地方の構造エンジニアの自邸建築日記①

北九大/DN-Archiの藤田です。

このnoteは普段はデジラボのアウトプットについて学生が執筆しているのですが,最近は残念ながら更新頻度が落ちていることと,他のコンテンツがあっても面白いかなということで,こっそり自邸の建築日記をスタートさせようと思います(筆不精の飽き性なのでいつまで続くか分かりませんが…)。

建築日記といっても,まだ計画をスタートさせたばかりで,建設はおろか設計もこれからです。3歳になる子供が小学校にあがるまでには建てたいなと思い,少しずつ動き始めました。

一応一級建築士ですので職能上は独力で設計することも可能な訳ですが,私は建築家ではなく構造家。新進気鋭の有名建築家ほどの創造性に優れた設計能力を持ち合わせてはおりませんので,普段から付き合いのある建築家と二人三脚で創り上げていく予定です。

今後変わるかも知れませんが,まずは土地に関して,欲張りですが以下の2つを条件として考えています。

①広島駅から徒歩30分圏内
②緑に囲まれた自然豊かな環境

私は,中区八丁堀に広島事務所を構える㈱DN-Archiの代表取締役という顔と,北九州市立大学の准教授という顔があります。事務所は広島駅から徒歩圏内ですが,大学は週3回程度広島から新幹線で通っています。大学の最寄駅までは小倉駅からの在来線の乗り換えを含めると1時間以上かかるため,広島駅へは徒歩ないし自転車で通える範囲に居住したいところです。現在私は東雲地区にある妻の実家で暮らしており,バスや車,自転車などで広島駅へ通勤していますが,広島駅まで徒歩30分程度,車なら10分程度の場所で大きな苦もなく越境通勤していますので,新居も同じようなアクセシビリティを求めたく,まずは立地として①を理想としました。

①の条件で,公開されている土地情報を検索すると分かるのですが,平地であれば相場は最低でも3000万~高いと1億を平気で超えてきます。坪単価にして50~150万が相場という世界。広島駅は近年の再開発で地価がうなぎ登りであり,マツダスタジアムなどもありますので,まともな土地を手に入れるためには相当な財力が必要です。そしてそういった土地には残念ながら自然がありません。確かに便利だと思いますが,平凡な土地に家を建てるだけならハウスメーカーの建売の方がはるかに安上がりです。土地から購入となると金銭的にも厳しいし,何より②が満足できません。

そもそも,①と②の両立なんてあり得るのか?という話なのですが,非公開土地も含めれば,実は①と②を満足するような土地はゴロゴロしているんです。しかも,相場の1/10~1/100以下の土地価格で。ポイントは狭小がけ地。実は広島駅の北側には小高い山々が立ち並び,都心とは思えない緑の豊かさがあります。

広島駅の北側エリアは豊かな緑が広がるが,急斜面であり土砂災害危険指定地域に指定されている

ただし,広島県は近年の西日本豪雨で土砂災害が深刻な問題となっており,そのような土地に住居を新築することに対して非常に厳しい規制がかかっています。広島市では警戒区域図がマップ化されており,いわゆるレッドゾーンにはベタ基礎の2階建て木造は正攻法ではまず建てられませんのでハウスメーカーは手を出しません。そのような土地は結果として土地価格が暴落し,広島駅から徒歩圏内であるにも関わらず二束三文で売りに出されているケースも有るのです。周りが緑に囲まれた崖地。ワクワクしませんか?おまけに地価が安ければ固定資産税も安い。超最高じゃないですか。もちろん,正攻法では住居は建てられませんが,私は構造エンジニアです。土石流荷重をしっかり計算した上でその敷地に即した構造デザインをすれば良いのです。これまでいろいろな崖地に挑戦し,エンジニアリングの力で様々な規制を建築家とともに乗り越えてきました。

既に土地の候補は絞っており,役所との協議の結果次第では年明けにも購入に踏み切るところまできています。今回はこのくらいにして,次回は土地購入が決まった段階でまた書きたいと思います。かなり特殊な土地を購入することになるので,測量やシミュレーションにはxRをはじめとした情報技術をふんだんに活用したいと思っています。


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