2023年度第1回デジラボ(前半):Rhino/Grasshopperによるスタジアムの環境解析


はじめに

 こんにちは。2023年度第1回デジラボを担当する北九州市立大学大学院M2の奥薗と遊佐、B4の藤崎、森田です。
今回は、Ladybugを用いて視野解析をしてみました。
Ladybugは「2020年度第1回デジラボ:Rhino Grasshopper のコンポネントLadyBug の紹介」で扱っているため、詳しい説明は省きます。

 今回扱うデータは、ライブ空間やコンサートホールのような音や視線をより大切に扱っている空間を対象とします。簡単な例題とし東京にある日本武道館を模した形状を有するスタジアムを対象とした環境解析を行います。
以下に、解析モデルをモデル化したデータと、視野解析の方法を紹介します。

視野解析の概要と目的

 視野解析とは、視点に対してどのくらいの人が対象物を見ることが出来るかを数値化する方法です。スタジアムの勾配は約10°から40°程度であり、勾配を増やす要因は単に視界に入るようにするだけでなく、臨場感を持たせたいという理由や法規上の関係等で決まることもあります。そこで今回は、人間の視界の観点から勾配を決定することを目的とし解析してみます。

配布データ

使用したモデルのデータの配布です。
モデルの作成は行わず配布したデータのモデルをもとに視野解析を行ってください。

動画投稿

実際にコンポーネントを繋ぐ様子の動画です。


Ludybugのコンポーネント

視野解析をするにあたって、Ludybugの「VisibilityPercent」というコンポーネントを用います。

_view_points:人の視線となるポイントと繋げます。今回は、人が座席に座ったことを想定して床から1220mmを目の高さに設定します。

pt_weights:視線の優先度を設定します。視線を優先したい時などに重みづけを数字のリストによって行うことができます。

_geometry:解析の指定。
今回は①ステージ+アリーナ部分、②ステージ中心の2パターン行います。

context_:遮蔽物の選択→建物の外形となる部分。

max_dist:人が見る限界の長さを指定。
今回は距離による視線の防ぎはないため無限大に設定。

legend_par_:凡例の長さ指定。

_cpu_count_:CPU数の指定。

_geo_block:解析対象が不透明になり得るかを設定。
True:不透明なため家の後は0%となる。
Flase:透明なため建物の後のも透けて見え100%となる。

_grid_size:どの程度細かく結果を示すか。
小さい値に設定するとコンピューターの処理速度に影響。

_offset_dist:解析範囲から少しオフセットさせないと解析結果が上手くいかないため0.001mのような小さな値を設定します。

_run:をTrueにすることで解析が実行されます。

解析方法

 座席勾配の角度を最適化します。できる限り安全な角度とし、中央ステージ(中心から半径3mのエリア)がどこの角度からも見えるように最適化します。

 「VisibilityPercent」のresultに各座席から中央ステージがどのくらい見えているか出力されています。この結果を「Mass Addition」に繋ぎ、各座席の値の合計値(ΣVp)を算出します。

 最適化は「Galapagos」を用いて行います。できる限り安全な角度にするため,客席の勾配を小さくし各客席からステージが見える割合を大きくします。「Addition」に各階の勾配の値(θ1.θ2)を繋ぎ、「Subtraction」のAに「Mass Aadition」のRusult、Bに「Addition」のRusultを繋ぎます。ステージ見える割合から座席の勾配の差を算出し、差が最大となるように「Garapagos」で最適化を行います。変化させるパラメーターはこちらで、結果は以下のようになります。
                                最適化の式:Max = ΣVp - (θ1+θ2)

 勾配は約12°、23°となり実際のスタジアムと同じような勾配となったことが確認できました。
 パラメータを変化させて結果を比較してみます。1階層の観客席の高さを3mにすると、以下の結果になり中心から離れるにつれ見える割合が減少していることが確認できます。

 次に1階層の観客席の高さを4mにしてみます。結果は以下のようになり、3mの時と同様に中心から離れるほど見える割合が減少していることが確認できます。このような結果から、観客席の高さを決める1つの設計手段として視野解析を用いることができる可能性があると感じました。

まとめ

・第1回前半のデジラボではスタジアムの視野解析を行った。
・客席をできるだけ安全な角度とし、ステージ中応がどこの席からもみえるような最適化をした。

おわりに

 以上、Ladybugを使ったスタジアムの視野解析の最適化の紹介でした。後半では、同じモデルを用いてスタジアムの音環境の可視化シミュレーションを行います。そちらの方もぜひお読みください。今後とも様々なことを発信していこうと思いますので応援のほどよろしくお願いします。

参考動画


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