
阿呆猫くろっちょん
第一回 くろっちょんがやって来たヤア!ヤア!ヤア!
むか~し、ネコを飼ってました。
名前はクロ。
みんな「くろっちょん」と呼んでましたが。
くろっちょんは、叔母が我が家に持ってきた猫。
道端にいたのを保護したものの、先住猫と折り合いが悪く、
飼ってくれないかと連れてこられたのでした。
ハチワレのかわいらしい顔つきの猫。
ハチワレなのにクロなのは、そういう雰囲気の顔をしてたからです。
ただ野良上がりのせいか、ちょっと口卑しい点が。
まぁ飼ってちゃんとエサを与えたら、治るだろう、との事でした。
死ぬまで治りませんでしたけど。
兎に角くろっちょん、エサをやったら全部平らげてしまってました。
普通は猫って、おなかがいっぱいになったらエサを残しますよね。
くろっちょんは決してエサを残しませんでした。
「宵越しの銭は持たない」が信条の、江戸っ子かよ。
ある日婆さんがエサをやる事になりました。
普段はやってないので、エサの量がわかりません。
「おなかが一杯になったら、残すだろう」
婆さんはそう思い、エサのかつぶしご飯をやりました。
その量、どん兵衛のカップ一杯分。
正直、人間でも十分な量。
なぜ婆さんがこの量をやったのかは、本人が亡くなった今は不明です。
流石のくろっちょんも、この量はのこ………さなかったのです!
ぜ~んぶ平らげました。
さすが江戸っ子くろっちょん。
あまりに多量なので、おなかはパンパン。
なんだか苦しそうでした。
いつもは反応するレジ袋の音にも、この時だけは反応しませんでした。
ただ食べ過ぎただけだったので、時間が経てば治りましたけど。
あれほど食べる猫、他に見た事はありません。
これからも見る事はないでしょうね。