
広告作成を効率的に:生成AIとAgentの活用事例
こんにちは。NTT データのデジタルサクセスコンサルティング事業部にて、データサイエンティストとしてデータ分析や生成 AI の業務適用を推進している藤田です。
最近ではさまざまな分野で生成AIの活用が促進されていますが、広告作成の領域も例外ではありません。
我々NTTデータも昨今はCXやマーケティング分野に力を入れており、その一環として生成AIを活用した広告作成に取り組みました。
想定課題と目指す姿
広告の作成には時間もお金もかかり、多くの場合、非常に手間のかかる作業です。特にスーパーやコンビニの店舗では、専門的なデザイナーがいないことが多く、店舗スタッフが広告(店内POP)を作成することが一般的だと考えられます。
このような状況において、生成AIを活用することで、専門知識を持たない人でも簡単に一定の品質の広告を作成できるようにすることを目指しました。
ソリューション
生成AIの活用
まずはシンプルに広告対象(商品やサービス、イベントなど)の情報や、想定するターゲット顧客の情報を入力し、生成AIに広告素材(キャッチコピーや画像素材)を出力させることを試みました。しかし、初期のトライアルでは、生成されたキャッチコピーはありふれた内容であり、画像は要素が多く視認性に欠け、テキストとの一貫性を保てないといった問題が発生しました。
一般的に、LLMには細かいタスクに分けて具体的に指示することで回答精度が高まるという知見が知られています。そのため、広告作成プロセスを多段階のステップに分割し、ステップごとに会話形式でLLMにタスクを実行させるアプローチを採用しました。これにより、一回の指示で実行するよりもユーザーの意図に沿った品質の高い広告素材を生成することができることを確認しました。

(上記サンプルは店舗POPではないが)
広告作成フローの具体例は以下の通りです。
$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
ステップ番号 & ステップ名 & 内容詳細 \\ \hline
1 &
\begin{matrix}
広告対象の特徴 \\
・強みとターゲット顧客のニーズの整理
\end{matrix}
&
\begin{matrix}
広告対象の商品やサービス、イベントなどの具体的な\\
特徴や強みを洗い出し、想定している\\
ターゲット顧客のニーズとの整合性を確認する。
\end{matrix} \\ \hline
2 & 訴求軸の決定
&
\begin{matrix}
洗い出した特徴やニーズをもとに、\\
広告で強調するポイントを決定する。
\end{matrix}\\ \hline
3 & キャッチコピーの生成
&
\begin{matrix}
決定した訴求軸に基づいて、\\
ターゲット顧客に効果的にアピールできる\\
キャッチコピーを生成する。
\end{matrix} \\ \hline
4 & 素材画像の生成
&
\begin{matrix}
キャッチコピーに合う画像素材のアイデアだしと、\\
画像の生成を行う。
\end{matrix}\\ \hline
5 & 広告の作成(手動で実施)
&
\begin{matrix}
生成されたキャッチコピーと画像素材を\\
手動で組み合わせて、最終的なクリエイティブを完成させる。
\end{matrix}
\end{array}
$$
※ なお、運用にあたっては著作権・肖像権の侵害、景品表示法違反のリスクを踏まえた評価を実施しております。
上記アプローチにおける課題
広告作成プロセスを多段階に分けて整理したことにより、生成される広告素材の品質を高めることには成功しました。一方で、ステップごとに複雑なプロンプトを入力することや、多段階のステップを会話形式で進めるのはユーザーにとって大きな手間となることが分かりました。また、ユーザーによる判断や作業のブレにより、広告の品質が一定しないという問題も発生しました。
このことから、効率的に一貫性のある広告を安定して作成するためには、さらなる改善が必要であると考えました。
Agent技術の活用
これらの課題を解決するために、Agentの導入を検討しました。Agentとは、ユーザーの指示に対して生成AIが自律的にタスクを検討・実行する仕組みです。
Agentを活用することで、多段階の広告作成フローを自動化することができ、ユーザーはAgentが提示する複数の案から気に入ったものを選択するだけで広告を完成させることができます。気に入った案がなければ再考を依頼することもでき、その場合には、Agentが改善のために必要な追加情報を自律的に思考し、ユーザーに情報提供を求めます。これにより、ユーザーはAgentからの質問に答えることで、改善のサイクルを回すことが可能となります。
このアプローチにより、品質のブレを最小限に抑えつつ、効率的に広告を作成できるようになりました。

以下にAgentのデモ動画を掲載します。
GIF動画のファイルサイズの都合上、上図「Agentの活用イメージ」の右側の吹き出し4つに合わせて動画を分割しております。
(なお、デモ動画で利用している商品情報や商品画像、想定ペルソナ情報は生成AIで作成しました)
Agentのデモ(1/4):生成AIモデルの選択 + 商品情報の入力 + 訴求軸・アピールポイントの検討1回目
Agentのデモ(2/4):キャッチコピーの作成1回目 + 改善の要望 + キャッチコピーの作成2回目
Agentのデモ(3/4):画像の主題検討 + 画像生成プロンプトの作成
Agentのデモ(4/4):画像の生成

生成AIモデルの選択 + 商品情報の入力 + 訴求軸・アピールポイントの検討1回目

キャッチコピーの作成1回目 + 改善の要望 + キャッチコピーの作成2回目

画像の主題検討 + 画像生成プロンプトの作成

画像の生成
今後の展望
ここでは「デザイン機能の統合」「マーケティング活動の統合」の2つの観点で今後の展望について記載したいと思います。
デザイン機能の統合
現状では、生成された広告素材は人の手で組み合わせる必要があり、これにはセンスやデザインの経験が求められます。また、広告内のテキストについては、使用するフォントやフォントサイズ、文字の色によって見栄えが大きく変わりますが、これらの判断もユーザーに依存している状況です。生成AIにレイアウトや使用フォントをサジェストさせることも可能ですが、満足のいく結果には至っておりません。
そこで今後は、さまざまなクリエイティブテンプレートを利用可能なクリエイティブ作成ツールとAgentを連携させることにより、素材の組み合わせの効率化と品質の更なる改善を実現したいと考えています。
マーケティング活動の統合
広告作成のみならず、その前段階で行われる顧客分析や施策検討などのマーケティング活動にも、Agent技術および生成AI技術を活用していきたいと考えています。具体的には、顧客の購買行動データや市場動向を分析し、マーケティング課題の明確化と、それに基づいた適切なマーケティング戦略を立案する機能が考えられます。このように、マーケティング活動全体でAgent技術・生成AI技術を活用することで、広告作成を含めたマーケティングプロセスをシームレスに統合することができるようになります。一貫した戦略の下で顧客とコミュニケーションを図ることで、広告の効果を最大化し、顧客エンゲージメントの向上を目指します。
Appendix
本取り組みにおいて活用した生成AIは以下の通りです。
LLMはAmazon BedrockのClaude 3.5 SonnetおよびAzure OpenAIのGPT-4o
画像生成AIはAmazon BedrockのTitan Image Generator v2およびAzure OpenAIのDALL·E 3
本取り組みの実装に関してはチームメンバーによるQiitaの記事「Streamlit × LangGraphでHuman-in-the-loop Agentを実装する方法」もございます。こちらもご覧いただければと思います。
また、本記事の「Agent技術の活用」以降の取り組みについては、AWS Japan 生成AI実用化推進プログラムの一環として実施しています。
仲間募集中!
現在デジタルサクセスコンサルティング事業部では、採用を強化しています!AI・データ活用のためのコンサルテーションからデータサイエンス、データ活用に興味がある方はぜひ私たちと一緒に働きませんか?募集要項などの詳細はこちら。お待ちしております。
【募集要項】
https://dtc-careers.nttdata.com/business/
【デジタルサクセス®の取り組みについて】
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/digital_success/