1月9日 企業としての個の確立
#ドラッカー365の金言 より
企業としての個の確立?
またまた意味がわからない言葉だ。原文をあたってみよう。
すると、The New Corporation’s Persona が題名だ。
「新しい企業ペルソナ」?
ペルソナってなんでしょう?
ペルソナとは、自己の外的側面。例えば、周囲に適応するあまり硬い仮面を被ってしまう場合、あるいは逆に仮面を被らないことにより自身や周囲を苦しめる場合などがあるが、これがペルソナである。逆に内界に対する側面は男性的側面をアニマ、女性的側面をアニムスと名付けた。
ペルソナには、仮面・役柄の意。「人格」、「キリスト教で、三位一体論に用いられる概念。本質において唯一の神が父と子と聖霊という三つの存在様式をもつことを意味する。位格。位。格身。」、「心理学で、外界へ適応するために必要な、社会的・表面的人格」という意味もある。
なるほど。個人で言えば、外面(そとづら)から伝わる人格ってことなのかな?
その企業版ということならば、企業ペルソナとは、企業が自分自身を表現していると考えている「自社イメージを人格化したもの」のことなんだろうと思います。
同じ業界の企業でもそれぞれ会社ごとのカラーが違いますね。例えば、同じ総合商社でもカラーというかイメージが違うのを感じます。伊藤忠は積極的でマッチョなイメージ。三井物産は公家さんぽくて上品。三菱商事はいかにも典型的なできる文系サラリーマン的、みたいなイメージが企業(コーポレート)ブランドとして社会に浸透しているんでしょう(イメージはあくまで後藤個人ものですよ笑)。
第2パラグラフの文にこうある。
組織としての個の確立には価値観が必要となる。ネクスト・ソサエティにおけるトップマネジメントの最大の仕事が、組織としての個の確立である。
とある。原文は、
Establishing a new corporate persona calls for a change in the corporation’s values. And that may well be the most important task for top management.
Deepl訳によれば
新しい企業ペルソナを確立することは会社の価値観の変更を要求する。そして、それはトップマネジメントにとって最も重要な課題かもしれません。
新しい企業ペルソナ≒コーポレート・ブランド、と考えると、確かに、これまでのブランドイメージを捨てて新しい企業ブランドを確立するには、企業ロゴマークや色を変えるといった外面を変えるだけではダメで、企業の価値観を本質的に変えざるを得ません。ここはトップマネジメントが関与すべき分野に他なりません。
となると、ドラッカー博士は今日は企業ブランド変更にはトップ・マネジメントの関与が欠かせない。これ以上に重要な仕事はトップ・マネジメントには無いんだ、とブランド論を語っているのか?
そして、最後の文章に続く。
第二次大戦後の半世紀間、企業はその経済的側面、すなわち富と雇用の創出において成功を収めてきた。しかし、ネクスト・ソサエティにおける企業の最大の課題は、社会的な正当性の確立、すなわち価値、使命、ビジョンの確立である。他の機能は全てアウトソーシングできる。
これも意味が分かりにくいので、原文と原文訳にあたってみますと
In the half century after the Second World War, the business corporation has brilliantly proven itself as an economic organization, as a creator of wealth and jobs. In the Next Society, the biggest challenge for the large company and especially for the multinational may be its social legitimacy – its values, its mission, its vision. Everything else can be outsourced. (戦後半世紀を経て、企業は経済組織として、富と雇用の創造者として、その存在を見事に証明してきました。次の社会では、大企業、特に多国籍企業にとって最大の課題は、その価値観、使命、ビジョンなどの社会的正統性にあるかもしれない。それ以外のことはすべてアウトソースすることができます。)(DeepL訳より)
これらを踏まえた上で、今一度考えてみますと、ここで、ドラッカー博士が記していることは「企業ブランドかくあるべき」というブランド論ではありません。
戦後の企業、特に、大企業は富と雇用の創出という価値観(=株主至上主義、金儲け第一主義)で成功し存在感を表してきた。それは、「民間企業=金儲け主義」というペルソナ(企業の顔)でOKだった時代だったからこそ。
しかし、ネクスト・ソサエティ(次世代の社会)では、もはや金儲け主義という価値観ではNG。これからは、社会正当性重視、理念・ビジョンを元に社会性に配慮した経営、という価値観へと変更することが最大の経営課題となる。だからこそ、トップマネジメント層の経営者は、この価値観変更以外の経営課題は全てアウトソーシングしても良いから、企業=社会をより良くする有益な存在である、という人格を備えよ、というドラッカー博士の提言に思います。
そして、この意見が記された著書「ネクスト・ソサエティ」が発表された2002年から17年後の2019年8月。
米最大の経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、株主第一主義からステークホルダー主義へと転換しました。
ドラッカー博士の提言がここで実現したのでした。恐るべし。
私たちは、企業戦略の上流階層に、来るべき社会への考察があり、その社会に対して、企業が達成したいこと=理念、経営ビジョンがあり、そのビジョンを実現する方向へと戦略を進めていくという階層で物事は進んでいっていることをNOTEマガジン「アフターコロナ時代のマーケと経営」で学んでいます。
コロナ禍による減収、財務危機、という目の前の出来事に対処することは大切であるが、もう1つ上の階層から俯瞰して、現状を眺めてみると、違った景色が見えることもある。そこから、自社を進める方向性をみればいい。
例えば、あなたが、「自分はこの疫病では、財力も資本力もなく、負け組、と言われる立場かもしれない」と卑下することなど何もない。
むしろ、地に足がついて、負けを経験している人だからこそ、将来の進むべき社会の方向性が見える、トップとしてふさわしい( by 冨山和彦さん)、ということもあるわけだ。
今日もやっていきましょう!そして、こちらのマガジンも購読した方が、メリット大きいかもよ。
#価値使命ビジョンだけを考え他のものは全てアウトソーシングするべく検討してください
追伸 もし自分がこのページのテーマをつけるとしたら、「新しい時代に相応しい企業の存在意義」かな。
そして、1月1日の “Integrety of character”(人間性・人格・誠実)と本日の“corporation’s persona”(企業の“顔“・人格)とが関係しているんだろうな、そんな気がしました。