再燃する黄金期―Snoop DoggとDr. Dreが刻む新たな伝説 『Missionary』
カリフォルニア州ロングビーチ出身のラッパーSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)は、1992年にDr. Dre(ドクター・ドレー)のシングル「Deep Cover」とアルバム『The Chronic』で注目を浴び、翌1993年にはドレーが全面プロデュースを手掛けたデビューアルバム『Doggystyle』をリリースしました。アルバムは全米1位を記録し、彼のキャリアの始まりを象徴する作品となります。
その後もスヌープは着実に活動を続け、1996年にはセカンドアルバム『Tha Doggfather』を発表。映画への出演も果たし、ヒップホップの枠を超えた人気を獲得しました。さらに1998年にデス・ロウ レコーズを離れた後、2004年にはシングル「Drop It Like It’s Hot」で再び全米1位を獲得し、幅広い支持を得るに至ります。
スヌープはアメリカで2300万枚、世界で3500万枚以上のアルバムを売り上げ、数々の賞に輝いてきました。2022年にはドレー、エミネム、ケンドリック・ラマーらと共にスーパーボウルのハーフタイム・ショーに出演し、ヒップホップの歴史的瞬間を彩ります。2024年のパリオリンピック閉会式でのパフォーマンスでも、その世界的影響力を再び証明しました。
同じく2022年には古巣レーベルのデス・ロウを買収し、26年ぶりにそこからアルバム『BODR』をリリース。新生デス・ロウの復活はシーンを大いに沸かせました。
そして2024年12月、スヌープは再びドレーとタッグを組み、新アルバム『Missionary』をドロップ。『Doggystyle』から30年以上が経った今、二人のキャリアとスキルが凝縮されたこの作品は、50歳を超えたラップスターとしての思いを音楽という形でまとめ上げた集大成とも言えます。
レーベル : Aftermath Entertainment, Death Row Records & Interscope Records
リリース日 : 2024年12月13日
名前 : Snoop Dogg & Dr. Dre
本名 : Snoop Dogg / Calvin Cordozar Broadus Jr.
Dr. Dre / Andre Romell Young
年齢 : Snoop Dogg / 53歳
Dr. Dre / 59歳
出身地 : Snoop Dogg / カリフォルニア州ロングビーチ
Dr. Dre / カリフォルニア州コンプトン
最初の衝撃――90年代を支配した『Doggystyle』
1990年代、スヌープとドクター・ドレーは、東海岸勢に押され気味だった西海岸のラップシーンを力強く牽引し、現在のヒップホップシーンに多大な影響を与えました。特にスヌープのデビューアルバム『Doggystyle』は、彼の飛躍を決定づける作品として、リリースから30年以上経った今も90年代を代表する名盤として高く評価されています。
スヌープは当時を振り返り、「Doggystyleは俺そのものを表現している作品。ドレーは俺のすべてを理解し、その上でプロデュースしてくれたんだ」と語っています。当時、法的問題を抱えていた彼にとっては、音楽を楽しむことが“自由”につながっていたといいます。
一方のドレーも当時を振り返り、まだ未熟な部分があったと認めています。しかし今は技術面だけでなく、音楽そのものへのアプローチも大きく進化したと自負しています。
ふたたび動き出す運命の歯車――Snoop Dogg×Dr. Dreの最新章
いまやスヌープは50歳を超え、ドレーも還暦に手が届こうとしていますが、ふたりは再びタッグを組み、新しい音楽を生み出し続けています。スヌープは、昨今の音楽シーンにおいて歌詞(リリック)の存在感が薄れがちな点を憂慮しつつ、ヒップホップの核心は曲の構成やリリック、表現手法にあると強調。オールドスクール世代として、音楽本来の価値を再認識してもらいたいという思いを語っています。
一方でスヌープは、自分たちはいまもなお“全盛期”であり、ドレーの指導のもと独自のサウンドを復活させることに喜びと誇りを感じていると語ります。
ドレー自身も20年以上の時を経て、スヌープとのコラボを新しい形で実現できたことを強調し、年齢を重ねたからこそ生まれるヒップホップの新章に自信をのぞかせています。
アルバムについて
最新アルバム『Missionary』は、そのタイトルやアートワークで90年代のギャングスタラップが持っていた刺激的な“下品さ”をあえて前面に押し出しています。タイトル「Missionary」はスラングで“正常位”を意味し、アートワークはアメリカのコンドームブランド「Trojan Magnum」をモチーフにした大胆なデザイン。かつての熱狂を呼び起こす象徴的な表現が際立っています。
アルバムには、Eminem、50 Cent、Method Man、Sting、Jhené Aikoなど、豪華アーティストが集結。全16曲収録という大ボリュームで、リスナーの期待を高めています。さらにリリースに先立ち、名だたるアーティストのMVを手掛けたDave Meyers監督による短編映画が公開され、Method Manがナレーション、Jhené Aikoや50 Centがカメオ出演。アルバムへの期待感をいっそう盛り上げました。
収録曲について
『Outta Da Blue』
アルバム3曲目の「Outta Da Blue」は、カメオ出演でも話題となったAlusとのコラボ曲。フック部分でM.I.A.の代表曲「Paper Planes」(2007年)がサンプリングされており、スヌープとドレーが自信満々にラップを展開する豪快な一曲です。成功を手に入れた2人が世界を自由自在に駆け回り、欲しいものはすべて手にできるという自己肯定感を示すと同時に、レジェンド的な存在であるRun-D.M.C.へのリスペクトも垣間見えます。誰にも挑戦を許さない、強気な姿勢が全面に押し出されたトラックです。
Snoop Dogg feat. Dr. Dre & Alus - Outta Da Blue
M.I.A. - Paper Planes (2007)
『Gorgeous』
5曲目の「Gorgeous」は、アルバムのリードシングルとして2024年11月にリリースされました。ジェネイ・アイコとのコラボで、自信とラグジュアリーな世界観がテーマ。ジェネイ・アイコの官能的なボーカルとスヌープのカリスマ性が見事に融合し、夢のような雰囲気を演出します。至福の瞬間や可能性を歌うジェネイに対し、スヌープは“裏社会を渡り歩いた過去”と成功した現在をユーモアを交えて語るなど、二人の個性が華やかにぶつかり合う楽曲です。
Snoop Dogg feat. Jhené Aiko - Gorgeous
『Thank You』
7曲目の「Thank You」は、Sly & the Family Stoneのファンキーな名曲「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」(1969年)をサンプリングし、現代版G-Funkとしてよみがえらせた一曲。スヌープは成功とアイデンティティを称える一方で、ギャングスタ文化や過去の苦難を振り返ります。「また自分らしくいられることへの感謝」や「自由を楽しむ喜び」が歌詞のテーマとなり、ドレーとの強固なタッグによる絶対的な自信がうかがえます。
Snoop Dogg - Thank You
Sly & The Family Stone - Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin) (1969)
『Gunz N Smoke』
12曲目の「Gunz N Smoke」は、50 CentとEminemが参加し、3人がドレーへの愛と尊敬を原動力に自然とコラボに至った曲だとスヌープは語ります。
この曲では、The Notorious B.I.G.の「Dead Wrong」(1997年)や、D. J. Rogersの「Say You Love Me」(1975年)がサンプリングされ、ハードなギャングスタラップを展開。50 Centは恐れを知らない強さを、スヌープはギャングスタルーツと現在の成功の対比を、エミネムは若き日の怒りや苦しみを乗り越えた自分への反省をそれぞれラップしています。銃煙(Gun Smoke)は危険と暴力を象徴すると同時に、それを克服した彼らの誇りも示すキーワードになっています。
Snoop Dogg feat. 50 Cent & Eminem - Gunz N Smoke
The Notorious B.I.G. - Dead Wrong (Original Version) (1997)
D. J. Rogers - Say You Love Me (1975)
おわりに
30年ぶりにドクター・ドレーが全曲プロデュースを務めたアルバム『Missionary』は、彼らの過去作のDNAが色濃く息づく仕上がりとなりました。オープニングトラック「Fore Play」ではN.W.Aの「Straight Outta Compton」(1988年)のフレーズが引用され、7曲目「Thank You」にはドレーの「The Watcher」(1999年)のバースをサンプリング。まさに『Doggystyle』の正統な後継作ともいえる“往年のオマージュ”が随所に感じられます。
さらに、スヌープがStingをフィーチャーした「Another Part of Me」では、The Policeの「Message in a Bottle」(1979年)がサンプリングされるなど、音楽的に深みを増したアプローチも魅力。Cocoa Saraiとの「Fire」では、スヌープ・ライオン時代を彷彿とさせるレゲエスタイルが取り入れられ、多彩な表現をうかがわせます。
30年以上にわたってヒップホップの最前線で活躍してきたスヌープ・ドッグとドクター・ドレー。彼らが最新の技術と新たな手法を駆使し、なおも進化する姿を提示した『Missionary』は、過去の栄光に安住するのではなく常に革新を求める――そんなヒップホップの真髄を体現した一枚です。その情熱とパワーが、聴き手の心を再び揺さぶることは間違いないでしょう。
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