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どうやって右左折しているの?

事務局のハラマルです。
自動運転について、私にでも分かるような資料があると、誰かの役に立つのではないか?ということで、関係者の方などに聞いて私なりに理解した内容を、できるだけ分かりやすく伝えていくというチャレンジです。
今回も、個人的な視点から意見や感想を述べさせてもらっています。


疑問

さて、今回、実証で使用する車両(マクニカ社の「EVO」)とシステムでは、どのような仕組みで交差点で右左折するのでしょうか?素朴な疑問です。

マクニカ社のHPを見てみると、車両には、何やら、センサーやカメラなどがたくさんついていることが分かります。

https://www.macnica.co.jp/business/maas/products/133978/

なので、素人の直感では、「きっとカメラで信号の色を認識しているのかな?」です。

誰に答を聞くべきでしょうか…?
誰か教えてくれる方いないかなぁ~?と探していたところ、今回の実証で使用する車両「EVO」の開発をおこなっているNavya MobilityのAdrianさんを見つけました!
彼は、日本国内の各地で車両を調律するため、わざわざフランスから来日され、しばらく日本国内に滞在し、あちこちの現場に行っているそうです。
コミッショニングと呼ばれる、現地を走行しながらプログラミング調整をしてく作業でお忙しい中、ちょっと時間を見つけて聞いてみました。

全く日本語がしゃべれないそうなので、どうやってコミュニケーションを取るかというと、はい、google翻訳です!

「google翻訳」で検索して、入力・出力の言語を選択、後は文章を入力すると、はい、こんなカンジです。

https://translate.google.co.jp/?hl=ja&sl=ja&tl=fr&op=translate

これ、左下のスピーカーボタンを押すと、音声も発してくれます。
これが無料なんて、凄すぎるな。
こんなんあったら、確かに、日本語を全くしゃべれなくても、日本でしばらく生活できるな…。

ちなみに、うどん屋さんでは、スマホでメニューを撮影して翻訳していました。IT人材、すごい。

で、お待ちかねの答えですが、なんと、「No」。

え?そうなん?
逆に、カメラで信号の色を認識していないのであれば、どうやって交差点で右左折できるんでしょうか?

と、ここで、私とAdrianさんとのやり取りを見ていた、詳しい日本人の方が、丁寧に教えてくれました。

このタイプの車両が交差点を通過する際、技術的に可能な方法はいくつかあるそうです。

①カメラで信号を認識する

私が直感で予想した方法ですね。
これ、もちろん、技術的には可能ですが、今回の実証ではこの方法を採用していないそうです。

理由は、まだ運行が実証段階だからということです。
カメラで信号の色を認識することはできますが、実際の現場では、例えば逆光で色が見にくい場所があったり、赤信号で緑矢印が出る信号もあります。それを機械的に処理しようとすると、そうしたパターンを、きちんとデータを取って覚えさせる必要があります。

実証が終わって、ルートや時間帯も確定すれば、そうした作業に時間とコストをかけることは可能です。
が、実証の結果によっては、今後、ルートや時間帯が変更になる可能性があるこの段階で、その時間とコストを費やすことは、無駄な投資になってしまう可能性があります。
なので、この技術を採用するとすれば、次のステージかなと思います。

②信号と連携させる

信号の色をカメラで認識するよりも、技術的に簡単な方法があります。
信号側に装置を設置し、信号の状態をデータにして車両に送る方法です。
全国では、いくつかこの方法が採用されているそうです。

なるほど、考える方はさすがですね。これだと、いちいちパターンを覚えさせる必要がありません。

Adrianさんによると、世界では、この信号連携がドンドン設置されていっているそうです。

が、こちらの方法も、ルートが確定してから施工しないと、実証の結果、ちょっとルート変えてみるか?となったときに、無駄な投資になってしまう可能性があります。

よって、これも、①と同じく次のステージでの対応になります。

③人がGOサインを出す

なので、今回の実証で採用している方法は、「人がGOサインを出す」という方法です。

え?自動じゃなくて、人?
と思われた方もいらっしゃると思いますので、詳しく御説明します。

プログラム的には、まず、停止線を認識した段階で、一旦停止します。
そこから、オペレーターが信号の状態や周囲を通行する車両・歩行者の状態を確認して、通行に支障がなければGOサインを出します。
すると、運行が再開されて、あらかじめ定めていた方向に右左折をする、という流れになります。
自動で運行している途中で、一旦停車するので、再運行のスイッチを押すというイメージでしょうか。

今回はオペレーターが車両に同乗しているので、そこで確認していますが、例えば、車両に同乗していなくても、遠隔地でカメラやセンサーを見て、GOサインを出すこともできます。
そうなると、車両内は無人ということになります。

無人かもしれないけど、ちょっと思っていた自動運転とは違うな…と思われた方は、是非、続きを読んでください。

考えておきたいこと

方法の①~③とも、結局は、誰にGOサインのスイッチを持たせるかという問題なのかなと思います。

カメラ性能等を信用して、その機械や仕組みにスイッチを持たすのか、信号からの情報を直接受信してスイッチにするのか、人の確認が必要なスイッチにするのか。
いずれも技術的には可能なので、どう使い分けるか、ということだと思います。

技術を使い分ける理由として考えられるのは、まずは、ケースや実証・実装のフェーズがどうか、でしょうか。

例えば、あらかじめ定めたルートを走行する場合だと、通過する信号が限定されるので、②の信号連携が効果的で間違いがないのかな、と思います。
ただ、あまりにたくさんの信号を通過するようなケースであれば、全ての信号に装置を設置するのは費用対効果的にどうか?という議論になるでしょう。①の信号認識の方が安上がりになるかもしれません。

また、今回のように、実証段階のフェーズだと、通過する信号が変わるかもしれませんので、いきなり信号連携をするのは得策ではないでしょう。

将来的に、あらかじめ定めたルート以外も自由に走行できるようになるのであれば、②だと全ての信号に装置を設置しなければならなくなるので、必然的に①の方法が採用されるようになるのかもしれません。

そして、もう一つ。
この議論をする際に忘れてはいけない、重要なことがあります。

私は、普段の自動車通勤の中で、とある交差点を右折するのですが、「赤信号+右折矢印」の状態で右折を開始しようと思ったら、対向車が突っ込んでくる(対向車から見たら赤信号のはず!)ということが、ちょいちょいというか、かなりの頻度であります。朝だから急いでいる人が多いんでしょう。

このような方がいる限り、例え、自動運転車両が信号を正しく認識し、交通ルールどおりに走行したとしても、事故は起きてしまいます
自動運転車両は、数十メートル先の障害物を認識することができます。と言っても、回避する際は、物理法則を無視することはできません
アニメのように、急にすごいスピードで回避したり(そんなことしたら乗客が危ない)、ジャンプしてかわすこともできません。
危険を察知して停車することはできても、速度を出して突っ込まれたらアウトです。

そう考えると、①・②のように機械的に自動運転をしていては危ない、まずは③のように、人が信号の状態だけでなく、信号無視で突っ込んでくる車がいないのかチェックした方が安心、ということになってしまっているのかもしれません。
案外、この理由が一番大きいのかもしれません。

おいおい、自動運転の足を引っ張っているのは人間なのかよ…と悲しくなってきますね。

オペレーターの方に、他の実証箇所での事例を聞いてみると、驚くような話ばかりでした。
右折時に対向車が赤信号でも進入してくることはしょっちゅう。
右折レーンから右折している途中に、後続車両が、右側から(対向車線を使って)追い越していく。
左折しようとしていたら、後続車両が、右から追い越して、さらに自動運転車両の前で左折していく。
そんな運転をする車両がいたら、人が運転していたとしても危険です。

周南市での実証では、そのような車両がいないことを願っています。
なんか、技術的な問題じゃないところがネックになっていくのは切ないですね。
こういう事情が、自動運転の導入には「社会受容性が大事」と言われるゆえんでしょうか。

まとめ

自動運転の右左折は、技術的にはいくつか方法があります。
まずは実証段階ですが、いずれ、ステップアップしていくことが期待されます。

しかし、最後の段階でネックになるのは、ルール違反をしてしまう人間の行動なのかもしれません。

困っているから自動運転にしたいのに、自分たちのせいで自動にできない、なんてことにならないよう、普段の運転から気を付けたいなと思いました。