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明日の食い扶持はどっちだ? 1月21日 Profit’s Function 利益の機能

21日火曜日です。今日の #ドラッカー #365の金言 テキストは、1983年「フォーブス」誌掲載の記事「 #シュンペーターとケインズ 」より。1994年発行『 #すでに起こった未来 』の72ページに収められています。

利益の機能

今日の収益性のあるビジネスは、明日の白象(役立たず)になる。


ジョセフ・シュンペーター(シュムペーター)は、「イノベーションが経済の本質であり、特に現代経済の本質である」と主張しました。シュンペーターの経済発展理論では、利益は経済的機能を果たしています。変化とイノベーションの経済において、利益はカール・マルクスの理論とは対照的に、労働者から盗まれた「剰余価値」ではありません。逆に、それは労働者の雇用と労働収入の唯一の源です。経済発展の理論は、イノベーター以外には真の「利益」を得る者がいないことを示し、そしてイノベーターの利益は常に短命であることを示しています。 しかし、シュンペーターの有名なフレーズによれば、イノベーションはまた「創造的破壊」でもあります。それは昨日の資本設備と資本投資を時代遅れにします。経済が進歩するほど、より多くの資本形成が必要となります。したがって、古典派経済学者や会計士、または証券取引所が「利益」と考えるものは、実際には真の費用であり、ビジネスを続けるための費用、今日の収益性のあるビジネスが明日の役立たずになる未来に対する費用です。

アクションポイント: あなたの収益性のあるビジネスが陳腐化する日を備えるため、十分なイノベーション投資が行われているかを確認してください。

AI訳による

ドラッカーは、利益とは何かについて、こう記しています。

それは、労働者から盗まれた「剰余価値」ではありません。逆に、それは労働者の雇用と労働収入の唯一の源です。またイノベーションによって既存資本は時代遅れとなり陳腐化され、損金計上されるため、利益はビジネス存続と成長のための再投資の原資と考えるべきだ。

たとえ今、儲かって利益が出ていても、将来は役立たずとなる。だから、イノベーション投資し続けなくてはならないということでしょう。

例えば、IBM。

90年代、企業の基幹システムは、IBMらの大型コンピュータで動かしていましたね。そのIBMも現在ではメインフレームなど、ハードウェアを売っていた時代から大きく変化し、クラウド上でシステムを構築し、サービスやコンサルティングとして稼ぐ時代にシフトしました。

2010年以降の売上高はグラフを見る限り、好調とは思えません。特に、ここ2年はクラウドサービスをキンドリル社に分社化したせいか、半減のままです。

https://www.macrotrends.net/stocks/charts/IBM/ibm/revenue より

では、2019年に分社化したクラウドサービスのキンドリル社が好調か、というと、そうとも言えません。

https://www.macrotrends.net/stocks/charts/KD/kyndryl-holdings/revenue より

2019年度に比べ、2024年は4,000百万米ドルもダウンしていて、AWS(Amazon)との厳しい競争にさらされ、こちらも苦戦が伺えます。

もちろん、IBM社も変化の激しいIT業界で、いったんは覇者として君臨した時代があり、イノベーション投資もおこなってきたに違いありません。
にもかかわらず、97年をピークに30年後の現時点では、新興勢力のAWS(Amazon)に後塵を配してしまっているのは、どうしたことか。
栄枯盛衰を感じざるを得ません。
2015年に発刊された『倒れゆく巨像』はそのヒントなのでしょう。

本書のレビュー欄の1つは痛烈だ。

十年前にIBM社員だった自分にとって、このような兆候は十数年前から感じていた。

当時既にフィールド(顧客担当部門。要は現場)の効率化が米本社の至上命題で、まるでフォードの大量生産方式に範を取ったかのような労働単純化、分業化を営業部門にも適用しようという強引な「改革」が進められていたように思う。

確かにそれは「経営に最新ITを活用」した「先進性」として株式市場に受けがよかったし、MBAのケーススタディにも多くの教材を提供しそうな「理論」だったけど、現場経験のない連中が机上で考えたのは明らかだった。

しかし米国の経営者にとってヘンリー・フォードは永遠の憧れで琴線に触れるワードだし、金を産む営業部門はどこの経営者も手を突っ込みにくくコストがかかり、文句も多い部門。(文句の何割かは顧客の声なのだが。) ここを低コスト化・従順化するIT活用事例をアピールすればノウハウ自体が強力な商品になるので、株式市場に向けての「改革」メッセージなのと同時に自らを実験台にした事例化だったのだろう。

その結果として現場で頼れる人々はどんどん関係のない部門に行かされたり辞めてしまい、代わりに即席の教育を受けた製品営業はかりが溢れて現場のノウハウはどんどん失われていったのに、これからは買収したPWCCのコンサルタントが万物の賢者として顧客をリードしますので提案能力はむしろ劇的に高まります、と上層部はな~んの危機感も持っていないようだった。

でも実際は職業コンサルタントはそもそも、自らを高く売るためのノウハウ、特に会計やHR分野に特化した職種なので、顧客の今直面している課題を現実に即して解決するというソリューション提案能力は皆無に等しく、「改革」はあきらかに現場を急速に弱体化させるものでしかなかった。

フィールドはそれでも優秀な方々が多かったから何とか数字を維持していたけど、実態は極端なディスカウントで買い替えを促して利益を先食いするような案件ばかりが増え、いずれ破綻するのは目に見えていた。(多くの人は破綻する前に転職したけど、日本特有の特約店とのあ・うんの関係を悪用した不正取引のようなモラルハザードが続発したのもこの頃。)

実はそういった現場軽視は元々ガースナーの時代に始まったものであり、「顧客IT部門を買い取ってIT経費を丸ごと自社の売上げに変える」という一時的な大成功が「顧客の現場を飛び越えたトップセールスのみが巨額の利益を生む」という過信を生み、顧客に支持される事ではなくウォール街と経営学者に支持される経営的大技で株価を上げ、顧客の経営者にリスペクトされる企業であり続ける事でトップセールスを容易にする、といった錬金術に嵌り、その度に現場の体力とお客様の信頼はダメージを受け続けたと思う。パルミサーノはその点忠実な後継者に過ぎなかったのではないか?

その後理論上の「大量生産方式」はシステム開発の分野にも及び、チャート上だけに存在するような「ソリューション・コア」「サービスプロダクト」をグローバルなスキルセットを使ってレゴブロックのように容易に組み立てます、という机上のプランと組織改編が強引に進められ、この本で書かれているオフショア開発の問題や国内の某訴訟沙汰に結びついていると思うが、それ以降は自分の転職後なので詳しくは判らない。

そういった状況が15年以上も続いてるんだから長年良い関係だったカストマーに三下り半を突き付けられたり、こういう外部の評論が出て来るのも当然。むしろ業態の似た企業との激しい競合に晒されている日本で顕在化するのが早かっただけで、表面上の業績操作に隠れて米本社で激しく進んでいたんだろう。この本に書いてあることはいちいち自分の体験と共通していて頷ける話だったからね。

経営者の株主利益のための努力を否定するのは資本主義の否定なので、事業や人員の整理もその観点での非難はすべきではないが、現在のこの会社のそれはちょっと異質で、顧客サービスの極端な低下を招いてまでやる必要は全くないものを経営的スタンドプレーとして連発し、一方企業の本来の競争力を上げるための経営ビジョンは極めて稚拙なものでしかないと感じる。

普通はすぐにボロが出るような底の浅いスタンドプレーでもIBMのような規模だと業績との因果関係が目に見えてくるまで時間がかかり、また経営学者にIT戦略の真贋判定が出来ないことも目一杯利用しているわけだ。つまり将来の信用を食い潰しながら今の株価を上げることに邁進していることになる。

今後IBMが復活するとすれば、経営陣に巣食う安直な「ハッタリIT経営学」志向を一掃して徹底した顧客志向(肉秤から汎用機と本業を変えてもIBMはこの点だけは変えていなかった)に戻すことしかないと思うが、そのためにはジョブズのような「その企業の根幹をなす遺伝子」を持った強力な指導者が必要で、なかなか望めるものじゃない。

既に顧客の信頼が大きく損なわれているのと、本来改革の原動力になるはずの株主の力が今回は迷走の原因になっている事からすると、困難な道のりになると思う。主だったH/W、S/W、サービス部門を切り売りしながら何をやっているのか良く判らない企業になっていく可能性のほうが遥かに高い。(米国企業にはそういう事例も実に多い。)

https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R15SNH2S97OJG2/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4396650523 より

2年前には、利益第一主義へのアンチテーゼ的に伊那食品工業の言葉を引用させてもらった。

しかし、そうも言ってはいられない。
すでに多くの経営陣の中には、「イノベーション投資を怠れば、次世代での食い扶持を失ってしまう」と危機感で溢れている。ましてや人口減少時代なのだから、国内市場を主に活動している企業は年々市場が縮小するのを、肌で感じざるを得ない。

今日のテーマ:
#Profits_Function
#利益の機能

今日の金言:
#今日利益を上げている事業が明日は金食い虫になる

今日のACTION POINT :
#今日の事業が陳腐化する明日のためにイノベーションのための投資を今日してください

高齢を理由に廃業・転業する中小企業も少なくない。
明日の食い扶持はどっちだ?

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