地方公務員の売りとは安定さ
若手を中心に、公務員の中途退職者が止まらないようです。
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総務省の「地方公務員の退職状況等調査」によると、定年退職でない主に自己都合による普通退職者は12,501人と過去最大規模となっています。
先週のnoteでも記載しましたが、今回の人事院勧告も、初任給をはじめとした若手の給料を中心に上げることとしており、そうでもしなければ人材確保がおぼつかない状況がよく分かります。
ただ、公務員の給料を上げるのには限界があります。民間の給与水準に合わせることになっていることから、給料を売りにして、人材募集をするにも限界があるでしょう。
また、新採用職員募集の特設ページで公務員のやりがいを全面的に出している自治体が多いのですが、個人的には、これも効果的とは思えません。
やりがいは、その人の主観的なものであり、他の人にその仕事がやりがいある仕事だと感じてもらえるかは分かりません。「私の仕事はやりがいあるよ。」と言われても…という気はします。
私は、公務員の売りは安定性なのだから、安定性をもっと前面に出せばよいと思うのです。
なぜなら、人はなんだかんだ安定を求めていますし、人間関係、社会環境、仕事と、どれも大事な自分を成り立たせる要素のなかで、仕事だけは自分で安定させられるものだからです。
1 人間関係の不安定さ
人間関係は不安定の最たるものでしょう。血を分けた子どもや親ですら、本当のところは何を考えているのか分かりません。同じ方向を向いて歩めるような、仲睦まじいパートナーに恵まれたとしても、ぎくしゃくして気まずくなるときはあるでしょう。
人間関係において、一番安定するのは、誰にも縛られずに一人で生きていくことです。ただ、多くの人の心は孤独に耐えられるようにできていません。孤独は喫煙以上に、死亡リスクを高めるそうです。
“孤独・孤立”の死亡リスクが喫煙や肥満を上回る 宇都宮では健康被害防ぐ取り組みも | NHK
誰かとつながっている必要はあるけれども、不安定な状態に置かれやすいのも人間関係です。関係を継続できるかどうかは相手にも委ねられている部分があることがその理由の一つでしょう。
個人的にも、大学時代にはいくつもあった自分のコミュニティが半数以下に減りました。ライフステージが変わったから、相手の価値観が変わったから、様々な理由がありますが、個人の努力ではどうしようもなかったものです。
もちろん今ある人間関係は大事にしたいのですが、常に失われるリスクはあるのではないかと感じます。
2 環境の不安定さ
周辺環境は言わずもがな不安定です。
素人の私が言うまでもなく、経済環境は今まさに激動の状況です。欧米の数分の一である、わずか0.25への利上げによって数千円も株価が下がって、円も10円値上がりました。その後、また、急激にリバウンドし、結局数ヶ月前まで居たところに戻ってきている印象です。
そして自然環境も不安定な状況です。毎年のように台風が直撃し、大きな地震も頻発しています。最近だけでも、東北の大雨や宮崎沖の地震と激甚災害級のものだけでも数えられるほど思い浮かびます。
イスラエルやウクライナでの戦争も続いており、数年前と比較して、日本も軍事的なリスクは高まっている状態です。決して他人ごとではないでしょう。
こうした周辺環境のリスクは、万が一の時は生死に関わるにも関わらず、自分ではどうしようもありません。人間関係の不安定さよりもさらに、自分だけではコントロール不能です。
3 そうすると仕事くらいは安定さを
人間関係も不安定、周辺の環境も不安定となると、人間一つくらいは安定したいものを持っていたいのではないでしょうか。
仕事は自分で選べて自分でコントロールができます。そこで仕事くらいは、落ち着いたもの選んではどうかと思います。
もちろん仕事が大事ではないという訳ではありません。人間関係と周辺環境と並び立つくらい大事なものです。だからこそ、自分を成り立たせるくらい大事な要素だからこそ、仕事における安定さって、結構響くものはあるのではないでしょうか。
・真面目にやっていれば、そうそう首にはなりません。
・給料も、最初は少ないですが段々と上がっていきます。
・遠方への転勤もほぼなく、基礎自治体だったら徒歩圏内かもです。
・出世につかれたら希望降格制度もあります。
・年休や定時上がりも、まあとりやすい方だと思います。
個人的にも社会的にも不安定な世の中で、こうした仕事における安定さが刺さる人もいると思うのです。
先が見通せて、人生設計が立てやすい職業が良いという人も多いはずです。もっと身近なところで言えば、カレンダー通りに休みがもらえて、来週の予定が立てやすい職業が良いという人もいるでしょう。
リスクー将来の不確実性は人生を面白くします。それは間違いないと思います。人生の中の20代から60代までの大半をささげる仕事は、できればやりがいがあった方がいいですし、楽しく充実するものであった方が良いのは確かです。
ただ世の中、そう思える人だけでもないと思います。仕事くらいは安定していたい。公務員の募集にあたっては安定さをもっと前面に出していいと思います。
「そんなの知っているよ」と言われると思うのですが、個人的には、よくある公務員のやりがいよりも、「盤石の安定さの地方公務員」の方が印象には残るのではないかと感じます。
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