ベトナムの巨額のガス田開発期限日。
アジア経済ニュースNNA ASIAは2023年06月19日に、ベトナムの巨額のガス田開発期限は、2023年06月30日になっている。
ベトナム南部キエンザン省(Kien Giang Province, Vietnam)沖20数10kmのメコンデルタ(Mekong Delta)の大陸棚にあるガス田「ブロックB」の開発で、2023年06月末のFID(final investment decision/最終投資決定)期限を前に関係者のぎりぎりの調整が続いていた。
陸上までの海底パイプライン建設を含めた総事業費はUS$100億(約1兆4,000億円)超になる。
事業主となる国営石油会社は南部の複数の火力発電所に20数年間にわたってガスを供給する算段だが、2050年時点の「炭素中立(carbon neutral/カーボンニュートラル)」達成を掲げてこのほど政府が決定した新たな電力開発計画で天然ガスへの依存を段階的に減らす方向が明確になり、投資回収に懸念が広がった。
最終的な投資決定には、天然ガスの引き取り保証が必要だになる。
同様の問題は、世界中で起こってる。
ガス田「ブロックB」の開発会社に子会社を通じて20数%を出資し、調査事業に参画してきた三井物産の関係者は、国営石油会社による投資最終決定が遅れている理由を、発電所側との燃料供給契約の遅れが最大の要因だと明かした。
電力事業を管轄する商工省は2022年11月、ガス田「ブロックB」で生産する天然ガスを、南部カントー市のオモン電力コンプレックス(第1~4発電所の総発電容量:381万キロワット)に燃料として送る計画を承認した。
その中で、ガス田「ブロックB」開発の主体となる国営ベトナム石油ガスグループPVN(Petrovietnam/ペトロベトナム)など事業者側の最終投資決定を2023年06月までと区切り、2026年末までにガスの生産を始めることなどを求めた。
ただ、関係者によると、最終投資決定には依然として大きな課題が立ちふさがっており、残り1カ月での決定は極めて厳しい情勢であった。ダウトゥ電子版によれば、発電所側が「ガスの引き取り保証」をこの時点になってもためらっているのは、ガス田「ブロックB」でガスの生産が始まってからの供給期間を23年間に延長し、PSC(Production Sharing Contract/生産分与契約)の期間を49年までに延ばす必要がある。
初期投資が巨額に上るガスの供給は、20年前後にわたる長期の引き取り保証と、価格の事前取り決めが行われるのが通常である。ロシアによるウクライナへの侵攻後に跳ね上がった国際相場を基にした価格では、発電所が大きなリスクを抱えることになりかねない。
また、ベトナムのファム・ミン・チン首相(Vietnamese Prime Minister Pham Minh Chinh)が国際社会の動きに呼応して打ち出した2050年時点での炭素中立で、ベトナム政府が2023年05月15日に正式決定した新たな電源開発の指針「PDP8(Vietnam's Eight National Power Development Plan/第8次国家電力開発基本計画)」がある。
「PDP8」では、2031年以降は天然ガス発電の依存度を段階的に減らし、水素との混焼や水素ガスへの移行を進めながら、2050年時点で天然ガスの使用をゼロに近づける方針が打ち出された。
現状では天然ガスを使った火力発電のコストが電力小売価格(電気料金)よりも高いことに加えて、「脱炭素化」の方針が鮮明になったことで、ガス田「ブロックB」で産出する天然ガスについても、2031年以降の引き取り保証が確約されるのか不透明な状況となり、投資回収の可能性に懸念を抱く声はいっそう高まっている。
開発中のオモン電力コンプレックスで第1と第3~4発電所の事業主を担ってきた国営ベトナム電力グループ(EVN)は、ガス田「ブロックB」の開発を主導するガス生産者との燃料供給契約で引き取り保証をするには、発電所の計画や運営に関する規定を一部修正する必要があるとの見解を示し、政府に具体的なガイドラインを早急に示すよう求めた。修正を求めた具体的な内容は不明だが、日系企業の関係者は、燃料調達費と政府が規制する電力小売価格の逆ザヤが発生した場合の損失補塡(ほてん)の仕組みなどを求めているのではないか、と推測されている。
ガス田「ブロックB」開発の事業主であるペトロベトナムによると、同ガス田開発の投資総額はUS$68億で、ガスパイプライン建設などを含めると総事業費はUS$100億余りに上る巨額事業である。
ガス田「ブロックB」は、水深77mの大陸棚にあり、天然ガスの推定埋蔵量は1,070億立方m。16年に事業が始まり、当初は20年第2四半期(4~6月)の操業開始を目指していた。供給先のオモン電力コンプレックスの開発計画が遅延した影響などで、開発事業も大幅に遅れている。
三井物産は子会社のモエコベトナム石油を通じて、プロジェクト権益の25.62%を有しており、上流の天然ガス開発・生産事業に加え、中流のパイプライン事業にも参画する。
パイプライン事業は複合的で、ガス田「ブロックB」からキエンザン省経由でオモン電力コンプレックスまでのパイプライン敷設、分配ステーションの建設、分岐してカマウ省まで伸びるパイプラインの敷設などが含まれる。
JBIC(Japan Bank for International Cooperation国際協力銀行)などが融資による支援を検討しており、日本のメガバンクなども協調融資を行う可能性がある。
ガス田「ブロックB」開発に参画する関係者の一人は、「関係各所がよりスピード感を持って具体的に計画を進めていく認識を共有し、協議を進めているところだ」と指摘。一方で、最終投資決定には、発電所サイドによるガスの長期引き取り契約にとどまらず、供給契約時に取り決める米ドルとベトナムドンの交換レートもドル高が課題になっていることを明らかにした。
2050年の炭素中立は政府の最重要課題で、最終投資決定が遅れれば、それだけ投資回収期間が縮まるジレンマに直面している。
https://www.nna.jp/news/2524718
https://www.vietnam-briefing.com/news/vietnams-kien-giang-connecting-mekong-southeast-asia.html/
https://www.jica.go.jp/Resource/vietnam/office/others/pamphlet/cr73nr0000005oyb-att/mekong_delta.pdf
https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12114625_01.pdf
https://academic-accelerator.com/encyclopedia/jp/mekong-delta
https://www.snv.org/project/transforming-rice-value-chain-climate-resilient-and-sustainable-development-mekong-delta
https://ewsdata.rightsindevelopment.org/files/documents/44/WB-P153544_ldILX8r.pdf