【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十七章 (毎週月曜日更新)
【第十七章 “覚醒”の巻】
桃太郎は抱えていた手負いの猿、犬、雉をそっと地面に寝かせました。
『…おっ…、…お前…?』
『…えっ…?』
『…っ……?』
猿、犬、雉は桃太郎の姿を見て驚きました。
「…体から放つ“気”が明らかに変わったな…。」
赤鬼は言いました。
「“気”だけでなく容姿や雰囲気も、先ほどとは異なる…。いったいどういうことだ…。」
それを聞いた桃太郎は、自分の手や腕を見ながら静かに答えました。
『…何だか身体の奥底から力が湧き上がってくる様だ…。』
「……気が付かない間にその三人をワシから音もなく奪いおった…。…どうやら姿形だけが変わったというわけではなさそうだな…。」
『…何故こんなことが起こったかはわからない…。…ただ…。…ひとつだけわかっていることがある…。』
「…ほう…。なんだというのだっ??」
桃太郎は今まで伏せていた顔を上げると、赤鬼を見遣りこう言いました。
『…お前は絶対許さないっ?!?!??!?!!』
その刹那、強烈な破壊音と共に、赤鬼がいた祭壇への階段が崩れました。
『…なっ、何が起こったっ?!?!』
猿は驚き叫びました。すると、先ほどまで赤鬼が立っていた場所に桃太郎の姿がありました。
そうです!桃太郎は赤鬼に向かって素早く踏み込み、渾身の拳をお見舞いしたのです!
『…目で追えなかった…、…凄まじい速さだ…。』
犬は驚きました。今まで、いろいろなものを見通してきた犬の目ですら見えなかったのです。
その傍に居た雉がいいました。
『…もしかして…、今ので赤鬼を…。』
『…いや…、まだだっ!?』
桃太郎がそう言うと、先ほどの瓦礫の中から赤鬼が静かに立ち上がりました。
「…なるほど…、何があったかはわからんが…、お前を本気にさせるというワシの望みが、奇しくも叶ったというわけか…。…久々に本気の戦いができそうだ…。人間よ…、覚悟するがいいっ?!?!?」
『…こんな力を得るなんて…お前には感謝しなければいけないな…。僕も楽しみだっ?!?!』
こうして覚醒した桃太郎と赤鬼の本当の戦いは、今まさに幕を開けようとしているのでした。