同じ窓 君と見ていた 夕日色
同窓会の帰り道、
君は僕の手をとって、
あの頃、いつもの場所に、行こうと言った。
僕は、動揺を隠しながら、少し照れながら、
君に惹かれるままについていく。
あの頃、毎日のように見た夕日は、
今日も変わらずそこにあって、
当時、付き合っていた頃には、
単なる日常だった海に沈んでいく夕日も、
今となっては、幻想にすら思えてくる。
本当にそこにあったはずなのに、
僕の心も体も、確かに覚えているはずなのに。
夕日に照らされる君は、あの頃と変わらない可憐さで、
でも、少し、大人びている。
夕日に照らされる君は、綺麗でいてどこか儚げで、
今この瞬間がきっと幻想なんだと思わされる。
夕日に照らされる僕は、鼓動の高鳴りと懐かしさと恥ずかしさを抱えながら、少し頬を赤らめているに違いない。夕日でよかった。君に見られると恥ずかしいから。
僕たちは色んな話をした。
毎日見ていた景色を見ながら、懐かしい思い出話や、
仕事や結婚、未来について。
あの頃は、ずっと続く気がしていた日常を、
心のどこかに抱えながら、
今は、別々の今と未来を生きていく。
でも、この瞬間だけは、あの頃と今の、時間と気持ちが交錯するように、君は僕を幻想の世界へ誘っていく。
この時間がずっと続きますように。
なんて願いを年甲斐もなく願ってしまうほどに。
この幻想に身を委ねていたいと思う。
もう戻らない、あの頃と、
変わっていった、君と僕、
今このいつもの場所で、
溶け合って、重なり合って、織り混ざって
毎日のように見た夕日は、今この瞬間だけの
特別な景色に変わったんだ。