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夢見るアフリカの星: TYLAのグローバルな成功は偶然か、運命か?"ファーストアルバム『TYLA』を解説

南アフリカ共和国出身のシンガーTyla(タイラ)は、2019年にデビューシングル『Getting Late』で国内で成功を収めた後、2021年にEpic Recordsと契約しました。

2023年、タイラはR&Bとアフロビーツの要素を巧みに組み合わせたアマピアノというスタイルで作成された楽曲「Water」をリリースし、16カ国のチャートでトップ10入りを果たしました。さらに、全米シングルチャートでは7位を記録し、同チャートにランクインした南アフリカ出身のアーティストとしては、55年ぶりの快挙であり、南アフリカのソロアーティストとしては初めての偉業を達成しました。

世界の音楽シーンにアマピアノを広め、輝きを放つタイラは、2024年3月に待望のファーストアルバム『TYLA』をリリース。本稿では、タイラの最新作にスポットを当て、その魅力と成果に深く迫ります。

レーベル  : Epic Records, FAX Records
リリース日 : 2024年3月22日
名前    : Tyla
本名    :    Tyla Laura Seethal
年齢    :    22歳
出身地   :   南アフリカ共和国


トラヴィス・スコットとの衝撃コラボ!

冒頭でも触れた、シングル『Water』のミュージックビデオは、公開から半年も経たずに1億4000万再生を記録し、ローリング・ストーン誌が選ぶ「2023年のベスト・アフロポップ40曲」のトップに輝くなど、この年を代表するナンバーとなりました。その後、11月にはレーベルメイトであるラッパーのトラヴィス・スコットによるリミックスがリリースされましたが、タイラ自身は当初、リミックスの制作を考えていなかったといいます。

リミックスのことなんて全然考えてなかったんだよね。私は「とりあえず『Water』をリリースしよう、かっこいいし、なんとかなるさ」って軽い気持ちだったの。でも、みんなが応援してくれて、「え、マジで?」って思ったわ。そしたらトラヴィスから連絡が来て、まぁ、彼の音楽のファンだから、断るわけにはいかなかったの……彼の音楽、マジでヤバいから。連絡をもらってから私は彼にパートを送ったの。で、彼がそれを受け取ってくれて、返ってきたものは本当に素敵だったんだ。

また、彼女はトラヴィス・スコットが南アフリカの要素を取り入れたことで、故郷の人々にとっても魅力的なものになったと語り、この新アルバムに収録されるリミックスは、彼女にとっても特に印象深いものとなりました。

トラヴィスが自分のパートに南アフリカへのシャウトを加えたのを聞いて、本当に故郷のみんながこれを愛してくれるって確信したの。彼は本当に私たちの文化を尊重してくれて、南アフリカの国番号「+27」を歌詞に入れたりしてね。それに、彼が曲に全く新しいエネルギーをもたらしてくれたのも素敵だと思う。みんな「Water」を夏のヒット曲として知ってるけど、トラヴィスが来て、それをさらに夏らしく、もっと力強く変えてくれたの。アフリカンなビートに彼を迎え入れるのは、本当にぴったりのコラボレーションだったわ。

Tyla X Travis Scott - Water (Remix)

タイラの軌跡:グラミー受賞から見る成功の意味

2024年2月に開催された第66回グラミー賞で、「Water」が「最優秀アフリカン・ミュージック・パフォーマンス賞」を受賞し、タイラはこの栄誉を手に入れた史上最年少のアフリカ人アーティストとなりました。

自分の名前が呼ばれて、あのステージに立ってスピーチするなんて、まるで夢のようだった。特に、私の年齢や経験の浅さを考えると、本当に信じられない出来事だったわ。正直、こんなことが起こるなんて思ってもみなかったし、この経験にはただ感謝するしかない。これは歴史に残る出来事よ。故郷にとっても、本当に意味のある瞬間。こんなに嬉しいことはないわ。

このように、歴史的な快挙を続々と達成しているタイラですが、彼女自身はまだ成功の到達点には達していないと感じており、自身の音楽キャリアにおける成功とその意義について述べています。

確かに色々なことを成し遂げたけど、私はまだ「成功」を追い求めている途中だと思ってる。成功が具体的に何を意味するのかははっきりしないけれど、自分の曲がBillboard Hot 100にランクインした時には、何か大きな節目を迎えたような感覚があったわ。それに、飛行機で自分の曲が流れているのを聞いた時なんて、本当に「え、マジで?」って思った。飛行機で流れるのはヒット曲だけだもの、これは何かのサインだと感じたわ。

収録曲について

自身の名前を冠したファーストアルバム『TYLA』は、全14曲が収録されており、ゲストにはGunnaTemsBecky Gなど、ジャンルや出身国を超えた幅広いアーティストが参加しています。

アルバム制作には2年以上を費やし、さまざまな人々との協力や自然な流れの中でキャリアを積んできたと彼女は述べています。タイラは、出会いやタイミングが神の導きによるものと信じており、試行錯誤を経て自身の音楽スタイルを形成してきたと述べています。

このアルバムを作るのに2年以上かかって、できるだけ多くの人と一緒に仕事をしてきたの。物事がなんとなく自然に進んでいった感じがするわ。まるで神様が、ちょうどいいタイミングで、ちょうどいい人たちを、ちょうどいい場所に導いてくれたみたい。曲が気に入ったら、その曲を作った人を見つけ出して、その人を招き入れたり、たまたまその街にいる人を呼んでみたりして。全部試行錯誤だけど、そういう様々な出会いがあったからこそ、自分の音楽がどれだけ成長したかを実感できるの。

『Truth or Dare』

4曲目『Truth or Dare』は、2023年12月にアルバムからのリードシングルとしてリリースされ、イギリスのアフロビーツチャートで首位に輝き、全米アフロビーツチャートでは3位を獲得しました。この曲では、過去に関係を壊した相手が予期せず戻って来た際の驚きや不信感、さらには自分自身の変化に気付く様子を描写しています。真実と挑戦をテーマに、相手の真の感情を見極めようとする内容が特徴です。

Tyla - Truth or Dare

『No. 1』

5曲目『No. 1』は、ナイジェリア出身のシンガーTemsとのコラボレーション楽曲で、自己愛と他者との妥協を許さない強い決意を歌っています。この曲では、関係が上手く行かなかった経験から学び、自分の幸福を最優先する選択が大事だと歌っています。二人は自己価値を認識し、自尊心を持つこと、そして関係において自己犠牲を避け、自分を大切にすることの重要さを訴えています。また、タイラはTemsとの共演を長い間望んでおり、アフリカの女性としての力強いメッセージを伝えたいと語っています。

テムズと私はずっと一緒に曲を作りたいと思ってたんだよね。そして、それが実現して、テムズの声は本当に素晴らしくてユニークだったわ。この曲はみんなのためにはあるけど、最初に思い描いてたのは、特に女の子たちのための曲だったの。私とテムズで、ガールパワーを前面に出して、アフリカの女の子たちを応援したかったのよ。私たちにとって大切だったのは、そのメッセージをしっかり伝えること。もしもこれが私のためじゃなくなったら、私は引き下がる。だって、自分を一番に考えることが大事だから。

Tyla feat. Tems - No.1

『Breathe Me』

6曲目『Breathe Me』は、タイラのブレイクソング『Water』を手掛けたSammy Sosoがプロデュースした楽曲です。この曲では、彼女の透明感溢れる歌声が際立ち、愛情や情熱の深さを表現しています。タイラは、相手への深い愛を歌い上げており、その愛が自分にとって不可欠な存在であることを伝えています。相手からの愛を感じ取ることで、他の何ものにも頼ることなく生きていくことができる、と彼女は表現しています。さらに、愛情や情熱が日増しに強くなることを望んでおり、タイラはこの曲に対する自身の想いを次のように語っています。

この曲は、本当に感情的で、リアルなんだよ。愛について歌っているの。愛ってどれだけ強力なものか、そしてそれ以外に何も要らないってことを表現しているの。私には他に何も必要ない、私たち二人だけで十分。君がそこにいてくれるだけで、それでいいんだ。

Tyla - Breathe Me

『Jump』

9曲目『Jump』は、ジョージア州カレッジパーク出身のラッパーGunnaとジャマイカ出身のSkillibengが参加した楽曲で、自信、成功、女性の力を讃える内容となっています。タイラは自身の成功を祝福し、世界中での成功を享受する姿を描きます。Gunnaは女性の魅力を称賛し、曲全体がポジティブなメッセージを伝えます。タイラはまた、個性の重要性とGunnaとのコラボレーションへの喜びを表現しています。

『Jump』って、本当にユニークな雰囲気の曲でしょ。私、この曲を通して自分自身を表現したくて、みんなに自信を見せたかったの。冒頭でSkilliが「オリジナルの女の子だ、君はレプリカじゃない」というセリフがあるんだけど、そのイントロが完璧で、私のパートに繋がるの。「ヨハネスブルグにはかわいい女の子がいないって?今の私を見て、それが君たちの好みだろう?」って歌ってるわけ。この部分は、私にとってすごく象徴的なんだ。私は、ヨハネスブルグ出身の女の子たち、故郷の女の子たちが、この曲を歌うのを聞くのが本当に楽しみ。

Gunnaとのコラボに関しては、本当にクレイジーな体験だったわ。家族に話すたびに、彼らは「本気で?もうやめてよ」と信じられないって顔をするの。でも、そんな反応を見ると、「これはマジで起こってるんだ」と実感するわ。とっても良い気分よ。

Tyla, Gunna, Skillibeng - Jump

おわりに

新アルバムについて、批評家はアフロビーツ、アマピアノ、ポップ、R&Bといった様々な音楽スタイルを巧みに融合させつつも、「自身のルーツに忠実」であることを高く評価しています。

タイラ自身は、アフリカのポップスターとしての地位を確立したいという強い願望を持ち、特にアマピアノを取り入れる際には、南アフリカの文化や背景を尊重し、音楽を通じて自身の誇りを表現することに重きを置いているようです。

ずっとポップスターになりたいと思ってたけど、その中でも特にアフリカのポップスターになりたかったの。私の音楽の根底には、南アフリカやアフリカ全域のアマピアノのリズムがあるんだ。アマピアノに手を出してみてから、新しいけどどこか懐かしく、故郷を感じさせる音楽を作り出せるようになった。それはアフリカ固有の音楽で、私にとって誇り高いものよ。アマピアノに挑む人の中には、ちょっと大げさな音を出す人もいるけど、私はそうなりたくなかった。ポップやR&Bを取り入れても、その本質を損なわないようにしたかったの。アフリカでは、音楽がすべてを象徴している。私たちの話し方や踊り方にさえ、音楽は息づいている。それは私たちの中に自然にあるもの、私たちの本質なんだ。

『Water』の大ヒットによって、タイラはアマピアノを国際的な音楽シーンに広め、アフロビーツを含むアフリカのサウンドに対する関心を一層高めました。しかし、彼女は世界的なポップスターを目指しており、現在の成功は彼女にとっての始まりに過ぎないかもしれません。


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