子供の「運動神経」がいいのは、「フィジカルリテラシー」が高いということ。
こんにちは。Dice Trainingです。
岩手県でトレーニング指導を生業にしてます。
アメリカ留学中にNSCA CSCSを取得。
留学中のインターンシップも含めると、
トレーニング指導に携わって20年以上になります。
さて、僕は小学生の
子供を持つ父でもあります。
たまにですが、子供達と
スポーツ/運動することもあります。
そして、なぜか、今年は児童に対する
トレーニング指導をする機会が多い。。。
指導対象が変わると
当然、指導内容が変わります。
特に対象が低年齢層の場合、
僕個人、意識しているのが、
「フィジカルリテラシーの概念」
です。
※今回の記事は、
「アスリート育成と学校体育における
フィジカル・リテラシーの役割と重要性
〜カナダの事例と日本での応用可能性〜」
2018年 スポーツ産業学研究
Vol.28 No.2 P141〜148
早乙女誉、S.Nicole CULOS -REED 共著
を参考にしています。
フィジカルリテラシーとは?
フィジカルリテラシーを直訳すると、
「身体の巧緻性」
です。
もっとシンプルな表現をすると、
・身体の器用さ
・コオーディネーション能力の良さ
ですね。
”いかに自分の身体を
思い通りに動かすことができるか。”
ジュニア世代(幼児〜児童)の場合、
特別なスポーツスキルを伸ばすよりも、
基本的な身体能力向上に重点を置いた方が、
将来的なパフォーマンス向上につながります。
フィジカルリテラシーの歴史を少しだけ。
幼少期の身体活動などに
関する研究などは昔からあります。
その中で”フィジカルリテラシー”
という概念が1993年に提唱されます。
そして、2001年にカナダの
イシュントバン・バリー博士が
”長期競技者育成理論”を発表したことで
世界的に普及していきました。
特にカナダでは、2004 年に
連邦・州・準州スポーツ担当大臣会議にて
「Canadian Sport for Life:CS4L)」
というコンセプトが承認され、
民族遺産省スポーツ局の
特別施策として位置付けられています。
つまり、バリー博士の母国:カナダでは、
「フィジカルリテラシー」が、
・自治体教育省レベルの保健・体育カリキュラム
・アスリート育成長期育成システム
などの基礎部分に置かれています。
また、2007年には、イギリスの
マーガレット・ホワイトヘッド博士が、
「フィジカルリテラシーとは、
生活の質(QOL)の向上に
大きく寄与する各人の運動潜在能力を
十分に生かす能力及び意欲のことである。」
と定義を更新。
これにより、今では、
幼少期の身体能力向上や
スポーツ競技力向上だけでなく、
生涯における身体活動・スポーツ活動の
普及に寄与しています。
海外では体育教育でも実践
海外では中長期的なアスリートの
競技力向上は当たり前。
ジュニア期からの育成ピラミッドは確立されています。
ヨーロッパのサッカーリーグはいい例ですよね。
各世代ごとのカテゴリーで、
いろいろなプログラムが実践されてます。
ドイツにコオーディネーショントレーニングの
勉強のために行った際に、
プロチームのU-13カテゴリーのトレーニングを見学しました。
サッカーのスキル以外で、ごく普通に
コオーディネーション能力を高めるような
プログラムを組み込んでいる。
他にもドイツの事例を。
ドイツはいわゆる学校の部活動はなく、
代わりに、総合型地域スポーツクラブが発展。
スポーツをしたい児童・生徒は
誰でも自由にアクセスできます。
これは就学児童に限らず、
幼児から高齢者まで、
さまざまな身体レベルに応じて、
スポーツ・運動ができる環境が整備されています。
学校体育においても、
コオーディネーショントレーニングが
授業に導入されています。
体育教師の方たちの講習風景などを
見せていただきました。
基本的動作スキルの獲得を通じて、
運動有能感や自信、動機づけにつながる。
よりスポーツ活動を楽しむことができるようになります。
幼少期に活動的な生活を送る方が、
成人以降も活動的な生活を送る可能性が高い。
活動的な生活を送っている人の方が、
肥満や生活習慣病の発症率が低い。
生活の質の向上には欠かせない健康。
幼少期からの運動習慣で
大きく変わる可能性があるのは事実です。
日本だと、どうだろう。。。
日本の競技団体でも、ジュニア期に
フィジカルリテラシーを向上することはトレンド。
サッカーやラグビー、バスケットボールなど、
それぞれの競技で海外の事例を参考に、
アスリート育成プログラムを実施しています。
しかし、日本では同世代の子供を
対象としているのに、
”学校体育”と”各競技スポーツ”を
全く別のものとして考える傾向が強い。
”生涯スポーツの普及”と”アスリート育成”は別もの。
こんな認識ではないでしょうか。
本人の意思のもと、
レベルが分かれるのはO.K.
・レクレーションとしてのスポーツ活動。
・競技としてのスポーツ活動。
取り組み方はさまざまです。
レベルはそれぞれかもしれないが、
各個人がスポーツを楽しむ環境が、
絶対的に不足している印象はあります。
未就学児〜就学児童(小学生)くらいまでは、
全ての子供たちが楽しく運動できる機会は
どんどん増やしてほしい。
一昔前は、”近隣の子供たちと
勝手に外遊び”が普通でしたが、
今は、あまりそういう環境がないですからね。。。
なので、体格は良くなっているけど、
いくつかの身体能力(例:投げる)は、
昔よりも平均が落ちています。
(スポーツ庁が実施している、
新体力テストの統計から)
いろいろな統計データで見えている変化。
でも、それを基にして、
子供たちの身体活動能力向上に
活用されている印象はあまりない。。。
そこには
・ハード面(運動する施設・場所)
・ソフト面(指導者)
・それにかかる予算
など、整備することは多くある。
現場レベル、自治体レベルで
頑張ってる人は多くいると思います。
ただ、やはり日本全体的にみて、
また、僕の周辺を見た場合、
海外とは違うな。。。。
と感じてしまいます。
まとめ
多くの人が、
”より活動的な方が健康につながる”
ということは認識している。
ジュニア世代からの
アプローチも勉強している。
ただ、実践するのが難しい。
クリアしなくてはいけない
ハードルは多々あります。
地道に現場レベルで
できる活動は続けていきたい。
子供たちの”体の器用さ”が高まるように。
せっかくドイツで学んだ
コオーディネーショントレーニング。
これを活用しない手はないですしね。
概念としては通じる部分、
共通項が多いです。
コオーディネーン能力が良くなる。
=体を自在に操れるようになってくる。
=基本動作の習得につながる。
=スポーツ活動が楽しくなる。
=活動的な生活スタイル
=生活の質の向上
スポーツ/運動を通じて、
生涯にわたって”生活を楽しみたい”ですよね。