【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十五章 (毎週月曜日更新)
【第十五章 “合流”の巻】
桃太郎が洞穴の奥に進むと、青鬼との戦いの場の半分ほどの大きさの開けた場所に出ました。
そして、またその奥には紅蓮の炎の様に真っ赤な洞穴がぽっかりと口を開けています。
桃太郎があたりを観察していると
『…桃太郎っ!!』
突然後ろから声をかけられました。
『…犬っ?!?!?!無事だったのかっ?!?…っ??…その腕は…。』
桃太郎は犬の左腕を見て言いました。
『…黒鬼との戦いでな…。…子イヌの仇はとった…。』
その時、
『桃太郎ぉー?!?!犬ぅーーー?!?!??』
また後ろから声が聞こえました。
『…雉っ?!?!?!…っ??…傷だらけじゃないかっ…。』
桃太郎は雉を見て心配そうに言いました。
『緑鬼のおじさんがしつこくって…。顔に大きな傷でもついたら、お嫁に行けないところだったわよ…。…でも大丈夫っ?!?緑鬼の灰も手に入れたしねっ!!』
その時、
『おぉーーーいっ?!?!みんなぁぁぁーーーーーーーーっ?!?!?!?』
一際大きな声がこだましました。
『…猿っ?!?!?!…っ??…またえらく派手にやられたな…。』
桃太郎は猿を見て心配そうに言いました。
『いやぁー!黄鬼のやろうが思ったよりも手強くてよぉー!?本当は簡単に倒せたんだけど、油断してたらこの有様よっ?!…でもきっちり落とし前はつけてきたぜっ?!?!…っ?!?!…犬っ?!?…お前っ…。』
猿は犬の腕を見て言いました。雉も心配そうです。
『…心配するな…。…こんなものかすり傷だ…。』
『猿っ!犬っ!!雉っ!!!とにかくみんな無事でよかったっ!!!!』
桃太郎は元気に言いました。
四人はそれぞれの戦いを終え、また全員で会えたことを喜びました。
…、
………。
…しかしそれは…
ひとときの喜びだということを…
紅蓮の洞窟の前に立つ四人は…
皆、理解していたのでした…。
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『…なんともいやはや…。これでもかってくらいの殺気がびんびん伝わってきやがるなぁ…。』
『…本当ね…。…正直あんまり関わり合いたくないのが本音かな…。』
『…こんな強大な気…。…初めてだ…。』
猿、雉、犬は紅蓮の洞穴を見ながらそれぞれ呟きました。
『………。』
『…どうしたの桃太郎?…なんか元気ないわね??』
『…桃太郎っ??もしかしてここまできて怖気付いたのかっ??』
『…いやっ…なんでもない…大丈夫っ!…でも…正直にいうと僕も怖くないって言ったら嘘になるっ…。…ただ…、まだ何も終わっちゃいないっ。…この奥にいる赤鬼を倒さない限り、この戦いは終わらないんだっ?!?!』
桃太郎は三人に向かって、決意のこもった眼差しを向けながら言いました。
『…桃太郎…。わかってるってっ?!!そんな覚悟はとうの昔に決めてきてるぜっ!!!』
『…桃太郎…。私もここまで来ておめおめと帰るなんて、もちろんまっぴらごめんよっ!!』
『…ふっ…。…いつでもいいぞっ…!』
三人も桃太郎の目を真っ直ぐと見ながら言いました。
『みんなっ…。…よしっ!!最後の戦いだっ!!!!気合入れていくぞっ!!!』
『おぉぉぉーーーーーーーー!!!』
『おぉぉぉーーーーーーーー!!!』
『おぉぉぉーーーーーーーー!!!』
…、
………。
…そう言いながらも桃太郎は…
先ほどからなぜか…
首筋の星形の痣が…
うずき痛むのを感じていました…。
かくして桃太郎一行は、赤鬼との最後の決戦に向けて、洞穴の先へと、歩を進めるのでした。