デジタル田園タウン研究会_第13回(20231002)
デジタル田園タウン研究会(第13回)を開催しました。
当日の研究会の概要をご紹介いたします。
概要
日時:2023年10月2日(月)15:30-17:00 @Zoom
参加者:デジタル田園タウン研究会メンバー
講師:インテック社 安吉貴幸氏
ビジネスイノベーション事業部 クロスインダストリー企画部 部長
各地域のIoT取組状況
矢吹町:センシングに関して実装は無い状態。インテック社の実際の事業内容を参考に、台風時の河川の水位等を確認するツールが今後必要。また、現在注力している子供文脈でのユースケースだけではなく、防災へも今後注力する可能背もあると考えている。
狛江市:IoTの実装は至っていない。他方、水位の確認や、防犯カメラ等も活用して、防犯に役立てる方向性もあると考えている。
塩尻市ほか各地:インテック社が基盤導入費用を下げている一方、NEC社は価格が高い印象であり、前者とは小規模自治体でも手を組める認識。またIT化が目標ではないので、文化や生活を組み込んだ形で基盤事業を推進していく形で考えている。
民間企業:観光文脈でのIT活用として、ビーコン利用が挙げられる。センシングの面では、電池や管理の観点から検討事項が多いと認識。また、その後の収集データ利活用が要点と理解している。
民間企業:ビーコンのマーケティング活用は過去に経験があるので、別途話させて頂きたい。
講演内容
講師自身は富山出身であり、全社横断型の新規事業の企画立案を担当。
インテック社は1964年に創業し、3,000人強の従業員を抱えており、システムインテグレータ業を主軸としている。富山が本店ではあるが、東京含むいくつかの事業拠点を有する。トランポリンのオフィシャルサポーターをしており、トランポリン演技のAI解析を実施。事業領域は、自治体・行政分野、地域金融機関・地方銀行、新聞・地方紙、地域医療の4分野である。全国各地の課題をICTで解決し、地域の活性化に繋げたいと考えている。
富山市が掲げる「コンパクトシティ:串団子政策」の元、共にユースケース作りに注力してきた。LRT(Light Rail Transit:次世代路面電車)の事例では、効率的な乗り入れ検討や新たな停車駅の設置と共に、効率化を進めてきた。特に、富山駅高架下に電停を設置し、市の交通面における南北分断を改善した。また、まちあるき情報配信プラットフォームの事例では、一定の広告収入が見込めたものの、市の方針変更により本展開が出来なかった。
これら事例において重要な点は、課題に対して、様々な政策が連携している点である。
まずは、データとして可視化して成果を提示することが重要である。基盤事業の現在のステータスとして、富山市との10年以上の取り組みを経て、社会実験から社会実装へのフェーズへ移行している印象を抱いている。
社会実装に向けたICT課題として、高額な投資費用、ITサービスの濫立、分野横断型のIT展開、リテラシー・人材がある。社会実装を進める上で、富山市以外の他自治体への展開を見据え、データ利活用サービスをリリースした。
具体的には、IoTセンサー・カメラ・GPS等を用いて、データを収集して活用する。重要な点としては、各団体・分野の保有情報の相互連携であり、新たな価値創出で利便性向上を狙う必要があると認識。インテック社のデータ基盤はスマートシティーリファレンスアーキテクチャーに準拠している。
具体的なユースケースとして、河川水位監視の超音波水位センサー開発や、積雪センサーを活用した除雪業務の可視化、ゴミ収集車の経路可視化による住民からの問い合わせ対応が挙げられる。富山市以外では、富山県魚津市にて防災、除雪業務、ゴミ収集業務の3分野におけるスマートシティー作りに注力している。
そのほか、石川県羽咋市では、河川水位、積雪監視のユースケース作りや、登下校の見守りデータ、市内道路危険把握データの活用を検討している。
県レベルでの取り組みとして、富山県ではケーブルテレビ会社と共に道路、河川、積雪、企業等の情報を収集し活用を検討している。県民に必要な国・県・15市町村のオープンデータを一つのダッシュボードにまとめて表示している。ツール導入だけでは成功せず、地域の方々との連携取り組みを同時に実施している。
例として、GPSデバイスを子供に配布し、登下校時に通過した位置情報の収集が挙げられる。また、子供の自宅が特定できないような工夫を地域住民へ丁寧に説明する等の、地道な取り組みも行っている。これら現場に根付いた取組から、現場課題として獣害対策が挙がり、AIカメラの活用を実施している。
そのほか、地元事業者や地元大学との共創が重要と考える。
データ活用においては、官民のデータを掛け合わせ、子供の登下校の安全線の向上を目的としたユースケースを模索中。
県レベルでは、カメラを活用して、愛媛CATV社と共にマンション見守りサービスの開発や、花火大会の混雑検地に貢献している。スマートシティーでの活用事例が、観光業や製造業でも仕組みを活用できると考えており、産業データ連携基盤とも言えると考える。
今後の取り組みとして、DXからVX(仮想空間と現実世界を融合させる仕組み)への移行を検討している。インテック社はR&D 部門を有しており、没入体験を楽しめるMR等の開発に注力している。
質疑応答
Q:エリアデータ連携基盤は富山県内での取り組みだが、他県との連携は考えているのか。
A:他県との基盤連携も検討している。また、既に他県で基盤を導入している事例もあり、ユースケースベースで活用するのも良いと考える。
Q:GPS子供見守り事業では、子供が域外に出た際の通知機能はあるのか。
A:そこまでの活用は実施していない。
Q:見守り事業では親に直接的なメリットが無いと認識しているが、親へのインセンティブはどのようにしているのか。
A:説明会で納得頂き、より安全な街づくりの為のデータ収集を目的としている。
Q:民間の立場としてマネタイズモデルを検討していく必要があり、自治体と構築したサービスを民間が利用する際にフィーを頂く形や無償解放して地域に民間企業を先ずは集めて他の部分で収益を得るなど様々な形が考えられるが、安吉様はどのようにお考えか。
A:民間事業者すべてが同じ悩みを抱えている印象。福祉サービスは自治体として取り組む内容として金銭を頂戴する形も検討してもよいと考える。他方、民間向けの事業では、エンドユーザーに合わせて柔軟にマネタイズを検討する必要があると認識。
Q:民間事業者として取り組む中で、何に最も苦労した点は何か。
A:市民合意を得ながら推進するのが難しい。市民の声に耳を傾けすぎても需要に対応しきれなくなることもあり、他方、耳を傾けないと反発を買うことも多い。センサーを増やせば増やすほど費用が上がる点がネックだが、インテック社では工夫しながら進めている。
以上