「感情的にわめく相手」をスパッと黙らせるすごい一言
>>前編「『社交的で明るい人』と『内向的で静かな人』の人生の歩みの大差」はコチラ
「戦略書」の雰囲気を生かしたデザイン
―― 黒く縁どられたモノクロのカバーは、すごく斬新で、「静かな人」のコンセプトにもぴったりに感じました。このデザインは、かなり早期にまとまったのですか?
三浦岳さん(以下、三浦) デザイン事務所tobufune(とぶふね)さんのアイデアです。
私としては、「静かな感じで戦略書っぽい、という感じにしたい」くらいのすごくぼんやりしたご相談をした程度で、そこから一発で出してくれました。
ほかにも同時に面白いアイデアをいろいろとご提案くださったのですが、この案は、「引いた感じがかえって目立つ」というのが、静かな人的な逆張りの戦略らしくて面白いかと思いました。
―― たしかに! ただ、暗めの縁取りがあるデザインは、店頭で本が小さく見えるとか、コピーのスペースが小さくなるなどで、一般的には嫌がる編集者が多い印象です。
三浦 そうですね。私はふだん帯にすごく宣伝コピーを詰め込むので、このデザインだと、帯の文字を置けるスペースが文庫本より狭い、という点がネックでした。
まあでも、コピーをたくさん詰め込むほどいいのかというと、そうとも限らないかもしれないと思いました。今回は「静かな人」だと言っているわけだし、うるさくごちゃごちゃ入れないで、デザイン優先でやってみようということで、この案を採用させていただきました。結果、各所で評判が非常によく、大正解でした。
「感情的に怒鳴ってくる相手」にとっさにどう対応するか?
―― 本書はストーリーがありつつ、行動や思考の具体的なアドバイスに満ちています。これから読む方におススメしたい、または反響が大きかった章や項目はどこですか?
三浦 「『他人の感情』にいちいち振り回されない」という章があるのですが、ここをぜひ読んでみてほしいです。
この章に、仕事でトラブルがあって、著者が呼ばれて会議室に行くと、中にいた相手がものすごい剣幕でガーッと言ってくるという場面があるんです。
これがあまりに唐突で、著者はぴたっと思考停止してしまいます。
「無意識に脳の防御機制が働いたかのようだった」
「私はただ突っ立って、耳を傾けるしかなかった」
と書かれていて、たしかに自分もそうなりそうだと共感しました。
本書でも書かれているのですが、内向型は「脳が即座の反応に向いていない」そうです。外向型の人みたいに当意即妙なリアクションができない。しかも内向型は「他人の感情を強く感じ取ってしまう」人が多くて、「外部からの刺激に敏感」という特徴もある。
つまり、もともとその場その場でぱっぱっとリアクションできないのに加えて、相手のたかぶった感情を敏感に察知しやすく、大きな声や強い言葉にはドキッとなってしまうという内向型にとって、これは最悪のシチュエーションなわけです。
―― 自分もフリーズしてしまいそう……。
全部聞いてから、一言で冷静に整理する
三浦 この状況に著者はどう対応したのか。
詳細は、面白いのでぜひ本で読んでいただきたいのですが、簡単に言うと、相手がすべてを言い切るまで黙って聞いて、いったん落ち着いたところで、そばにもう一人いた関係者に「それで、いまいったいどういう状況なんですか?」と冷静に確認した、ということでした。
つまり、感情的なやりとりの土俵に乗らないで、落ち着くところまで待ってから、冷静に整理をして仕切り直した。
ここを読んで、たしかにこれしか解決策はないし、これをクールにできるように訓練していくのが「静かな人」の道なのかな、と思いました。
―― 静かな人なりの道がある、っていいですね。
「自己肯定感」が変わる
三浦 私もそうですが、「話し下手」だったり、「社交下手」だったり、「プレゼン下手」だったりで、日々凹んだりグッタリしている内向型の人は多いかと思います。『「静かな人」の戦略書』は、そういった内向型の特徴のアザーサイド、つまりプラス面とその活用法をさまざまに教えてくれます。
「『優柔不断』は裏を返せば『思慮深い』ということだし、『心配性』はリスクマネジメントにおいては有用な資質だ」と著者は言います。
読んでいると、自分も結構いけてるのではないか、と自己肯定感が上がって、今度はこの感じでやってみようかなと楽しみになってくるほどです。
―― 三浦さんは、自分の持ち味を熟知されている印象で、話すのがうまくいかなくて凹んだりグッタリする、というのは意外です。
三浦 いえ、日々凹んでいるんです(笑)。でも本書を読んでいて、たとえばプレゼンについてのアドバイスなどは個人的にとても背中を押されました。
それは、外向型みたいにその場で流れるように面白い話をすることをあきらめろ、というものです。しかし、むしろ内向型らしく完璧に準備していき、その成果を当日出せば、その質は外向型の当意即妙のパフォーマンスの上を行く、と。
プレゼンに限らず、アドリブをあきらめて準備に全振りするというアプローチにこそ、自分の強みはあるのかもしれないな、と吹っ切れるような思いがしました。
【今回の話題書】
「静かな人」の戦略書
ジル・チャン 著/神崎朗子 訳
『「静かな人」の戦略書』では「静かな人」が持つ数々の長所と、それを十分に生かすさまざまな戦略を紹介しています。ぜひ参考にしてください。
【大好評:『「静かな人」の戦略書』著者、ジル・チャン氏インタビュー】
第1回「無口でも評価される人」と「軽んじられる人」の1つの違い
第2回「ストレスに強い人」「弱い人」考え方の1つの違い
第3回【雑談がラクになる】「ちょっとした会話」に使える話題ベスト3
第4回 うるさい「高圧的な人」を一発で黙らせるシンプルな一言
第5回「謙虚でも自然に評価される人」がしている1つのこと
『「静かな人」の戦略書』とは?
本書は台湾出身、極端な内向型でありながら外向型社会アメリカで成功を収めた著者が書いた、「静かな人の潜在能力」を最大限に引き出すための戦略書だ。
ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスク、ウォーレン・バフェットなど、ケタ外れの成功をしているビジネスパーソンの多くが内向型であるように、静かな人は、底知れぬポテンシャルを秘めている。
騒がしい言葉で埋め尽くされている世の中で、さまざまな場面で穏やかに人々を支えている「静かな人」たちが、その能力をいかんなく発揮するための秘密が詰まった本書、必読である。
本書目次より
日本語版への序文── 控えめで強力な「静かな力」
INTRODUCTION:鎧を脱いで身軽になる
■PART 1 静かな人の「仕事」の戦略
── 冷静沈着に「戦略的思考」を生かす
CHAPTER 1「はったり」はいらない
CHAPTER 2 戦略的に「得意なこと」で勝負する
CHAPTER 3「核心」の能力を集中的に磨き上げる
CHAPTER 4 独特の「脳の特徴」を武器にする
CHAPTER 5 自分を「現実的」に見つめ、受け入れる
CHAPTER 6 ストレスフリーで「新しい環境」になじむ
■PART 2 静かな人の「人間関係」術
── 「深く聞く力」で人を魅了する
CHAPTER 7 仕事の戦場で「味方」を増やす
CHAPTER 8 落ち着いて「もめごと」をさばく
CHAPTER 9 「他人の感情」にいちいち振り回されない
CHAPTER 10「電話」は難敵にも強い味方にもなる
CHAPTER 11「交渉」を成功させるカギは聞く力
CHAPTER 12「出張」で力の浪費を最小限に抑える
CHAPTER 13 外向型文化の中で「バックハンド」で戦う
■PART 3 冷静な力を「人前」で生かす
── 完璧な準備で「質の高い」仕事をする
CHAPTER 14 長所を生かせば「イベント」は楽勝である
CHAPTER 15 そもそも、本当に行く必要があるのか?
CHAPTER 16 勝敗は「始まる前」に決している
CHAPTER 17 社交は「戦略」がすべて
CHAPTER 18 人前で話す極意
CHAPTER 19 会議で「隠れる」ことはできない
CHAPTER 20 静かな人は「SNS」を使い倒すべし
■PART 4 静かな人の「潜在能力」
── しなやかな「リーダーシップ」を発揮する
CHAPTER 21「謙虚さ」こそが成功をもたらす
CHAPTER 22 タイプを混ぜれば「最強チーム」ができる
CHAPTER 23 あえて「正反対」の相手とタッグを組む
CHAPTER 24 上司を「管理」して、正当な評価を得る
CHAPTER 25 リーダーに「カリスマ」はいらない
CHAPTER 26 「静かな羊」がライオンを導く
※この記事は、ダイヤモンド書籍オンライン(2022年11月4日)にて公開された記事の転載です。