阿呆猫くろっちょん
第三回 くろっちょんのクレクレコール
そんな口卑しいくろっちょんでしたが、取柄もありました。
それは大きな声でかわいらしく鳴く事と、
喉を撫でられたら大きな音でグルグルと喉を鳴らす事。
愛らしく思えるんですよ。
この時だけは。
コレでくろっちょんの悪事を知らない人は、コロッと騙される。
この取柄のおかげで、ずっと飼う事になりました。
で、くろっちょんが一番鳴くのが、
エサを欲しい時のクレクレコールでした。
もっともハラが減ってる減ってないに関係がなく、
食べ物の気配を感じたら、「ニャー」とコールしてたのでした。
あわよくば何か貰おうと思って。
買い物のポリ袋をカサカサしただけでも、鳴いてました。
そこで自分とアニキは、くろっちょんにイタズラを。
寝ているくろっちょんの傍で、ポリ袋をカサカサ擦るんです。
くろっちょんは飛び起きて、「ニャー」とクレクレコールをするのでした。
食べ物なんて、ドコにもないのに。
その反応が、面白くて。
何もないのに気づいてくろちょんが寝たら、再びポリ袋をカサカサと。
くろっちょん、再び飛び起き、「ニャー」とクレクレコール。
同じ反応です。
どうやらくろっちょんの辞書には、
「学習」という言葉はなかったようです。
唯一鳴かなかったのは、
第一回に書いた婆さんがエサをやり過ぎた時だけでした。
大きな声で鳴くのは、名前を呼ばれた時もそうでした。
「クロ~!」
呼んだら即時に
「ニャー」
と返事をします。
愛想が良いといえば愛想が良いのですが、疑問に思ったんですよ。
「エサが欲しくて返事をしてるだけじゃないか?」って。
そこで実験。
「タマ~!」
そう呼んでみました。
賢い猫なら自分の名前じゃないので、返事をしないはずです。
さてさて、くろっちょんは反応はどうだったかと言いますと、
「ニャー」
と元気よく返事をしたのでした。
そこで第二弾。
今度は
「ポチ~!」
と呼んでみました。
そしたら案の定、くろっちょんは
「ニャー」
とお返事。
なんか面白くなって、今度は
「アホ~!」
と呼んでみました。
くろっちょんの反応は予想通り、
「ニャー」
でした。
それ以来、くろっちょんは「アホくろ」とも呼ばれるようになりました。
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