「明日10時入り!」という恐ろしい呪い。

言葉は“呪い”だ。
「明日は10時に会場入りです」
と呪いをかけられると、人は10時に会場入りしてしまう。
ただ、呪いの強さは呪術師や儀式のレベルによって異なる。

会議という最高レベルの儀式中に、舞台監督という最高レベルの呪術師が上の呪いをかけた場合、まず間違いなく人は10時に会場入りしてしまう。しかし、会場付近で知らないおっさんにこの呪いをかけられても、あまり呪いは効果はない。たいていの人はこの呪いを跳ね返してしまう。
それでも、心配性な人や、普段入り時間をあんまり確認していない人はおっさんの呪いに囚われることがある。
夜、別の人に「明日の入り時間10時ってマジ?」とかラインして聞いちゃう。

話を転じます。

言葉で面白みを出す表現方法のひとつとして、“めちゃくちゃ強い言葉で飾る”というものがある。流行りの表現だと、「一億年ぶりにディズニー行ったわ」とか「BTSしか勝たん」とか。
ゲボ寒い突っ込みをしてしまうと、一億年ぶりなわけないし、BTSは誰かと勝負してるわけでもない。
好き嫌いは別として、この表現、不条理なユーモアで話を和ます効果はまあまああるし、「コイツなんか面白い言い回しをするな」くらいの印象を、相手に与えることができる。(私も今“ゲボ”とか使っちゃったけどべつにゲボ吐いてないし)
しかし、しかしだ。
“強い言葉”とは、転じて“強い呪い”である。
前段で呪術師と儀式のレベルを説明したが、呪文そのものにも強度のレベルがある。例えば、「明日10時必着。遅刻厳禁」と「明日10時くらいに会場が開きます」とでは呪文の強度が雲泥の差。前者の場合、私は9:30には会場に着くようにするし、後者だと10:30くらいに着けばまあ良いかと思う。
会場付近で知らないおっさんに言われたとしても、前者の場合はちょっと気をつける。なんなら夜ラインで舞台監督に問い合わせる。
このように“強い言葉”は軽い気持ちで使っても大きな影響力をつけてしまうことがままある。ネットミーム的に言うところの“可燃性の高い”言葉ともなりうる。

私のようなSNSでの影響力がほぼ皆無な人間でも、不用意に強い言葉を使うことで、誰かに呪いをかけてしまうかもしれない。
「ゲボ寒いんで有史以来初の氷河期到来だな」とかTwitterに書くことで、誰かがダウンジャケットを着て外出してしまって汗だくになって困るかもしれない。汗だくになった人は却って冷えて風邪をひいてしまうかもしれない。ひょっとしたらその人はエッセンシャルワーカーで、その人が仕事を休むせいで多くの命が危機にさらされるかもしれない。というバタフライ効果。

実際にはそこまで気を使うと何も出来なくなってしまうのだけれど……。
今私が発しようとしているその強い言葉は、どこかで誰かを縛る“呪い”になるかもしれないし、ときには人を深く傷つける刃になるかもしれない。
ということを自戒しつつ、これからも楽しくTwitterを使っていきます。


追記:
「呪いは自分にも跳ね返ってくる」とか「強い呪いも使い続けると弱くなっていく」とかいう事実も説明したいけど、面倒くさいからまたいつか。

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