ニューヨーク・タイムズ効果は如何ほど? データアナリストへの道#34
勝手にレノファ山口FCを応援しているハラマルです。
本日はサッカーの天皇杯4回戦が予定されており、なんと、J1チームがこの山口県にやってくるという、またとない貴重なチャンスを迎えています。
冷静に考えて、試合があれば、他県から大勢の方がわざわざ山口県に来てくれるって、すごいことじゃないですか?
レノファ観戦で、遠くから来られたサポーターを見るたびに、「ありがとうございます。せっかくなので、満喫して帰ってください。」と思いますよね。
もちろん、だからと言って、負けるわけにはいきませんので、試合は強気で頑張ってほしいところです!
さて、ニューヨーク・タイムズの「2024年に行くべき52カ所」に、山口市が選ばれるという衝撃的なニュースがあったのが、2024年1月。山口県で生活する中で、何度、このフレーズを耳にしたことでしょうか。それほど大きな影響だったと思います。
あれから早7カ月…。山口市は一体どうなったんでしょうか?
私は、日中、事務所の中にいることが多く、休日はレノファ観戦時にしか山口市を訪れません。なので、実態が全然分からないのですが、外国の方がたくさん訪れて、街がにぎわっているのでしょうか…?
そう聞くと、皆さん、御自分の体験に基づく主観的な回答をされると思いますので、いやいや、ここはデータで客観的に分析してみましょう!
知らぬ間にRAIDAになっちょるわいな
人流データが無料で使えるツールと言えば、「V-RESAS」が思い付きますね。以前のこちらの記事でも、後半にV-RESASを使って、Tableau分析との比較をしました。
ところが、今回、ネットで探してもV-RESASが見つかりません。「あれ?おかしいな…?」と調べてみると、
何と、2024年3月末にサイトが閉鎖されているではありませんか!?
え~、知らなかった!うわぁ、残念。
代わりに「RAIDA」(レイダと読むそうです)というサイトが立ち上げられているそうです。
この中に「感染症回復:旅行」というテーマがあり、人流データが見れるようですので、今回は、こちらを使ってみようと思います。
国内旅行者数の例だ
まず、一番分かりやすいのは「旅行者数」でしょうか。このうち、「国内旅行者数」を見てみましょう。
「国内旅行者数」は、日本国内居住者の日本国内の旅行・観光における旅行者数の調査データだそうで、
旅行目的⇒「観光・レクリエーション」「帰省・知人訪問等」「出張・業務」の3区分
宿泊有無⇒「宿泊旅行」「日帰り旅行」の2区分
に分類されています。
ニューヨーク・タイムズ効果を見るために、旅行目的を「観光・レクリエーション」に絞ってみてみましょう。
まずは全国です。
2019年の年末頃からコロナ禍の影響が出ているようですので、旅行シーズンを考えると、2019年のQ2(4~6月)、Q3(7~9月)辺りが回復時に目指すラインでしょうか。
日帰り旅行(青)はまだ十分に戻り切っていないようですが、宿泊旅行(緑)は当時の水準にまで回復しているように見えますね。
それと、灰色が減っているので、「観光・レクリエーション」以外の、「帰省・知人訪問等」か「出張・業務」のどちらかが減っているようです。
次に、山口県だけにしてみましょう。
え、日帰り旅行(青)が減ったままのように見えます。2022年に一旦回復したものの、2023年に再度落ち込んでいますね。2024年Q1(1~3)月にまた少し回復しています。
宿泊旅行(緑)も2022年に回復して、2023年Q1(1~3月)に大きく伸びて、以後、また減少しているように見えます。
また、全国とは逆で、灰色(「観光・レクリエーション」以外の旅行目的)が増えているように見えます。
う~ん、ちょっと分かりづらいですね。どうしたらいいでしょうか?
良く見てみると、グラフのデータをダウンロードできるようなので、全国版の方を見てみましょう。
すると、このようなかたちでダウンロードできました。
なるほど。これなら、面倒ですが、他の旅行目的区分も同じようにダウンロードしたら自分でグラフ作成できそうです。
というわけで、作業をしてTableauに突っ込んで自分でグラフを作ってみました。
はい、上の図が、RAIDAで見た全国と山口県の国内旅行者数を上下に並べたものです。同じ形状のものが作れました。(当然ですけど)。
Tableauだと、ここからの加工が簡単です。
まず、RAIDAだと分かりづらかったので、旅行目的別に着色してみましょう。
はい、こんなカンジになりました。
全国だと「観光・レクリエーション」(緑)の戻りが大きく、「出張・業務」(赤)はコロナ禍前に比べて減ったままのようですね。出張が減ったのは、きっとオンライン会議などの普及でしょう。
山口県の場合、「観光・レクリエーション」の戻りはあるものの、そこまで戻り切っていない印象なのと、「出張・業務」が増えているようです。
なんか、全国とは違う動きをしていますね。
次に、旅行目的は「観光・レクリエーション」に絞って、宿泊と日帰りに分けて、全国と山口県を比較してみましょう。
概して、宿泊旅行でも日帰り旅行でも、山口県も全国も、同じようなタイミングで人数が大きく減少しています。
大きく差が出ているのは、グラフの後半(右側)です。
2023年になると、全国(青)は宿泊も日帰りもコロナ禍前に近い水準まで回復している一方、山口県(オレンジ)の特に日帰りは低い水準のままです。つまり、コロナ禍が明けて、多くの方が日帰り・宿泊旅行を再開しましたが、山口県はその行先としてあまり選ばれていなかったということでしょう。
ただ、直近の2024年のQ1(1~3月)は、全国では減少傾向になる中、山口県は増加傾向になっています。これがニューヨーク・タイムズ効果?なのかもしれません。
隣県の福岡県・広島県と比べるとこのようになりました。
灰色縦棒が全国、○がそれぞれ、オレンジ:山口県、緑:福岡県、黄:広島県としています。
緑の福岡県はかなりコロナ前に近い水準まで戻っているようです。黄色の広島も戻ってきています。オレンジの山口県は今ひとつ、といったところでしょうか。
この比較でも、2024年のQ1(1~3月)は山口県だけ伸びています。
他の旅行目的を見てみましょう。「帰省・知人訪問等」の旅行はこちら。
2021~2023年にかけて、下段の日帰りが全国より下回っています。これは、日帰りで山口県に帰郷できる人は、コロナ禍中は控えていた傾向が強いということでしょうか。
宿泊の方は、2つほど伸びている山があります。日帰りでの帰省を控えていた分、コロナが落ち着いたタイミングで宿泊で帰省する方が多かったということでしょうか。
「出張・業務」ではこちら。
全国(青)で見ると、コロナ禍の急激な減少の後、宿泊旅行は徐々に増加する一方、日帰りの方はやや落ち着いているようです。
山口県(オレンジ)の場合は、過去からジグザグの形状で、以前は日帰りの方の山が大きかったですが、直近では宿泊の方が大きくなっています。
こちらも、もしかしたら、業務で山口県に行くなら、日帰りじゃなくて宿泊にしようという動きになっているのかもしれません。これもニューヨーク・タイムズ効果?でしょうか。
外国人旅行者数の例だ
さて、次に外国人旅行者数を見てみましょう。
こちらは、なぜか、都道府県を先に選択しないと有効化されません。
なので、全国の傾向が見れませんでした。
いきなり山口県を見てみましょう。
う~ん、これを見ると、国内旅行者数に比べて、外国人訪問者数(オレンジ)が少なすぎて全然分かりませんね。外国人訪問者数だけをピックアップしてみましょう。
う~ん、増えたのか?と聞かれると、2023年Q4(10~12月)に比べると、2024年Q1(1~3月)はわずかに増えているようです。
過去と比べると、Q4同士で見ると、2019年より2023年の方が結構増えています。Q1同士で見ると、2019年より2023年の方が減っています。
これは、評価が微妙ですね…。
他の都県と比較してみましょうか。
東京都の場合、2023年Q4(10~12月)から、コロナ前を超える水準となっています。
広島県は、四半期ごとに増減があるのが特徴のようですが、同じ四半期同士でみた場合、2023年はそれぞれ2019年を超える水準となっています。
福岡県もコロナ禍前を超えています。
これも分かりづらかったので、Tableauを使って加工してみましょう。
まず、4つの道県を並べて、さらに2020年Q2~2023年Q1までは値が0なので、これを除外してみました。
また、それぞれの道県の最大値にリファレンスラインを引いてみました。
こうしてみると、山口県だけはコロナ禍前の方に最大値があります。
東京都、広島県、福岡県はコロナ禍後に最大値があります。コロナが明けてから、また、円安をきっかけに外国人観光客が増えてきており、そうした影響が出ているようです。ここに、山口県とは大きな差が出ているようです。
外国人消費額の例だ
「外国人消費額」というデータ項目があったので、これも見てみましょう。
と思いましたが、見る前から何となく、旅行者数に比例するのではないかと想像がつきますね。
早速Tableauで見てみましょうか。
あれ?消費額になると、山口県も最大値がコロナ禍後になっています…。
ホントかな?RAIDAで見てみましょう。
確かに、なぜか2023年Q4(10~12月)に消費額が増えています。
でも、これはニューヨーク・タイムズの発表前なので、違う要因でしょうね。円安なので訪問された外国人の消費額が増えた、というものかもしれません。
ただ、増えたといっても、実は、先ほどのグラフは、意図的に都県毎にスケールを変えています。同じスケールにすると…
このように、東京都と一緒にしてしまうと、どこに山口県の棒グラフがあるのか分からないレベルです。
東京都を外しても、かなり少なく見えますね…
国内旅行消費額の例だ
最後に、「国内旅行消費額」というデータを見てみましょう。
こちらを見ると、2024年Q1が前期より伸びているのは山口県だけということになります。
こちらは、東京都と一緒のグラフにしても、外国人消費額のような悲惨なことにはなっていません。
何が起こっているのか?
さて、分析した内容を一旦まとめてみましょう。
国内旅行については、
国内旅行者数は、観光・レクリエーションで山口県を訪れる人は回復しつつあるものの、全国や隣県と比べると、山口県の戻りは遅い。
ただし、全国や隣県は、コロナ禍明けの急回復が一旦落ち着きつつあるものの、今年1月から(ニューヨーク・タイムズの報道以降)は山口県は逆に伸びつつある。
国内旅行消費額も、旅行者数と同じような動きをしている。
出張・業務で山口県に宿泊する方が増えている。
外国人訪問者については、
全国や隣県は、コロナ禍前を超える人数が訪問している。
山口県も、昨年10~12月に比べ、ニューヨーク・タイムズ報道があった今年1~3月はやや増加傾向にあるが、コロナ禍前を超えてはいない。
ただ、外国人消費額は、山口県も含めてコロナ禍後の方がコロナ禍前を上回っている。
といったところでしょうか。
この辺りから推測されることは、コロナ禍が明けて、国内旅行も外国人訪問者も急回復しましたが、訪問先としては、まずは都市部など人気観光地に集中しているようです。
山口県は、コロナ禍明けの訪問先第一候補ではないけれど、急回復が一旦落ち着きつつある今年1月に報道があったため、次の訪問先?として注目されており、徐々に訪問者が増えていくことが期待されます。
外国人訪問者が多いのは、円安の影響も大きいようで、消費額が増えています。わずかながら外国人訪問者数も増えていますので、山口県での消費額の増加にも期待したいところです。
ところで、データの出典「国土交通省観光庁 訪日外国人消費動向調査」の元データを見てみると、こちらのサイトに調査結果のとりまとめがありました。
報告書では、宿泊拠点となる東京都・大阪府の周辺に日帰りが多いとされています。
が、よくよく見ると、日帰りが占める割合が多い都道府県のグラフの中に、山口県が散見されるではないですか!
右下のオーストラリアからの訪問者は、なんと山口県の日帰り率100%!
う~ん、非常に厳しい結果です。
まとめ
今回の分析で、確かに、山口県にも外国人が訪問するようになっていますが、全国や隣県の福岡・広島に比べて伸びは低いです。
当面は、円安の影響が大きいようですが、1月以降はニューヨーク・タイムズ効果での伸びもやや表れてきており、今後に期待したいところですが、日帰りが多いのは残念です。
話は一旦それますが、今シーズンの、とあるレノファの試合観戦後、いつもなら新山口方面にシャトルバスで帰るところ、湯田温泉の方向にお酒を飲みに行こうということになりました。
試合中に結構雨に降られてビショビショにもなって疲れていたので、路線バスに乗ろうと思ったのですが、何と、満員のため乗車できず、しかもそれがその日の最終便でした。
仕方なしに、雨の中、歩いて行かざるを得ませんでした。
先日の1万人プロジェクトでも、きっと、試合後に湯田温泉方面に行こうとしたら大変だったと思います。
せっかくレノファが盛り上がって、観客も増えつつあるのに、そうしたお客さんを、貪欲に観光や宿泊につなげていこうという取組が少ないのではないかな、と個人的には感じています。
もしかしたら、今シーズンの最終節のホーム横浜FC戦なんかは、大勢のお客さんが押し寄せ、結果によっては、その方たちが一斉に湯田温泉方面に繰り出すようなフィーバーになるかもしれません。
レノファさんのおかげで、スタジアムから新山口駅までのシャトルバスが充実されましたが、これだけだと、みんな「新山口駅方面への移動⇒日帰り」になってしまわないでしょうか。
ちょっと不安ですね。
これから(もっと)効果が表れてくるであろうニューヨーク・タイムズ効果、レノファ効果、せっかくの機会なので、国内外から山口県を訪れた方には、山口県を十分に満喫してもらいたいですね。