珍しく日本のドラマも観てみたシリーズ① 「大豆田とわ子と三人の元夫」は「当たり前」を破るところが魅力満載の大人コメディ
この夏は、自分的に本当に珍しい試みをしてみました。
日本のドラマを観てみた!
私がnoteに書いてきたレビューを見ていただくと分かりやすいと思うのですが、私が普段鑑賞するドラマ作品は海外のものが中心で、最近はコロナ禍でハマった韓国ドラマかどちらかで。
日本のエンタメコンテンツは2000年代の初めあたりから自然と離れていって、ここ最近まで本当に全然触れることがなかったんです。これはドラマに限らず、映画や音楽なども。理由は深く考えればいろいろとあると思うのですが。
で、今って海外ドラマや韓国ドラマって、配信プラットフォームの展開の発展もあって本当に話題作がたくさん増えてしまって、「もう追いつけない」って感じなくらいに私も観たいものが溜まりに溜まりまくってるんですけど(笑)、今回なぜそんな私が日本のドラマを観ようと思ったかと言うと、
今年のアカデミー賞をはじめ、昨年の海外の賞レースで話題になった「ドライブ・マイ・カー」を鑑賞して、出演していた岡田将生が個人的に刺さったので(笑)、「彼の出演作を他に何か観てみたいな」と思ってTwitterでつぶやいたところ、この作品をオススメ頂いたのがきっかけでした。
というわけで、
「大豆田とわ子と三人の元夫」
あらすじ等はこちら
この作品、2021年にフジテレビで放送された作品で、私もちらちらTwitterなんかで作品名を見かけてて、「当時話題になっていたな~」程度の認識しかなかったのですが、今回作品を観てみると予想よりも面白い造りでとても新鮮でした。
タイトルとポスターだけ観ていると「ちょっと大人向けのラブコメ?」みたいな感覚だったのですが、実際観てみるとそれはそうなんですけど、それに加えて、かついろんなルールと言うか定説を破ってみることで面白さを目指すみたいな感じの作品でした。
※ここから先は思いっきりネタバレしてますので、結末をお知りになりたくない方はご注意下さい。
まず、タイトルから結構インパクト強いですよね。「三人も元夫がいるのか」とか(笑)。で、主人公の大豆田とわ子を松たか子が演じるんですけど、
「○○する大豆田とわ子」ってナレーションでいちいちフルネーム呼ばれてたり(笑)。本人のタイトルコールが「え?そのタイミング?」とか(笑)そういうところから結構面白くて。
このドラマはとわ子を中心としたキャラクターの絡みがメインのドラマで、大きなストーリーの流れがあるわけではないのですが、裏側に流れている主題があって、それをはっきりとは描かないけどなんとなく視聴者も感じながら、人生を見つめるみたいなドラマに感じました。
「はっきりと描かない」というか、真正面から描くことを極力避けるみたいな。こういうところもちょっとルール破り的な。
そして、このドラマはとにかく台詞が強いというか、演技と言うより「台詞や会話が命」みたいな作品で、そのセリフもちょっと独特というか。「結構作家性が強い作品だな」と観てて思っていたら、
このドラマの脚本は、人気脚本家、坂元裕二さんの作品なんですね。途中まで制作陣の事を全く知らないまま観始めて、「誰が作っているのかな~」と確認して知りました。観ている側は坂元さんのグッとくるセリフに毎回ガンガン胸を刺されながら観る感じで。映画は監督で結構語られるところがあると思うのですが、ドラマは脚本家が注目されることが多いですよね。「面白いな」と思いました。シナリオ本が発売されてるのも、台詞が好きな人にはたまらないですね。
ちなみに私が残った台詞は、正確かは分からないけど「言葉にすると気持ちを上書きしてしまう」みたいな台詞と、「ロマンチスト最悪」です(笑)
観る人観る人が自分の日常や人生と照らし合わせながら作品を追っていけるような作りで、この敢えて「こうかな」とか「この中の誰かとヨリが戻るのかな」みたいな予測を気持ちよく裏切るところが、なんか「決まった人生や日常を歩まなくてもいいんだよ」と言うか、「どんな風に生きていても、毎日スッキリと生きてなくてもいいんだよ」、と励まされるというか。生きてきて大小なりとも後悔などが溜まってくる大人にはたまんないですね(笑)
個人的にどう感じたかをそれぞれ語るのが面白いドラマだと思うんですけど、このドラマには「喪失」 という大きなテーマもあって、私は元夫たちとの話よりも、その喪失感の描き方が一番大きく心に残りました。
1話から母の葬式のエピソードが出てきます。肉親の死から始まる話なんですよね。けど、彼女の会社の社長就任時期とちょうど重なって、葬式の日に遺灰を持って出社しなきゃいけないみたいな。悲しいけど日常も続くので、対処しながら向き合わなきゃいけない。こういうところ、「なんかリアルだな」と思いました。
で、驚いたのがとわ子の親友のかごめも5話で急死します。彼女にとって本当に大切な存在の人がまた亡くなるんです。この展開は本当に驚きました。このかごめのキャラもとても独特で、とわ子よりちょっと自由な生き方の子で、でもそれはそうせざるを得ないような。だからこそ、とわ子ととても波長があったような感じで。元夫の一人、田中が本当は愛していた人としてもとても重要な存在だったんですけど。この急な感じもなんかリアルと言うか。
だから、とてもおしゃれで暗い感じは全くない笑えるドラマなのに、どこか悲しくて。悲しみとどう向き合うかみたいな裏側のテーマがずっとあって。
途中、とわ子と恋仲になる 小鳥遊に「寂しい時は寂しいって言った方がいい」と言われるシーンがあって。結構グッときました。
このドラマ、最終回がまた凄く不思議で。亡くなった母の昔の浮気(?)相手が実は女性だったこと。その女性に家まで押しかけて会いに行って、そこでまたいいこと言われて帰ってくるんですけど。そこで何かが解放されたとわ子の家に元夫三人が集まって。ここら辺はもうファンタジーみたいな(笑)ありきたりな終わり方をしない。最後までこの「なにかを破る」みたいなところを貫いているドラマだったと思います。結構勇気がいるラストだと思うんですけど、坂元裕二脚本だからこそできたことなのかもしれないですね。
演技面でいうと、凄い演技力を楽しむというような作品ではないのですが、松たか子が主演ってところからして、出演者に演技力がないとこういう空気を作れないようなドラマだと思うので、安心して観れたドラマでした。当初目当てで観ていた(笑)岡田将生も上手かったです。っていうか、この岡田将生と離婚。考えられない(笑)他のキャストの皆さんもそれぞれとても良かったと思います。市川実日子のかごめもぴったりでしたね。途中出てきたオダギリジョーは完全にズルいわ(笑)
というわけで、この「大豆田とわ子~」が結構面白かったので、もう1本気になっていた日本のドラマを続けて観てみることに。その作品は次でレビューします!
おまけ
このドラマ、主題歌も凄く面白い試みがあって。本当にいろいろと工夫されているドラマでしたね~
おまけ2
とわ子は10代女子の母親でもあるんですけど、このあたりの感じも個人的に結構刺さりました。旅立たせたくない気持ちとか分かるな(笑)