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マネジメントの”キホンのキ” その3
~持続可能なサービスマネジメントとは~
「マネジメントの”キホンのキ” その2」では品質と変更管理を例にサービスマネジメントにおけるマネジメントの必要性について、「マネジメントをしない場合どうなるのか」を起点に考えましたが、今回はその他の評価指標にも触れたいと思います。
適切な管理レベルとは?
品質以外の評価指標には、有効性、効率性、順守性などが挙げられます。測定指標、マネジメントの欠如、リスクについては問題管理、インシデント管理または変更管理で例示しています。
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どの指標も納得感はあると思いますが、一息ついて無理のない計画を立て、順序立てて取り組みましょう。
まず評価指標には優先順位があり、優先順位はサービスが支える事業の性質に由来します。例えば、開発フェーズから運用フェーズに移行し障害対応の属人化が課題になっているのならば有効性を、スピード重視で変更をリリースすることが事業にとって是ならば効率性を最優先する、という判断がありえます。
そして、評価指標はトレードオフの関係が成立することもあります。例えば、順守性が最優先の財務に関わるサービスに必要以上の効率性を求め、変更におけるテストを十分に行わず、誤った計算結果を返すバグを検出できずに本番リリースされた場合、事業への影響は甚大なものになりえます。
最後に、サービスマネジメントの取り組みを陸上競技に例えるなら、短距離走よりは長距離マラソンに近いでしょう。ゴールまで走り続ける必要があるのに、ペースを考えずに序盤からスピードを出し過ぎては終盤までそのペースを保つことは難しいはずです。プロセスを整備しサービスマネジメントの取り組みをし始めたチームに、プロセスの有効性を求めることは妥当ですが、効率性も同時に追求することは果たして適切でしょうか。
一部の意識の高いメンバーには可能かもしれませんが、スキルレベルも考え方も異なる人々がチームで取り組むことですので、全員が過剰な無理をせずにできることの方が持続可能になります。チェックポイントで残りの距離を意識して奮起するように、段階ごとの達成度を実感できた方が、サービスマネジメントの取り組みへの支持を高く、そして長く保つことができます。急がば回れ。
「過剰かもしれない」から「合意された」品質のサービス提供へ
世界的に見れば教育水準が高い労働力に恵まれ、文化的な均質性が高く、ハイコンテクスト文化に分類される日本では、サービスレベルを決めなくても「何となく高品質」なサービスを提供できてしまう土壌があります。しかしそれは持続可能で、またユーザー/顧客から本当に望まれており、常に最も意味があることなのでしょうか?
サービスに100%の品質を暗黙に期待するのは、この労働人口の希少化が進む一方の昨今において有益な人的リソースの使い方ではありません。よりクリエイティブな方向に人の能力は活かされるべきでしょう。サービスレベルをあらかじめ定める過程で、現場のがんばりと職人芸によって支えられる過剰品質を避けることができ、また対応の定型化によってコスト競争力がもたらされます。
そして失敗の許容度が低くリソースが豊富なサービスであればこそ、当然のように高品質が前提になるので、品質の可視化は必須です。SLIにはサービスにとって最も大事なユーザー体験を選定します。プロセスの評価指標と測定指標も、その達成目標を端的に示すものを選定します。無形のナレッジを有形にして共有することが、選定された評価指標の達成を助けると同時に属人化を排除し、サービス向上とサービスマネジメントの取り組みの持続可能性、最終的にはユーザー/顧客側とサービス提供側の双方の幸せにつながります。
サービス提供とサービスマネジメントに関わるみなさまが、日々健康にご機嫌ライフを送ることができますように。