージを歌い上げています。
2024年12月、リードシングル「El Clúb」の発表
同年12月、バッド・バニーはSNSを通じて「今年はほとんど音楽を出さなかった。だからこそ、ここにいられる意味は大きい。いつも聴いてくれてありがとう。来年は必ず俺の音楽を聴かせるよ。これは2人だけの秘密だ」とファンに向けメッセージを発信。
その翌日にアルバムから先行シングル「El Clúb」をリリースしました。
「El Clúb」は、失恋後の虚しさや後悔がテーマ。夜のクラブで酔いしれながら元恋人を思い浮かべる心情がリアルに描かれ、過去の幸せな日々と今の孤独が対比されます。「2019」「2020」など具体的な年を振り返ることで、叶わなかった未来への嘆きと、まだ消えない未練とが切なく絡み合っていく作品です。
Bad Bunny - El Clúb
『Debí Tirar Más Fotos』で伝える“瞬間の大切さ”と自信のメッセージ
そして、ファン待望の6枚目アルバム『Debí Tirar Más Fotos』がついにリリース。これまでの経験を通じて自らの音楽性を深く掘り下げてきたバッド・バニーは、プエルトリコ人としてのルーツや歴史を作品にしっかりと刻み込みながら、今まさに世界へとその想いを届けようとしています。
アルバムタイトル『Debí Tirar Más Fotos』(「もっと写真を撮るべきだった」)は、過ぎ去ってしまった大切な瞬間を記録すること、そして人との時間をもっと大事にすべきだという思いから生まれました。写真を通じて日常の一瞬一瞬を大切に残す意味―それを自分へのメッセージとして、そしてリスナーへのメッセージとして示しているのです。
収録曲について
新作『Debí Tirar Más Fotos』には全17曲が収録されており、Omar CourtzやLos Pleneros de la Cresta、RaiNaoといったプエルトリコを代表するアーティストがゲスト参加しています。彼らの多様なエッセンスが加わることで、バッド・バニーの音楽はさらに広がりと深みを増しています。
また、17曲のうち半数以上の作詞をバッド・バニー自身が手がけており、彼の強いメッセージと想いがアルバムを通じて力強く響き渡る仕上がりとなりました。
『NUEVAYoL』
プエルトリコの伝説的サルサ・オーケストラ、El Gran Combo de Puerto Ricoの1975年の楽曲「Un Verano en Nueva York」をサンプリングし、さらに元メンバーであるAndy Montañezがバックコーラスで参加。夏のニューヨークで友人たちと自由に過ごす楽しさや、プエルトリコの誇りを感じるエネルギッシュな雰囲気が詰まった一曲です。陽気なリズムとともに、夏の高揚感が一気に伝わってきます。
BAD BUNNY - NUEVAYoL
El Gran Combo de Puerto Rico - Un Verano en Nueva York
『BAILE INoLVIDABLE』
MAGが共同プロデュースした一曲。過去の恋人との忘れられない思い出をテーマに、ダンスと愛によって深い感情を覚えた日々が描かれます。思い出が今も消えず、胸の奥で揺れ動く切なさを歌に乗せ、リスナーの共感を誘います。バッド・バニーとMAGのコンビはこれまでも数々のヒットを生み出してきましたが、本作でもその絶妙なタッグが光っています。
BAD BUNNY - BAILE INoLVIDABLE
『KETU TeCRÉ』
カーディ・Bとの「I Like It」やバッド・バニーの「Yonaguni」などを手掛けたプロデューサーTainyが共同でプロデュースしたもので、Tainyはこのアルバムで半数以上の曲を担当しています。
失恋後の怒りと失望、そして吹っ切れた心情の変化が、印象的なリリックとともに描かれます。相手との距離が急に広がっていく喪失感と「もう未練はない」という決意が交錯し、エモーショナルに響く楽曲です。
BAD BUNNY - KETU TeCRÉ
『DtMF』
アルバムタイトル『Debí Tirar Más Fotos』の頭文字を取った曲。後悔や失恋を振り返りつつ、「もっと写真を撮っておけば」「もっと愛情を表していれば」という思いが鮮明に語られます。一方で、過去の恋愛を教訓として今をより楽しもうとする前向きな姿勢も描かれ、悲しみの中にも希望や成長を感じさせる仕上がりとなっています。
BAD BUNNY - DtMF
おわりに
新作『Debí Tirar Más Fotos』はリリース直後、全米アルバムチャートでリル・ベイビーの『WHAM』に次ぐ2位を獲得。2020年の『YHLQMDLG』以来、久々に1位デビューとならなかったものの、それは通常の金曜リリースではなく日曜リリースだったため集計期間が短かったことが原因とされています。しかし、全米ラテンアルバムチャートでは首位を獲得し、収録された17曲すべてが全米シングルチャートにランクイン。2025年の幕開けを象徴するような華々しいスタートを切りました。
アルバム全体から伝わるのは、プエルトリコ人としての誇りと、過去の恋愛や人生の教訓を糧にしながら成長を続けるバッド・バニーの姿。
社会的困難の中にあっても、音楽によって希望や喜びを届けることを決して諦めない――そんな強い意志が曲の端々から感じられます。
タイトルの通り、「もっと写真を撮るべきだった」という後悔と、それでも前を向く力が同居するこの作品は、ただのエンターテインメントを超えて、私たち自身の日々の大切さを見つめ直すきっかけを与えてくれるはずです。
今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️
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