GACKT「コロナは風邪」発言で批判。「死者の数で考えたらインフルエンザの方が危険」が誤りな理由
※この記事は掲載先で「コロナの記事は医療従事者のみにしたい」との理由からボツになったので供養のためにnoteに投稿したものです。
歌手のGACKTさんが5月14日、ライブ配信アプリ『17LIVE(イチナナ)』にて「新型コロナウイルスは風邪」と発言したことで批判が相次いでいます。
GACKT「コロナは風邪」「インフルエンザの方が危険」
ライブ配信は約2時間と長いため、問題の発言部分を書き起こしました。
よくある、と言ってしまうとアレですが、“コロナは風邪”派の人がよく言っている内容です。
とくに「インフルエンザの方が死んでるから危ない」はよく聞きます。本当にそうなのでしょうか?
2019年のインフルエンザ死亡者数は3,575人
厚生労働省が発表している人口動態調査によると、2019年のインフルエンザ死亡者数は3,575人です。
ちなみに2018年が3,325人、2017年が2,569人と、2011年から数えると死亡者数は増加傾向にあります。
新型コロナウイルスによる死亡者数は、この数字より多いのでしょうか?
直近1年間の新型コロナウイルス死亡者数は11,094人
日本国内における新型コロナウイルスの死亡者数は、NHKまとめによると11,957人です(5月19日 20:30 時点)。
しかし、ご存知のとおり初めて新型コロナウイルスの死者が確認されたのは2020年2月13日ですから、この11,957人には約3ヶ月ほど死亡者数が多く計上されています。
というわけで直近1年間(2020年5月19日から2021年5月18日まで)の死亡者数の累計を出してみました。
11,094人でした。
インフルエンザ死亡者数3,575人(2019年) VS 新型コロナウイルス死亡者数11,094人(直近1年間)。
「圧倒的に新型コロナウイルスの方が危険じゃないか」と思いたいところですが、ここで関連してくるのが超過死亡という概念です。
超過死亡を含めるとインフルエンザ死亡者数は毎年1万人
上記で取り上げたインフルエンザ死亡者数は、インフルエンザが直接の死因になった人だけです。
しかし、インフルエンザに感染したことにより慢性疾患(肺炎やそれ以外の持病など)が悪化して亡くなる人が多数います。こうした別の病気の死亡者数が例年の平均と比べて多い場合、インフルエンザの流行によって直接的、または間接的に亡くなった超過死亡として死亡者数に加えられます。
この超過死亡を含めると、インフルエンザによって亡くなる人は毎年約10,000人になると厚生労働省が発表しています。
インフルエンザ死亡者数約10,000人(例年平均) VS 新型コロナウイルス死亡者数11,094人(直近1年間)。
「どちらか危険なのかわからなくなってきた」と思いたいところですが、じつは例年と比べるのが間違っています。
ノーマスクのコロナ前と感染対策後のコロナ後の比較は誤解の元
これまでに取り上げたインフルエンザ死亡者数は、いずれもコロナ前のものです。
このコロナ前の数字とは、いくら比較しても何の意味もありません。
なぜならコロナが登場する前のマスクをつけなくてよかったときと、マスク着用・手指の消毒の徹底・密回避などの感染対策後のいまでは、感染者数そのものの数字が変わってくるからです。
コロナ禍はそもそもインフルエンザ患者数が激減
実際にコロナ禍においてはインフルエンザの患者数が約1,000分の1になったとの報道もあります。
つまり、“コロナは風邪”派の人は以下のような比較をしてしまっていますが、
本来であれば以下のような比較をしなければ正しい比較となりません。
死亡者数に繋がるそもそもの感染者数が大きく異なることを、“コロナは風邪”派の人は忘れがちのように見受けられます。
コロナの致死率はインフルエンザより高いとの研究結果も
ちなみにですが、新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザよりも致死率が高いとの研究結果も、いまは2件、出ているそうです。
研究1件目
研究2件目
これらの研究結果もコロナ前とコロナ後の比較ですが、死亡者数ではなく入院した人の致死率を比較しているため比較対象としては間違っていません(念のため)。
これはたとえば日本で人口が一番少ない鳥取県(約57万人)より、一番多い東京都(約1,300万人)で新型コロナウイルスの死亡者数が多いからと言って「東京のコロナは危険」とはならないのと同じことです。
死亡者数での比較、一見するとインフルエンザの方が危険だと思ってしまう人もなかにはいるでしょうが、異なる環境での比較はミスリードを招いてしまいます。ご注意ください。
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