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第2回  デジタルシフトを成功に導く経営者の決意とは?

 デジタルシフトの推進は、今までの延長線上では成功することは難しいでしょう。「第二の創業」ともいえる改革が必要になります。今回は、まずそのスタートに立つための経営者の果たすべき役割につきお話していきます。

デジタルシフトを成功に導く経営者の決意

 今、時代はデジタル社会に向かって猛スピードで変化を続け、企業もデジタルシフト変革を求められています。企業の変革には、経営者の役割・責任はとても大きく、経営者は不退転の決意をする必要があります。その決意とは、1)時代の変化を認識し、2)自ら先頭に立って行動し、3)全社変革の覚悟を持って、4)あきらめない心を持ち続ける、という4つの決意です。この4つの不退転の決意が、デジタルシフトをより高い確度で成功に導いていきます。

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1)時代の変化を強く認識する

 デジタルシフトにより、既に人々の生活は変わってきています。特にこの10年はスマホが登場し、多くのクラウドサービスがはじまり、AI・ロボット技術も進歩し、人々の生活は大きく変わってきました。人々の生活が大きく変わっていくことに伴い、企業も変わっていかなければなりません。しかし、多くの日本企業は、ガラケーがスマホに変わった程度で、仕事の仕方が根本的には変えられていないのが実情です。この状況に対し、経営者の意識はどうでしょうか。実際に経営者のお話をお伺いすると、デジタルシフトと聞くとネット業界、ベンチャー業界、海外の話であり自分たちには関係ない、気が付いていても行動に移せていないとお話される経営者が意外と多いことに驚かされます。経営者は、その地位にいる方ですから、成功体験を持ち自らの過去に自信を持ってしまっているがゆえに変化に気づきにくくなってしまうのかもしれません。しかし、会社の舵取り役である経営者が、時代の変化を社内の誰よりも早く、そして誰よりも強く認識していかなければならないのです。

2)人任せにせず率先垂範で行動する

 昨今、企業は分業化が進み、何か行動を起こすには時間が掛かってしまうようになりました。しかし、それ以上に企業の歩みを遅くしてしまっているのは、経営者だと感じることが多くあります。経営者が自ら責任を背負い先頭に立たずに、部下にすぐに任せてしまう姿をよく目にするからです。もちろん、ある程度ゴールの見えている改善仕事ならば、部下もやりがい を感じて良い効果もありますが、デジタルシフトのようにゴールが見えない改革仕事は、経営者自らが明確な方向を示し、先頭に立ち行動していくことが必須です。部下を呼び「〇〇くん、デジタル対応よろしく」で済む話ではありませんし、「今まで経験したことがないから」「デジタルとかわからないから」などと言い訳をしているようでは、絶対にデジタルシフトは成功しないでしょう。もし、今迄そこまで考えていなかった経営者の方がいらしたならば、今、この時点で意識を改めていただければと思います。もし、変わることができない経営者の方がいらしたならば、自らの最後の責任でその地位から降りることをお勧めしたいと思います。デジタルシフトは人任せにせずに、経営者自らが先頭に立ち率先垂範で行動していくことが何よりも大事だからです。

3)全社を巻き込む変革の覚悟を持つ

 デジタルシフトは、経営者をリーダーとした社員全員参加の企業変革です。企業変革とは、過去の自らの行動を否定し、新しい行動に全てをゼロベースで創り上げていくことです。変革には手順があり、ここでは、「社会心理学の父」とも呼ばれるクルト・レヴィン(1890―1947年)の「変革のモデル」で説明します。変革を進めるには3つの段階があり、まず、第一段階は「解凍」として、変革対象に揺さぶりをかけて過去を忘れさせる破壊のフェーズ、第二段階は「変革」として、変革対象に向かうべき方向や考え方を共有する創造のフェーズ、そして第三段階は、共有された方向に向かって進み続ける定着のフェーズです。このプロセスをリーダーが意図的に実行、コントロールしていくことによって変革を成功に導くことができます。ここで注意するべきとしているのは、こうした変革の「推進力」に対して、現状を維持しようとする「抑止力」が必ず働くということです。経営者は、全社を巻き込む変革を推進すると同時に、現状を維持しようとする「抑止力」と戦う覚悟が必要になってきます。私も、経営者としても、事業リーダーとしても変革を経験してきましたが、現状を維持しようとする常に抑止力(抵抗勢力)が働き、その力は想定以上であり、抵抗者を個人で特定することも難しく、精神的にも、肉体的にも疲弊する戦いであったことを思い出します。変革を推進しようとする経営者は、相当の覚悟を持つことが必要です。

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4)あきらめない心が成功に導く

 「デジタルシフトを本格的に目指す」と決めたならば、後はそれを粘り強く成功するまでやり続けることが大切です。今まで、経験もしたことも無いからこそ、過程においては失敗することもあるでしょう。社員から反対の声がでてくるかもしれません。しかし、その度に右往左往していては駄目です。世界中の企業が今、自社の生き残りをかけてデジタルシフトを推進し始めていますが、デジタル技術が発展し続ける中、成功に至った企業は一社としてありません。今の私たちの状況を例えるならば、未開のジャングルに迷い込んだようなものです。その場にとどまっていれば体力も温存でき生きながらえることはできるでしょうが、いつかは死が訪れます。前に進むしかありません。道を間違えたならば後戻りをしてまた新しい道を探すことを繰り返し、ゴールにたどりつくしかありません。その時に一番大切なことは、「生きる」という強い決意なのだと思います。同じようにデジタルシフトを推進する場合でも、「何かあってもあきらめずに成功させる」という経営者の決意のもと進めることが何より大切なのです。

第3回につづく

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鈴木 康弘(Yasuhiro Suzuki)
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任。
著書: 「アマゾンエフェクト! ―「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか」 (プレジデント社) 

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