六甲全山縦走 前半(塩屋駅から市ケ原を経て新神戸駅)
2ヶ月くらい前に登山を始めた超ひよっこです。
六甲全山縦走の踏破を目標にしています。
現時点でどこまで行けるのか、確かめに行ってきました。
同じような初心者さんの参考になれば幸いです。
【朝6時、出発点の塩屋駅】
始発で塩屋駅に着く予定が当然のように遅れて6時出発。
1人なので問題なし。ノーバディ怒らない。yeah!
【6時30分、須磨浦山上遊園の旗振山】
日本は島国だと聞いていた。
しかし国境があった。
ないはずのものが目の前にある。
俺は異世界に転生してしまったのだろうか。
それはわからない。
しかし目の前の現実を受け止めなければ。
大丈夫、俺は冷静だ。
考えろ。
普通、国境付近は絶えず戦争モード。
気をつけなければ命が危ない…。
俺は慎重に進む事にした…。
周囲に国境兵士は見当たらない。
ホラ笛を吹いたり、吹き矢が刺さった兵士もいない…。
ちょっと見たかった。
国境…やはり目の錯覚だったのかな。
【7時、栂尾山下の400階段】
気を取り直して進むと、今度は永遠に続くまっすぐな階段。
てっぺん付近に人影が見える。
もしやあれは国境兵士?!
そしてこの階段は罠?!
意気揚々と進むと上から大岩が転がってきてペチャンコにする気か?!
しかし、さすがの俺。
罠とわかれば安心。
前をよく見ながら進めばいいのだ。
ここは匍匐前進で確実に登りきろう。
【7時40分、馬の背】
眼下に見下ろす海、北アルプスを思わせる岩稜線。
須磨アルプスと呼ばれる馬の背についた。
非常に美しい所だ。
しかし、流石の俺。
周りの登山者の話し声から重要な事実を掴む。
「本当に馬の背中みたい!!」
そうか、また罠か…
この無数の岩のほとんどは本当の岩。
しかし一つだけ、否、一頭だけ本物の馬が隠されている。
暴れ馬ロデオの伝説だ。
誤ってロデオの背を踏み、吹き飛ばされたら崖の下に真っ逆さま、滑落…。
大怪我で済めばいい方だ。
俺はお茶を飲み自分を落ち着かせ、慎重の上にも慎重を期して歩いた。
【8時20分、妙法寺】
全縦走に挑戦するにあたり、実は経験者から重要な助言をもらっている。
「水分は大切だが重い。飲んだ分は自販機で補充する事。」
なるほど、これほど貴重なアドバイスはない。
六甲全山縦走路の前半は山を登り、下山し、住宅街を通りまた次の山を目指す。
そして自販機は住宅街にあるのだ。
ここ妙法寺周辺で補充したい。
しかし歩けど歩けど自販機がない。
水分の補充ができない?
焦った俺は、立ち並ぶ家々が登山者を邪魔者扱いするような錯覚におちいる。
そそくさと早足になる…自販機を探しながら。
もうすぐ次の高取山登山口、補充は断念か。
そう思った時、後光が差し、それは現われた。
お寺さんの軒先に神々しく自販機様が鎮座している。
まばゆい。
住宅街を歩く登山者さえ救ってくれる慈悲深く、商売根性丸出しのお寺様、妙法寺。
俺はありがたく課金し十六茶を手に入れた。
ありがとうございます、妙法寺さま。
【9時、高取山山頂】
高取山を息を切らしながら登る。
歩き始めて早くも3時間、距離にして10km。
初心者には結構きつい勾配。
しかし長くはない。
一気に登って山頂につく。
振り返り天を仰ぐ。
始まりの国境の山はもう遥か向こうだ。
国境兵士だってここまでやってきまい。
俺は安堵してお茶を飲む。
のどを潤すお茶は平和そのものだ。
少し休んで回復。
軽い足取りで次の市街地、丸山に向けて下山を始めた。
しかしこの時の俺は知るよしもなかった。
恐ろしい怪物が近づいていることを。
【9時30分、高取山下山中】
高さ7~8mはあるだろうか、巨大な何かがそこにあった。
それは牢屋の様に見える。
こんな山の中腹に巨大な牢屋…。
背中に冷たい汗が流れる。
こんなにでかくて堅牢な牢屋が必要な生物…。
それはつまり、恐ろしくデカくて凶暴ということ。
国境兵士が可愛く思える。
ただ、中にはいかなる生物の気配も感じられない。
もしかして…脱走…。
俺は冷や汗を拭きながら、その場から逃げ出す。
そんなことあり得ないと自分に言い聞かせながら。
【9時30分、市街地丸山】
市街地の自販機で補充をし、次の菊水山に向けて歩く。
菊水山までの舗装路は思いのほか長い。
そして突然眼前に現れる看板。
そこにはこう書いてあった。
「すなっく黒帯」
その瞬間、俺は凍り付いた。
後ろに何かいる。
しかし動けない。
振り向くことも出来ない。
頭の中で緊急警報が鳴り響く。
あの牢屋から出てきた?
かなり大きい?黒帯?
ヤバイヤバイヤバイ!!!
次の瞬間、俺は宙を飛んだ。
投げ飛ばされたのだ。
もしや魚人柔術?魚人のジンベエ?
さっきの牢屋はインぺルダウンだったのか?!
混乱する頭の中、しかしどうすることも出来ない。
俺はただ飛んでいた。
【11時15分、菊水山山頂】
どれくらいの距離を飛ばされたのだろうか。
気がつくとそこは菊水山の山頂だった。
怪我はない、生きている。
よかった…。
展望台周辺では登山者がお弁当を食べたり休憩をしている。
もうお昼が近い。
俺はふと、頭がフラフラする事に気付いた。
これがハンガーノックというやつか。
空腹感はないが、急いでエネルギーを補給しなければ危険だ。
俺はバナナと手製の弁当を食べようとベンチに座った…その時…
フードパンダが配達員さんがいる!
俺は自分の目を疑った。
確かに菊水山は458m、低山だ。
だからって配達に登ってくるのまあまあしんどいぞ。
注文する人も鬼畜だが!
届ける方も変態かw!
心の中で突っ込む間もなく、彼はさっと行ってしまった。
配達が済んだということか。
彼を追いかけてみたいが、こちらはハンガーノック気味…。
食事をとることが優先だ、安全第一、いのちだいじに。
急いで弁当とバナナを掻き込み、そして追いかける。
しかしもういない…さては忍びの者か!
国境兵士といい、黒帯の魚人といい、忍びといい、すごいな六甲山。
日本全国、登山とはこういうものだろうか?
気をとりなおして次の鍋蓋山を目指す。
天王吊橋を通って、まだ有馬街道という現実を突きつけられ、少しテンションが下がる。
目標の新神戸はまだまだだ。
気合を入れなおして歩いていると…
【12時30分、鍋蓋山中腹】
突如巨大なポーネグリフが!!
麦わら帽子もかぶってないし、赤髪の知り合いもいないけど…まさか?!山賊王に俺がなる??
ひゃっほーい!!
歩き始めて20km近く…俺は気がふれたように猛進した。
気付けば周りの土は表面が軽く掘り返されている。
これは猪が餌を探した証拠だ。
山賊といえば猪。
山賊らしくイノシシを捕らえ、山賊らしく猪鍋を食らおう。
俺は狂ったように猛進した。
猛進するが心の中では泣いている。
そもそも20km弱の心づもりで来たのだ。
20km超えるなんて聞いてないよぉ(泣)!!
【13時30分、市ケ原】
鍋蓋山を越え、再度山を越え、俺はひた歩いた。
BBQ客で賑わう市ケ原も俺には関係ない。
猪突猛進!!
なにせ俺は山賊王になる男なのだから!!
初めての長距離歩行、しかも山道。
もうONEPIECEなのか鬼滅なのかわからない。
脳内は完全にキマッてる。
【14時15分、布引の滝】
歩きに歩いて、やっと布引の滝が見えた。
新神戸が近づいてきた証拠だ。
もうすぐこの苦行から解放される。
脚がどんどん早くなる…。
気がついた時、布引の滝から真っ逆さまに落ちていた。
アメリカアニメの目玉など置き去りにする例の技も発動した。
そして、この技は莫大な覇気を必要とした。
覇気が尽き、遠のく意識の中、俺は転がり続けた。
川を転がり坂を転がり階段を転がり…気がつけば地下鉄に乗っていた。
【14時20分、新神戸駅到着】
俺は山賊王になれたのだろうか?
それはわからない。
ただ、六甲全山縦走の前半を踏破した事だけは事実だ。
そしてこの記録が六甲全山縦走を目指すビギナーさんの役に立つことを強く望む。
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