#256 不動産売主の心理
弊社では、不動産の売却を検討している売主が物件を登録して、多数の不動産会社に査定依頼をすることができるサービスを展開しています。
一括査定サイトのように、6社まで、ではなく多ければ100社以上に一斉に。
要は、6社までしか頼めない一括査定サイトでは、本当に高く買い取ってくれるor高く売却をしてくれる会社と巡り合うことができていないということが実はあまり知られていません。
売主にとっては高く、そして早く売却をできれば望ましいわけですが、それが実現できるまでに売主の心理には様々な要因が働きます。
例えば仲介。
過去にも書いたことがありますが、仲介の査定とは「その金額で売れるかもしれませんよ」という希望的観測の金額です。
もちろん、周辺相場や成約事例に基づいて金額を算出しているため根拠のある金額ではありますが、買主が現れるまではそれが正解かどうかがわからない状態の金額となっています。
しかし、業界事情をあまり知ることができない売主からすると、「高く査定をしてくれた不動産会社に頼みたい」と心理が働きます。
そりゃそうですよね。
「ウチってこんなに高く売れるんだ!」と高く査定してくれた不動産会社を評価するわけですから。
それが相場4,000万円の査定に対して6,000万円の提示を受けるような乖離した金額であっても。
業界事情を知っている方からすれば、この売主が辿らされる道は、媒介を締結してしまい、囲いこまれ、「売れないですねー」の状態が半年くらい続き、結局相場に近い金額で買取業者をつけられるというオチが見えることでしょう。
蓋を開ければ、「相場通りに査定をしてくれた会社の方が高く売却できたかもしれない」という結果になるわけです。
それが「売主の後悔」となって積み上がっているわけですが、もしこの話を事前に聞いていた人が売主当時者となった場合でも、きっと同じ選択をしてしまうのだろう、と僕は考えてしまいます。
このように、失敗談のクリティカル記事を書いたりしていますが、中々理解されないのが、今の不動産売却の現状です。
その根底にあるものは何か。
・高く査定をしてくれたのだからその金額で売れるという思い込み
・とりあえず高く査定をして媒介をとってしまえばこっちのものという売主の売却実現に深く寄与しない不動産会社の姿勢
・実勢価格では300万円前後が相場であるが、固定資産税評価額が500万円だったから500万以上じゃないと売りたくないという頑なな売却希望
などなど、たくさんあると思います。
売主のために高く早く売却できて、不動産会社にとってみればちゃんと買取or媒介の締結ができて、というWIN-WINな関係を築き上げることが今の不動産業界にとってはまだまだ難しい話なのかとも考えることもあります。
高額な取引の為、どこかで譲れない私欲が出てくることもしばしば、全てを透明化して取引をすること自体が難しいのかもしれません。
不動産テックのスタートアップが参入障壁が高いと言われる部分をクリアして、業界を透明化できることができれば、売主の第一想起を獲得することもできるでしょう。
「どうして売主は他社の高い査定の方を選んだんだろう、売れると確定したわけじゃないんだから、ウチの会社にも話聞いてみればいいのに」と売主の心理に対して常に疑問を持つようにしています。
この心理に対して、クリティカルな解決策を提示できる日まで、ひたむきにチャレンジしていきたいと思います。
今日もそんな出来事があったので、整理する意味でこのnoteを書いてみました。
まもなく9月も終わります。