根本(本質)を磨き直す
“およそ商いを業とするものは短期の利益を求めるに汲々として、善を積んで長期に発展しようと考えない。災害が襲来すれば、いたずらに天を恨み、人を非難するばかりである。これでは到底滅亡を逃れることはできない“。(二宮尊徳の高弟、富田高慶「報徳記」より)
さる11月17日は二宮尊徳先生の命日でした。平時において困難な時期を想像しておけ、という助言は、時代を超えてコロナ禍の私たちに刺さりますね。
確かに、平時においては緊急時を想定し、長期的視点を持ち、蓄えを備えた経営をすべきという助言はありがたい。しかし、困難時においては、手立てがなければ逃げるしかない。逃げるしかないものの、このコロナからはどこにも逃げることができない。滅亡するのを目の前にして「あの時備えておけば良かった」と悔いても意味はありません。
天保4年に引き続き、7年に襲った大不作が「天保の大飢饉」。いわゆる「第2波」直後、二宮尊徳がおこなった「報徳仕法」によって米倉に米やヒエを備蓄していた桜町領は餓死者ゼロ。飢えに喘ぐ近隣の村々へヒエを分け与え、死者を減らしたという。
コロナ2波、3波を煽るだけのメディアやエビデンスも論拠もなくGoToのせいだと主張する日医会会長らは、累計のコロナ死者1800名よりもわずか1ヶ月で多くの人が自死を選んでいることをどう考えているのだろうか。事業の行き詰まりや精神的に追い込まれ自死を選び10月に亡くなった2200を超える人たちの命をなんと考えているのだろうか。
直ちに方向転換へ
米ウォルマートの創業者サム・ウォルトンは自伝の中で「ウォルマートの企業文化の最大の長所は、過去を全部捨て、直ちに方向転換できることだ」と記しています。
また、このコロナで居酒屋業態から焼肉・唐揚げ店へと方向転換を決断したワタミグループ会長・渡邉美樹氏は「祖業が無くなることもあり得る」といい、危機対応に入るなど、優れた経営者は危機時の素早い方向転換に躊躇がありません。
規模が違うものの、岡崎市で和食店「魚信」を営む西田さんは、3月、4月、5月と予約されていた宴会が次々とキャンセルとなり、売上は急落。それまで売上の6割以上を生み出していた宴会部門は休業、祖業である食事部門を見直せざるを得なくなりました。
やはり商売は基本が大事です。医者なら見立てがうまく治療が上手。美容院なら技術が高い。料理店なら料理が美味しいこと。この根本が良くないとうまくいかないのです。
コロナであろうとなかろうと繁盛しているお店がある一方、コロナでお客が来なくなっている店も少なくありません。
真面目に頑張っているお店であっても、コロナでお客様が来ない、ということは、コロナを言い訳にしてお店に行かない理由があるということです。そして、それは料理店としての根本が良くない、ということを世間様が教えてくれているのです。
料理店の「根本=本質」とは何か。
様々なお店で様々な指標があります。同じ料理店であっても、理想形が異なるからです。とはいえ、根本=本質=欠かすことができない重要なポイント、を掴んでいないと改善努力が的外れとなります。
例えば、料理店の本質を「料理を提供すること」と捉えると、料理を出せば良いとなるわけですが、「料理を通して心地よい時間を過ごしてもらう場」と考えれば、料理だけでなく接客サービス、空間づくりまでを含めた目指すべき理想のイメージが見えてきます。
代表的なチェーン店のマクドナルドは「Q(クオリティ=料理の質・美味しさ)・S(サービス・接客技術)・C(クリンネス・店内外の清潔さ)+V(バリュー=値段以上の価値)」の4つと示しています。
宴会ではなく美味しい食事の提供と気づいた西田さんは、宴会目当てではなく、料理店の根本=美味しいものを提供しよう、とこれまで以上に努力を重ねています。7月から釜飯事業をスタート。持ち帰りのテイクアウトにも対応できる釜飯を柱にするため、美味しさを追求、QSCVの観点から精進し続けています。
10月11月と順調に回復基調に入り七五三の季節。ようやく前年比超が見えつつあるところに、第3波という報道が直撃。11月21日から23日勤労感謝の3連休を前に動揺するお客さんから予約キャンセルの申し出が増えることが予想されます。
しかし、もう西田さんに恐れはありません。なぜなら、
美味しさにこだわり、自宅でも美味しく食べられる「海鮮釜飯」や「痛風釜飯」で第3波の到来にも備えているからです。
プロがつくる美味しい料理を、お店でも、ご自宅でも。危機を乗り越えるためにどの企業も一度根本に立ち返り、根本を磨き直す。このことがコロナによって、より重視されるタイミングとなったように思います。そして、根本(本質)を磨き上げた企業は、コロナ前よりも一層強くしなやかで優しい企業に成長していると思います。今日もありがとうございます。
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