もっとたくさんの人数が乗れるバスにするべきでは!?
事務局のハラマルです。
自動運転について、私にでも分かるような資料があると、誰かの役に立つのではないか?ということで、関係者の方などに聞いて私なりに理解した内容を、できるだけ分かりやすく伝えていくというチャレンジです。
個人的な視点から意見や感想を述べさせてもらっています。
さて、今回は、実証で使用する車両の乗客数についてです。
この車両、今回の実証では、乗客数が最大9名しか乗れません。
え、少なくない…?もっとたくさんの人が乗りたがるんじゃないかな…?
はい、私もそう思いました!
ということで、私なりに、車両の大きさを決める要素は、大きく以下の3つの観点があるのかな?と整理してみました。
①実証・実装の困難さ
パッと思いつくは、これかと思います。
大型バスの運転を見たことがある方は分かると思いますが、大型車の運転は、普通車に比べて断然難しいです。運転免許も、普通車とは違いますよね。
大型車は全長が長いので内輪差が大きくなりますし、車体重量が重いので減速に時間がかかります。死角が多いという通常の大型車の特徴については、カメラ等をつけることで、カバーすることはできそうですが、運転自体の難易度が上がることは避けられません。
つまり、車両を大型にすると、車両のコントロールという技術的な困難さが上がるのは想像に難くありません。
また、これは次の②とも関係してきますが、車両が大きくとなると、通行できるルートに制限が出てくる可能性があります。
この辺りは、通常の路線バスやコミュニティバス等と同じだと思いますが、地域の道路は必ずしも片側1車線ずつあって、歩道もちゃんと確保されて、という状況ではありません。そうした細い道路などを通る際は、車両が小型の方が望ましいと思います。
それから、我々が自家用車を買う時と同じように、大きい車両を調達しようとすると、きっと金額面が高くなるはずです。
調達コストを考えると、小型車両の方が望ましいんだと思います。
こういったことを考えると、今から取り組もうとしているのは、まずは実証の段階です。
この時点から、いきなり困難度が高い大型車でやるよりかは、まずは小型車で実証を開始する方がケガが少ないように思いますね。
②幹線網との棲み分け
次の観点は、この自動運転の実証って、どこに導入しようとしているのか?です。
例えば、高速・長距離で移動するような大規模幹線道路を走行する場合は、大型の車両でたくさんの乗客をいっぺんに輸送することが効果的になるでしょう。そういう路線では大型車が適しているように思います。
一方、地域内の移動を支える路線の場合は、小回りが利く車両が、さまざまなルートを回る方が効果的だと思います。
世界中では、高速・長距離の無人運転化の実現に向けたチャレンジが進められています。それはそれで、国家プロジェクトとしてしっかり進めていただきたいと思います。
一方、我々、地方で取り組むべきことは、そうした大規模幹線道路に接続する地域の交通ネットワークの充実です。
大規模幹線道路が充実していても、移動した先の地域内の移動が不便では困ります。逆もまたそうです。
ということで、今取り組もうとしている自動運転は、地域住民の足となるような小回りの利く車両が、様々な路線を走り回って、皆さんの生活に利便性をもたらすことを目指しており、そうした役割分担の下、小型車両の実証・実装にチャレンジしているということだと思います。
都市部で、いつもバスに乗り切れないくらいお客さんが待機列を作っているという事情があるなら別でしょうけれど…。
③そもそも大型車って…
最後に、そもそも、今はなぜ大型のバスが走っているんでしょうか…?
そりゃ、当然、いっぺんにたくさんの方を輸送できるし、そっちの方が運転手が少なくて済むし、車両も少なくて済むし、その方が効率的じゃない?
そうなんですよ、効率的なので、こういう形になっているんだと思うんですが、でも、それって、輸送する側の効率なんですよね!
輸送というサービス提供側の効率を追求すると、このような形になるのは当然ですし、我々も、それが当然だと受け入れているかと思います。
でも、冷静に考えると、乗客にとって効率的なのは?と考えると、自分の乗りたいときに、乗りたい場所から、自由に乗れるというのが、あってほしい姿ではないでしょうか!?
いや、そんなん無理やろ…と思うかもしれません。
ですが。
私は、いや、そんなことないんじゃない?もっと明るい未来が来つつあるんじゃないの?と考えてみたいです。
これは、山口県のCIO補佐官である砂金信一郎さんの言葉ですが、私はこれを聞いた時に衝撃を受けました。
今あるものをデジタルに変えるのではなくて、今まで制限があってできなかったものをデジタルで実現する、そんな明るい未来を私は望みたいです。
例えば、個人が乗りたいときに車両を呼び出せるサービス、呼び出しに応じて出動・乗車・移動・降車ができる自動運転車両、複数人の呼び出しやルートの最適化を図るAI、そういったものが備わることにより、決して無理な世界ではないはずです。
なので、これまでは無理だったかもしれませんが、個人のニーズに合わせた時間帯・ルートを走行する、そういう乗客にとって理想的な自動運転を目指す、そういう観点からは、小型車で十分というか、小型車の方が適している気がします。
④おまけ
最後に、おまけとして、実は、今回の実証で使用する車両、立ち席も備わっており、電車のように吊革につかまって乗車することができます。そうすると、15名まで乗車できます。
が、今回は、まずは座った状態でシートベルトを付けての乗車をお願いすることとしています。
これも、安全第一側に設計を全振りしているからです。
個人的には、「電車だったら、もっと速度が出てるけど、吊り革につかまって乗車しとるやん!」と、なんか釈然としないところがあるのですが、こうしたところも、徐々に緩和されていくものではないかと思います。
そうしたことを国なり業界に要望していくのも、まずは、座席のみでの乗車を安全に運行したという実績がないと進みませんので、少しずつかもしれませんが、前進していきたい部分です。
まとめ
ということで、小型車両である理由を考えてみましたが、技術的・コスト的な問題、大規模幹線道路との棲み分け、将来目指すビジョンを考えると、非常に合理的な選択なのかなと思います。
ただ、やはり、たくさんの方に一度は乗車してほしい!そして感想を教えていただきたい!という強い思いがありますので、混雑時には譲り合っていただくなどして、交代で乗車していただけたらと思います。
車両が複数台あったら良かったのですが、これも初めての実証のため、なかなかそういうわけにはいきませんでした。
この実証がうまくいけば、次のステップでは複数台での運用にもチャレンジできればいいなと思っています。
そうすると、1時間に1本が、30分に1本、20分に1本となっていき、実運用に耐えられる頻度にもなりますし、乗車できなくて困ったということがなくなっていくのかな、と期待しています。
皆さんに満足していただけるサービスの実現に向け、一歩ずつ進んでいっているところだ、ということで、御理解いただけると幸いです。