時速約20kmって遅くない?
事務局のハラマルです。
縁あって、自動運転プロジェクトの端っこに参画させていただく機会をいただきました。生まれも育ちも文系人間なので、自動運転技術という複雑な仕組みも制度も全然理解できていないのですが、だからこそ、こんな私にでも分かるような資料があると、きっと誰かの役に立つのではないか?ということで、関係者の方や詳しい方に聞いて回って、私なりに解釈した内容を、できるだけ分かりやすく伝えていくというチャレンジに取り組んでみたいと思います。
内容は正確でありたいと思っていますが、分かりやすさを最重要視していますので、時には大胆に省略したり、言い回しを変えたりする必要があります。もしかしたら誤解を与えたり紛らわしい部分が出てくるかもしれませんが、御了承ください。
なお、文中に出てくる意見や感想は、完全に個人的なものですので、その辺りも踏まえて読んでいただければと思います。
さて、初回は、私も最初に気になったことです。今年度の実証で走行する自動運転バスの走行速度についてです。
今回の実証実験で用いる車両は、「Gaussin Macnica Mobility(ゴーサン マクニカ モビリティ)社」製の自動運転バス「EVO(エヴォ)」という車両になります。
こちらの車両、カタログ上では走行速度は「時速25km」となっていますが、日本国内での実証における走行速度は最大「時速18km」となっています。
今回の、山口県周南市における実証運行でも、こちらを適用します。
時速が約20kmというと、公道を走行している自動車の中ではかなり遅いです。
「そんな遅い車が走行していたら、渋滞の原因になるし、邪魔だ」と思われる方も、きっと多いかと思います。
そのお気持ち、非常に良く分かります。
自動車を運転しているドライバーや、同乗されている方からしたら、急いでいる場面でノロノロ走る自動車が前にいるとイライラするでしょう。
一方、以下のサイトによると、ママチャリの平均速度が時速12~19km、クロスバイクが時速18~22km、ロードバイクは時速20~25kmとされているそうです。
つまり、時速18kmというと、飛ばしているママチャリやクロスバイクと同じ程度とも言えます。
これを、例えば、自転車や歩行者の立場から見たらどうでしょうか?
特に、お子さんや高齢者からすると、自分が横断歩道を渡ろうとしているところに、飛ばした自転車が走ってきたら、と考えると、結構速いな、ぶつかってケガしないかな?という印象を持たれるかもしれません。
また、私は、茨城県境町で、「ARMA(アルマ)」という自動運転バスに乗車したことがあるのですが、乗客としての体験では、時速20km未満でも、思っていたよりも加速度を感じるな、という印象でした。
つまり、同じ時速18kmでも、自動車の運転手・同乗者、歩行者、乗客というそれぞれの立場によって、体感する速さ・遅さは、それぞれ変わってくるものだと思います。
ここで、じゃあ、どこに基準を合わせるかということですが、まずは「安全第一の徹底」ということで、低速での試験走行となっています。
とても極端な例で言うと、自転車に乗れるようになった子どもが、自分の乗車技術に自信を持っていたとします。
でも、周囲の人間とすれば、その子の乗車技術の自信に関わらず、まずは、すごいスピードでぶっ飛ばすのではなく、慎重に運転してほしいなぁと思うのではないでしょうか。
実は、これと同じタイプの自動運転車両は、世界中で23ヵ国以上・220台以上の導入実績があり、安全で信頼性の高い、快適な輸送を実現しています。なので、さっきの例え話のような「自転車に乗れるようになった子ども」ではなく、もう自転車に乗り慣れている大人と考えていただいて良いかと思います。
けれども、そうした技術を身近に体験することがない我々としては、サービス提供側のそうした自信・信頼とは関係なく、まずは安全第一に走行してほしいと思うのではないでしょうか。いきなり、スピードを上げて走行して良いよ、という方はいないかもしれませんね。
最近の例で言うと、ファミリーレストランなどで自動配膳ロボットを見かける機会も増えたかと思います。
アレも、最初に目にした際は、皆さん、ギョッとしたのではないでしょうか。ぶつからないのかな?こぼさないのかな?間違って配膳しないのかな?と、不安な目で見ていたと思います。(私はそう見ていました)
が、そうした機会が増えて、走行や配膳に信頼がおけるようになると、今度は、もっと熱々のうちに速く配膳してほしい!とか、いっぺんにたくさんの食事を配膳してほしい!というように思うようになるのではないでしょうか。
やはり、生活の身近なところに新しい技術が普及するには、少し時間がかかるものだと思います。
ただ、人間と違って、制限している速度以上の速さで走行したり、よそ見・わき見・居眠り運転をしたり、「これはまだ赤信号じゃない」と判断してアウトのタイミングで交差点に突っ込んだり、ということはありませんので、安心して走行を見守っていただければと思います。
自動運転も、まだまだ、皆さんに信頼してもらうためのフェーズだと思いますので、この実証を通じて、皆さんに安心して乗車してもらい、次はもうちょっと早く走行してほしいなぁと思っていただければと思います。
ちなみに、以下のサイトによると、時速20kmの場合は停止距離は9mだそうですが、時速50km、60kmになると、停止距離が32m、44mになるそうです。
停止距離9mくらいだと、走行中にも常に視野の中に入っているので安全が確保できる自信はありますが、我々が通常、自動車を運転する速度で走行している際、本当に今の車間距離で安全が確保できるのか不安になってきませんか?
そう考えると、時速20kmが遅いというのは確かにありますが、人間が運転している速度と車間距離も本当にこれで安全なのか、ということも考えるきっかけになったら良いなと思います。
立場によっては、「もっと速く走ってほしい!」と言う方が多くいらっしゃるかな、とも想定していますし、子どもたちに並走で競走して「勝った~」とか言われちゃうこともあるだろうなぁと思っていますが、それは次のフェーズでのチャレンジとして期待して待っていただければと思います。
最後に、今回のチャレンジで作成していくnote、特設HPからリンクを張っていきますが、note上でも「マガジン」としてまとめていく予定ですので、良かったら、こちらのフォローもお願いします。