見出し画像

少子化の原因は出生率?市町別の合計特殊出生率を自力で算出 データアナリストへの道#26

個人的にレノファ山口FCを応援していて、勝手にちょこちょこ話題に入れてしまうハラマルです。

期待値の高い(←これホント)今シーズンのレノファ山口FC、ホーム開幕戦は3月3日(日)です。
「総力10,000人プロジェクト」と銘打って、1万人の入場者を目指して様々な取組が進められています。既に、有料駐車場が完売になるなど、徐々に熱が高まってきています!
県民向けに無料招待・優待券も用意されていますので、早い者勝ち!さっさとチケットを入手して、スタジアムでお会いしましょう!

ところで、最近、「私もレノファを応援しています」という方に出会ったのですが、実は…と、カミングアウトするようなかたちではなく(笑)、無料で使えて名刺とかに貼り付けられる公式ロゴ(私は応援しています!)みたいなものがあると良いなと思いました!できればレノ丸入りがいいですね!

合計特殊出生率について

さて、データ分析に興味を持ってもらうために続けている、素人の勝手なデータ分析シリーズですが、先日、30年後の人口推計を可視化しているときに、出生率のデータってどういう動きになっているのかな?ということが気になったので、今回は、それをテーマにしてみようと思います。

調べてみて分かったことがあります。
まず、上の記事の中で、安易に「出生率」という言葉を使っていますが、実は、「出生率」と「合計特殊出生率」というものがあるそうです。(知らなかったのは私だけ?)

「出生率」とは、人口千人当たりの出生数のことだそうです。
「合計特殊出生率」とは、15歳から49歳までの女性の年齢別の出生率の合計ということで、つまり、おおよそ一人の女性が一生の間に産む子どもの数に相当することになります。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo-4/syussyo6.html から

「出生率」は簡単に算出できる一方、例えば、男性や高齢者が多い集団の場合、母数が増えて数値が低くなり、逆の場合は率が高くなることが想定されるため、精度が不明です。
「合計特殊出生率」の方が、女性が産む子どもの数が減っているのかという観点から、少子化の状況を正確に把握できると思いますね。

さあ、それでは合計特殊出生率を分析してみましょう!

と思ったら、都道府県別は毎年のデータがあるようですが、なんと、市町村別は5年に1回しか公表されていないようです!
え、こんな重要な指標なのに!?

世の中、少子化が進んで大変だということで、異次元の少子化対策を国が実施するとか言っているのに、その結果が反映されるデータは、都道府県別しか毎年追わないんですか!?これは驚きですね。
山口県内でも地域によって状況が全然違うので、はい都道府県別ですよって県全体の丸まった数字をもらっても分析しようがない気がしますよね…。

これ、どうにかならないんですか…。
とネットでいろいろ探していたら、いくつかの自治体では、独自に市町村別の合計特殊出生率を算出しているところがありました。
千葉県さんのサイトが一番分かりやすかったので、こちらを参考にさせていただきました。

なるほど。
同じやり方をしたら、私でも市町村別を算出できるかもしれません。やってみましょうか!
ここはひとつ、文系人間でもこれくらいできるんだぞっていうのを見せてやりましょう!(←誰に?)

それと、市町村別に数値を見た場合、短期的に変動しやすい傾向があるという注意事項の記載もありました。
確かに、出生数が少ない市町の場合なども想定されますしね。
例えば、大分県さんの場合は、5年平均として算出し、データの安定化を図っているようです。

この辺りの取扱いは、データが集計できてから考えることにしましょう。

データの収集・整理

それでは、必要なデータを集めて整理してみましょう。

まず、子どもの出生数については、厚生労働省の「人口動態統計」の確定数データのうち、「出生数、都道府県・市区町村・性・母の年齢(5歳階級)別」から引用しました。

こちらに、お子さんを出産したときの母親の年齢が5歳差毎に集計されています。
令和4年の下関市の場合はこんなカンジですね。(黄色着色部)

「人口動態統計」の「出生数、都道府県・市区町村・性・母の年齢(5歳階級)別」 令和4年山口県のデータから

次に、母数となる女性の5歳年齢ごとの人口は、総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」のデータのうち「【日本人住民】市区町村別年齢階級別人口」から引用しました。

同じように、令和4年の下関市の場合はこんなカンジです。

「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」の「【日本人住民】市区町村別年齢階級別人口」 2023年のデータから

一旦、試しにこのデータを使ってExcelで算出してみましょうか。
5歳差年齢区分毎に、出生数を女性人口で割ります。
本当は1歳差毎にやればもっと精緻になるんでしょうが、都道府県の場合は5歳差毎になっていますので、これに5を掛けます。
最後に、対象年齢分の数値を足し上げると、「合計特殊出生率」となります。下関市の令和4年度の場合は1.39となりました。

合計特殊出生率の算出イメージ(黄色セル)

どうやら、それっぽい数字になりそうなので、うまくいきそうです。
じゃあ、このデータで分析していくことにしましょう。

以前の記事にも記載しましたが、上図のようなデータ形式だと、人の目で見て分かりやすいですが、ツールで処理するには向いていないため、データとしては、「縦持ち」で整理していくことにします。こんなカンジです。
計算は、ツールの中で実施できますので、とりあえずは不要です。

データを縦持ちで整理していくイメージ

あとは、いつまで遡ってデータを集めるか?ですが、市町村合併があったので、今回は平成22年までとしてみました。
それ以前を合算しようとすると、旧町村分を、合併後の市町に集計したら良いんだと思いますが、労力がかかりますので断念。
この結果、中途半端に、13年間のデータとなってしまいましたが、まぁ、干支が一回りするくらいということで考えてやってみましょう。

Tableauを使った分析

合計特殊出生率

それでは、こちらを、データの探索型可視化ツール「Tableau」を使って分析してみます。
「探索型」というのは、データをいろんな形・関係で可視化することで、新たな気づきを探していくという使い方に適しているということです。(私が勝手にそう言っています。)

さて、まずは準備作業です。
先ほどのExcelデータには単純数値しか入れていませんので、このTableau内で合計特殊出生率を計算できるようにしてみます。

ちょっと複雑ですが、「計算フィールドの作成」をしてみます。
さすがに25回もやっていると、これくらいは簡単にできるようになりました。詳しく知りたい方は、過去の記事を参照されてください。

  1. 「母親の年齢が15-19歳代」の条件において、出生数を女性人口で割る

  2. それを5倍する

  3. 他の年代分も同様に作業し、合計する。

はい、その結果がこちら!

山口県全体の合計特殊出生率(ハラマルによる試算)

わざわざ「試算」という言葉を使っていますが、実はこの結果、山口県のHPと見比べてみたのですが、どうやら、どの年度も私の分析結果の方が若干、数字が低くなっているようです。
例えば、平成22年は公式:1.56に対して私の分析:1.52、平成28年は公式:1.58→分析:1.53、令和3年は公式:1.49→分析:1.45という具合です。

どこかで間違えたかな?とも思いましたが、どちらも国の統計データを使っているしなぁ…?しかも、同じくらいずれているしなぁ…?と。

で、思いつくことがありました。
それは、人口の数値です。人口のデータって、10月1日現在とか、1月1日現在とか集計時点が違うものがありますし、日本人・外国人を分けていたり合算していたりします。その辺りの差が出ているのかもしれません。

ちょっと困ったなぁ、答え合わせをしたいなぁと思いましたが、国の統計は計算結果だけなので、どのデータを使っているか分かりませんでした。
なので、やむなく、これで進めることにします。

ということで、公表値と、私の分析と差が生じている可能性があります。正確な数値は、公式発表分を参照してください。(0.04~0.05ぐらいを足したら公式発表分になるような気がしています。)

そして、こちらのグラフの気づきとしては、「あれ?言うほど合計特殊出生率って減っていないんだ」です。
平成22年が1.52だったのが、途中、平成27年には1.56に上昇し、最新の令和4年は1.44です。
県全体で見ると、驚くような変化があるわけではなさそうです。

市町別合計特殊出生率

さて、ここからが本番です。
元となるデータが市町別だったので、簡単に細分化できます。はい、こちら!

山口県の市町別合計特殊出生率

気づきとしては、まず、増減が激しい市町がありますね。これは予想されたとおりです。
上下に激しく動いているのは阿武町と上関町ですが、やはり人口規模が少ないと、「たまたま重なった」という事情で大きく数値が動いているのではないかと考えられます。

次に気づいたのは、多くの市町は1.3~1.7くらいに集中しているようです。
ということで、箱ヒゲ図を作ってみましょう!

山口県の市町別合計特殊出生率②

先ほどのグラフを変形しただけですが、「箱ヒゲ図」にすると、集団のバラツキ具合が一目瞭然となります。
ヒゲからはみ出たものは「外れ値」(この場合は、「たまたま」が重なった年)として見ることとしましょう。
箱の大きさはやや大きくなっている傾向があるものの、箱の中央の位置はあまり変わっていないように見えます。
こうしてみると、偶然の要素で大きく上下する自治体や年があるものの、市町別に見た時も、合計特殊出生率に劇的な変化がないように見えます。

出生数と女性人口

とすると…?
合計特殊出生率ってあまり変わっていないということは、実は、子どもの数って減っていないのか?

市町村別の出生数

なわけないですよね!
出生数は実際に大きく減っています。一番目につく下関市では、平成22年の2145人から、令和4年の1375人まで、35.9%も減少しています!
出生数2番目に多い山口市も、この期間内に25.4%も減少しています。
これはかなり衝撃的な数字です。

分子の出生数が減って、計算結果の合計特殊出生率がほぼ同じということは、分母の女性人口は・・・

市町別の女性人口

やっぱり減っていますね。
特に下関市の減少が目につきますが、やはり期間内に、23.1%も減少しています。

この出生数と女性人口をグラフにしたのがこちらです。

出生数と女性人口(市町別・年別)

年別・市町別にプロットし、色分けは市町別にしています。なので、同じ色が13個(13年分)プロットされています。
パッと見で、ほぼ同じ傾向にあることが分かったので、補助線を加えてみました。
ここから分かるのは、この13年間、どの市町も、出生数と女性人口がほぼ同じ割合で減少しているということですね。

見やすいように、この期間の始期である平成22年から終期である令和4年の増減で見たのがこちら。

出生数と女性人口(市町別・年別)平成22→令和4年

折れ線グラフでみたときに目立っていた下関市は、増減率としては実は中位くらいに位置しています。
一番減少率が高い(グラフの左下)に位置しているのは上関町で、出生数は30.4%に(69.6%減少)、女性人口は49.6%に(50.4%減少)となっているではありませんか…。13年間でこんなに減っているのか…すごい数字です。
そして、出生数の減少率が2番目に大きい(下から2番目)は美祢市で、38.7%に(61.3%減少)となっています。

実は、冒頭に紹介した将来推計人口(#24)の分析で、2020年から2050年の将来30年間で、10歳未満の人口減少率が最も高い県内市町は美祢市でした。
この将来推計は、美祢市のこうした急激な出生数の減少傾向が反映されていたものだと推測できます。

山口県内市町別2050年人口(2020年比) 10歳未満 ※#24の再掲

母親の年齢別

あまりにも衝撃的な数字が続いているのでだんだんマヒしてきますが、一体、何が起きているんでしょうか?
それを探るべく、次は、母親の年齢別で見てみましょう。

合計特殊出生率(母親の年齢別)

こちらが、最初に作った合計特殊出生率のグラフを、母親の年齢別に色分けしたものです。
これを見ると、25-29歳代と30-34歳代が、合計特殊生率上の中心世代であることが分かります。

合計特殊出生率(母親の年齢別)②

形を変えてみると、この25-29歳代と30-34歳代の特殊出生率は横ばいです。
グラフの中ほどを見ると、緑の35-39歳代は、平成22年より令和4年の方が若干上回っています
逆に、オレンジの20-24歳代が減少していることが分かります。

注意したいのは、このグラフは13年間分あるので、一人の女性に着目した場合、該当する世代が上にシフトしていっていることになります。
なので、20-24歳代の率が減少傾向にありますが、その方たちが25-29歳代より上の世代にシフトしたときには、前の世代と率が横ばいになっているということですね。

次に、出生数と女性人口も母の年齢別で見てみましょう。

出生数と女性人口(母の年齢別)

下段の女性人口だと、45-49歳が増えていることが分かりますが、それ以外は減少傾向にあるようです。

出生数と女性人口(母の年齢別)②

形を変えるとこうなりました。
この13年間で、出生数の増加率が1.0を超えた(補助線の上側)は40-44歳代、45-49歳代の2つの世代女性人口の増減率が1.0を超えた(補助線の右側)は45-49世代だけということになりました。

このパートをまとめてみると、合計特殊出生率の計算上の中心世代である25-34歳代は、率としては横ばいであるものの、女性人口の減少に伴い、出生数が減少しています。
40代以上の年齢では、女性人口や出生数の増加が認められますが、全体に占める割合が少ないため、全体として減少となっています。
20-24歳代では、合計特殊出生率の減少も認められましたが、25歳代以上になると、前の世代と同じ率になっていることから、「子どもを持ちたくない」など価値観が大きく変わっているわけではなく、この年齢のときには子どもを持たない、ということでしょうか

美祢市の場合

最後に、美祢市に着目してみましょう。
美祢市の場合、#24の将来人口推計の分析をした際、将来予測人口の増減率が、75歳以上は県内でも平均なのに、若い世代ほど県内で低位(ほぼ最下位)になるという特徴が認められました。
先ほどの母親の年齢別分析を、美祢市でやってみましょう。(フィルターをかけるという1操作だけです!)

合計特殊出生率(母親の年齢別)美祢市のみ

こちらが美祢市の合計特殊出生率の、母親の年齢別内訳です。
美祢市の場合も、25-29歳代と30-34歳代が中心ですが、平成22年はほぼ同じくらいだったのが、平成27年くらいから30-34歳代が最も大きくなり、それも減少していっているように見えます。
つまり、この辺りで、合計特殊出生率上の中心世代が、25-29歳代から30-34歳代にシフトしていき、その世代がさらに上の年齢になって出生数が減少していっているのではないか、と推測できます。

合計特殊出生率(母親の年齢別)美祢市のみ②

折れ線にすると、年齢別に並んでいないので、「子どもを産む中心世代のシフト」が分かりづらいですが、上二つの25-29歳代、30-34歳代が徐々に下がってきているのが分かります。

出生数と女性人口(母の年齢別)美祢市のみ

女性人口(グラフの下段)では赤の25-29歳代の減少が顕著です。
これに伴って、出生数(グラフ上段)でも25-29歳代の減少が大きいようです。また、30-34歳代も同じような動きをしています。

出生数と女性人口(母の年齢別)美祢市のみ②

13年間の増加率を見てみると、出生数の増加率が1.0を超えているのは40-44歳代だけで、中心世代の25-29歳代と30-34歳代は、女性人口が44~48%に、出生数も33~43%になっています。

これを、将来推計人口で10歳代の減少率が最も低かった(多くの人数をキープしていた)下松市と比較すると、その差は明らかです。

出生数と女性人口(母の年齢別)下松市のみ

下松市の場合は、25-29歳代や30-34歳代は、女性人口・出生数ともわずかな減少にとどまっています。
また、青の15-19歳代は女性人口が増加となっていますので、この世代が上の年齢にシフトして中心世代になっていく…という、好循環が期待できる構図となっています。

美祢市と下松市では、25-34歳代の女性人口の減少具合が大きく異なっていること、また、中心世代となる手前の15-19歳代の女性人口の増減の動きが大きく異なっていることが特徴として見えてきました。

まとめ

今回、少子化を測る指標として用いられている合計特殊出生率を見てみましたが、作業としては、私でも自力で算出できるほど簡単だったので、市町村別も5年に一度と言わず、毎年更新・発表しても良いのではないかと思います。

そして、実は、合計特殊出生率はこの13年間で劇的に変化しているわけではなく、そもそもの人口が減少していることが、少子化に拍車をかけていることがよく分かりました。

また、同じ山口県内、合計特殊出生率という指標で見たときには見えませんでしたが、市町別や母親の年齢別というデータと掛け合わせることで、地域によって大きな違いが生じているということが分かりました。
もっと他のデータと掛け合わせることで、違う課題や対応策が生まれるかもしれません。

それと、これは非常に大事なことなので、全部太字にしておきますが、今回は、たまたま母親の年齢別のデータがあったため、それを軸に分析をしてみましたが、当然のことながら、少子化は決して女性(母親)だけに左右されているわけではありません!
逆に、なぜ男性の年齢データを取得していないのか不思議に思ったくらいです。女性のデータしか取っていないということに、出生数が増減する理由を女性(母親)だけで考えているのではないのか!?と疑いたくなります。

世の中で少子化対策としてどのような対策が取られているのか、疎くてほとんど知りませんが(なぜか時々、子どもの数に応じて臨時金がもらえる、くらいの認識です笑)、それがどのように効果が出ているのかを見るための指標として、合計特殊出生率で良いのかな?という疑問が生じました。

この13年間で、実際、大きく減っているわけではありませんし、「合計特殊出生率を上げよう」とすると、現役世代の価値観とかライフスタイルに大きく干渉しようとしているみたいで、抵抗を感じますよね。

私の今回の分析では、合計特殊出生率(おおよそ一人の女性が一生の間に産む子どもの数)ではなく、そもそも女性の人口が減っていることが一番の原因ではないでしょうか。

折しも、「月500円弱」の負担(実質的な負担ではない)のことが話題になっています。
一口に「少子化対策」と言っても、地域によって違う現象が起きている可能性があります。もうちょっとデータを使って課題の解像度を上げて、的確な対策がなされることを期待したいですね。

今よりも人数が少ない社会が来ることは確実です。
そうした社会に対応し、さらに、もっと新しいことに踏み出せるように、デジタルを活用した変革に乗り出すことを検討されてはどうでしょうか。
やまぐちDX推進拠点「Y-BASE」では、山口県内の企業や団体、民間の方のデジタル活用を、相談から実現までフルサポートしており、無料で利用することができます
興味を持たれた方は、是非、一度、御相談ください。

また、レノファのホーム開幕戦行ってみたいけどどうしたらいい?という御相談にも、(個人的に)御対応します!