【連載小説】新説 桃太郎物語〜第八章 (毎週月曜日更新)
【第八章 “決戦の地へ”の巻 】
桃太郎は一人北東の港町に佇んでいました。
宮本武蔵に弟子入りしてから一年が経過し、免許皆伝を得て今、この地にいます。
『桃太郎っ!!!』
振り返るとそこには猿、犬、雉がいました。
『みんなっ!!…三人ともっ!よく無事に帰ってきてくれたなっ!…話を聞くまでもないっ!!みんなかなり腕を上げたなっ!!!!』
桃太郎は興奮気味に言いました。
『おうよっ!?!忍者のきびしぃー修行を耐え抜いたこの猿様がいりぁ鬼の千や二千、一捻りよっ!!!』
『猿は相変わらずねぇ。桃太郎っ!私も半人半鳥の女王様に、鳥と人間の融合をみっちり学んできたからっ!!改めてよろしくねっ!!!』
『…俺に任せておけ…。』
猿、雉、犬はそれぞれ厳しい鍛錬にたえ、一回りも二回りも大きくなってここに戻ってきました。
『でもそういう桃太郎も、なんか雰囲気変わったなっ!!なんか大人んなったつーかっ?!!?』
『そうねっ。なんだか深みが出たと言うか…。桃太郎も腕を上げたわねっ!!』
『…ふっ…。』
『もちろんっ!!みんなに負けないくらい精一杯剣を学んできたからねっ!!!』
桃太郎はそう言うと、改めて表情を引き締め、気合を入れるのでした。
『時は来たっ!!我らが目指すは、憎き鬼巣食う鬼ヶ島っ!!!それぞれの大義を胸にいざゆかんっ!!!!!』
『おーーーーぉーーーーーっっっ!!?!?!』
四人は港から船を出しました。桃太郎の視線の先には、禍々しい気配を纏った鬼ヶ島がしっかりと見据えられています。
かくして桃太郎一行は、それぞれの思いを胸に、最後の決戦の地、鬼ヶ島に向けて帆を進めるのでした。
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「…北東の港町より一隻の船が近づいてきています。船に乗っているのは一人の人間と、三人の半人半動のようです…。」
「…まさか。我が鬼ヶ島にたった四人で乗り込んでくるおつもりですかねぇ…。」
「はっ!俺らもだいぶ舐められたもんだなっ!!」
「……うぅ…、良からぬ事態にならなければいいが……。…。」
「……。」
ここは鬼ヶ島内部の最下層に位置する洞窟、それぞれ別の色を纏い、強大な力を持った鬼が集まっています。
「赤鬼様…いかが致しましょうか…?」
青い鬼が聞きました。
「…全軍、戦闘態勢を取れ…。」
赤い鬼がそう言うと、青い鬼、緑の鬼、黄色い鬼、黒い鬼がそれぞれ言うのでした。
「…皆のもの聞いたなっ!全軍、戦に向けて戦闘態勢に入れっ!!!…全員…ここから生きて帰すなっ!!」
「…承知いたしました…。赤鬼様…、この緑鬼が必ずや曲者を捕らえてみせましょう。」
「おいおいっ!緑鬼よぉー!最近こちとら戦にも出ず体が鈍ってんだっ!奴らを血祭りにあげるのは、この黄鬼様だぜっ!!!」
「…あぁ……、面倒臭いっ!面倒臭いっっっ!!!」
そう言うと、四人は闇の中に消えていきました。
………。
『…こざかしい人間共めがっ…、……、………。』
赤い鬼はそう呟きました…。
…怒りに震え“狂気”を宿した鬼の目の先には…
…焼け跡と乾いた血で汚れた…
…古びた“着物”が飾られていました……。