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マネジメントの”キホンのキ” その1
皆さん、こんにちは。だんだんと寒さが厳しくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?先週、技能を磨く上で ”キホンのキ” がとても重要だと改めて感じた出来事があり、「マネジメントのキホンのキ」の話をしたいと考えました。
マネジメントのキホンのキを理解していないために、過度な管理レベルを要求していることがありますので、しっかりとキホンのキを理解していきましょう。
まず、マネジメントとはそもそも何なのかの ”本質” をおさえて頂くために、ドラッカーの言葉を引用します。
“組織に成果をあげさせるものがマネジメントであり、マネジメントの力である“
重要なポイントは「"成果"をあげさせるもの」ということです。つまり、マネジメントすることで、どのような成果を達成させたいのかを最初に考える必要があるということです。
インシデント管理で思考してみる
インシデント管理の達成目標の1つには、「SLAで合意された時間内でインシデントから回復して、ビジネスへのマイナスの影響を最小化する」というものがあります。成果としては、ビジネスの機会損失や業務が停止してしまうことによる残業代などのムダなコストを発生させないことがあげられます。
では、この成果をあげさせるには、"何を管理" すればよいでしょうか?
別の言い方をすると ”何を測定" すればよいでしょうか?
マネジメントの基本の1つ目
実は、マネジメントの基本の1つ目は "測定すること" にあります。この場合は、「インシデントが発生した時刻」と「インシデントが解決した時刻」の2つだけあれば、SLAで合意された時間内に回復できたのか(達成目標を達成できたか)を判断することができます。
ただし、これは単なる "遅行指標" なので、「結果がどうだったのか」を測定しているだけで、「SLAで合意された時間内で解決できたか」、「時間内で解決できなかったか」の結果でしかありません。
では成果をあげるために、他に何を測定すればよいのでしょうか?
それは、「インシデントが発生してからの経過時間」です。これは "先行指標" として、結果が出る前の経過時間を測定することです。
これはインシデントが発生してから、今何分経過したのかのタイマーとして機能し、初期診断で10分経過していて、SLAで合意された60分以内の解決まで残り50分しかないから、より高次のエンジニアにエスカレーションしようとか、関係者が全員集まってスォーミングしようとか、次のアクションを取ることができるようになります。
3つのデータ(測定値)だけとれば十分?!
これまで、説明してきた通りインシデントの回復時間という測定基準に対しては、インシデントの発生時刻と解決した時刻(遅行指標)と途中の経過時間(先行指標)の3つのデータ(測定値)だけとれば十分です。
「えっ、いやいや、インシデント管理をやってるけど、優先度付け、分類、症状、対応内容など、様々なことを記録するように言われているんですけど。。」と思われた方も多いと思います。
マネジメントの基本の2つ目
実は、インシデント管理の別の達成目標として「インシデントの分析、文書化、継続的改善、報告をする」ことがあります。
この分析/改善/報告するために、分類を使って過去に発生したインシデントの傾向を確認したり、優先度の高いインシデントがどの程度発生しているのかを把握したり、インシデント対応を後から振り返って改善できることがないかなどの改善をするために、記録をしているということになります。
誤解を恐れずに言ってしまうと、「分析や継続的改善活動を行っていない」のであれば、これらの記録は真に活かされておらず、記録をするための作業工数はムダということになります。
インシデントレコードには、たくさんの記録が蓄積されているけど、記録しっぱなしで分析や改善に活かしていないということは、心当たりはないでしょうか?
マネジメントの基本の2つ目は "継続的改善" によって、有効性や効率性を高めることが含まれているので、記録したものを分析してどのように成果につなげるのかを継続的に改善がなされなければ意味がないということになります。
インシデントのステータスは何に使うのか?
では、「インシデントのステータス」を記録しているのですが、これはどうして必要なのでしょうか?
インシデント管理の達成目標の他の1つに、「インシデントの可視性を高めコミュニケーションを向上させる」というものがあります。ステータスがオープンでまだ誰もアサインされていないインシデントが何件あるかや、ステータスが対応中のインシデントが何件あるのかなどを関係者が把握することができます。また、症状、対応内容、アサインされた担当者なども可視性を高めてコミュニケーションを向上させることで利用します。
可視性とコミュニケーションが向上することで、迅速なインシデントの解決につなげることにも役立ちます。
マネジメントのキホンのキを理解して過度な管理をやめよう
マネジメントのキホンのキを理解できましたでしょうか。マネジメントの本質を理解することで、何故、このような記録(測定)が必要なのか、達成目標や成果とリンクして考えれば良いことが分かったと思います。
逆に、達成目標や成果に繋がらないような記録(測定)は工数のムダですし、組織の成熟度が高くないのに過度な管理レベルで何でもかんでも管理しようとすれば、高負荷でありながら成果をもたらさない過剰な管理になってしまいます。
なんでも「やり過ぎず」、”適切な管理レベル" から開始して、成熟してきたら管理レベルを上げていくようにしましょう。