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知識労働の生産性向上の条件は、大きなものだけで6つある  5月23日 Knowledge-Worker Productivity 知識労働の生産性向上

今日のテキストも、昨日の続き。1999年刊『明日を支配するもの』 第5章 知識労働の生産性が社会を変える>2 先進国の運命を決める知識労働の生産性>生産性の向上 169〜170ページより。


#5月23日  木曜日のランチタイムになりました。
みなさんお元気でしょうか。

本日の #ドラッカー365の金言 テーマ: 
#Knowledge_Worker_Productivity
#知識労働の生産性向上

今日の金言:
#知識労働の生産性向上のためには知識労働者を資本財として扱わなければならない

ACTION POINT :
#あなた自身の知識労働に1から6までの条件を適用してください

ドラッカーは、知識労働者の生産性向上には、6つあると記していて、それは本文を確認してもらいたいのですが、自分が最も大切なものだと感じるのは、6番目の

「知識労働者をコストではなく資本財として扱うことである。何にもまして知識労働者自身が、組織のために働くことを欲しなければならない。」

社員を消耗品ではなく、資本財として扱うことに同意して実践したのは日本企業だと彼は記していました。

日本企業の快進撃の裏には、1950年代後半の戦後復興期から継続的に来日して講演会を行ない、経営指導したドラッカーの助言があった、というわけです。

確かに、彼の助言は日本企業の飛躍の一助になったかもしれません。実際、60年〜70年半ばまでの日本企業の高度経済成長は欧米諸国にとっては「謎」とされ、ドラッカーに対して日本企業の経営について取材なども多かったようです。

「どうして日本のマネジメントがあれだけの偉業を成し遂げたのか。西欧の学者としては、日本が明治維新以後、今日まで西欧の技術を導入して、それを日本のトラディション(伝統)の上に打ち立てて、これだけのアチーブメントをしたということは、表面的にはわかるけれども、本当のことはわからない。これは大変なミステリーだ。日本では一体、どうマネジメントが行われているのか云々」

「プレジデント」1966(昭和41)年11月号“効果的な経営とは何か“
ソニーの盛田昭夫氏の元にドラッカーから届いた質問状

明治期以降、欧米に追いつけ、追い越せ、を国是として己を磨いてきた日本国であり、日本企業でした。優れた経営哲学を有するドラッカーはじめ様々な先人から経営を学び、また、様々な経営書を積極的に買い込んで、経営者はどうあるべきか、組織と経営の問題について日本企業の経営者たちは必死に学び、そして、実践して、高度経済成長を成し遂げました。

この日本企業飛躍のミステリーを解く鍵として、経営評論家の小林宏氏が1967(昭和42)年に記した『ドラッカーの世界』の中で「刀と鉄砲の問題」として考えればたちどころにわかる、と記しました。

 いくさを業とする武士にとって武器の立ち遅れは、身を滅ぼす危険を意味する。(中略)この武士の武器感覚が、明治以後、一方では、工業技術感覚に変わり、一方では軍国主義的軍備感覚となりました。
 それが工場でも兵器でも、とにかく海外のライバルに追いつけ追い越せという軍備と企業の双方における一台技術革新運動となったわけです。都合のいいことに、このような工場の武器感覚的設備の近代化は、そのまま軍国主義の武器感覚による日本の軍備拡張につながりました。そこから少々そろばんを抜きにしても、とにかく、新しい設備を入れた方が勝ち、という経済性を二の次とした技術第一主義の風潮が生まれ、それに日本的組織が一枚加わることによって、明治以後の日本の工業化は急速に進んだのです。
 この意味でいわゆる和魂洋才とは、日本的精神と外国の知識の組み合わせを表すものというより、精神的には保守主義者でありながら、武器や技術だけは新しいものを追い求める、武士の保守と進歩の特殊な性格を言い表したものというべきでしょう。

小林宏 著『ドラッカーの世界』49ページより

 戦後から高度成長期の日本企業は、必ずしも人を大切にする社風が強かったわけではないのですが、家族主義的経営が成され、一体感を重んじた経営がどの会社でもなされていたように思われます。

 有名なところで、ソニー厚木工場の経営を担った小林茂氏はその著書『ソニーは人を生かす』にて「生きがいは人を生かす」「生きがいある組織は可能である」と繰り返し記し、その経営実践の記録を明らかにしています。

ソニーが先か、ドラッカーが先か、それは、わかりませんが(ソニーが先のような気もする)、ドラッカーが日本企業の高度成長の秘訣として、ソニーや日本企業をヒントに、「知識労働者をコストではなく資本財として扱うことである。何にもまして知識労働者自身が、組織のために働くことを欲しなければならない。」と記したのではないか、と感じた次第です。

そして、ドラッカーが記すまで、「労働者をコストではなく資本財として大切にする」経営は、欧米をしても為されていなかったのかもしれません。

 ドラッカーの提言を有り難がってお経のように読むのも結構ですが、もう1歩踏み込んで、ドラッカーがなぜそのテキストを記したのか、を考えてみるといいかもしれません。

 ドラッカーはいくつもの事実から抽象度を高めて、現象や変化を見出す、という方法を取っています。

 そこに気づけば、実は、ドラッカーが入手した情報や目にした現象や事実の方が先にあるわけです。

日本企業経営者たちに「どうやって経営しているんだ?」と尋ねても「あなたのいうとおりや著書に記された方法通りにやっている」と答えたから、余計に「謎」だったんだと思います。

ドラッカーが「謎」といっていた日本企業の飛躍の秘訣は、小林宏氏によれば、武器としての新設備だし、小林茂氏によれば、家族主義的経営です。

太平洋戦争の前半、向かうところ敵なしだった「零戦」が1942年6月ほぼ無傷でで連合軍に鹵獲され、この機体の徹底的な研究によって解析された後、零戦を上回る性能を持つグラマンF6Fやシコルスキー、P51の高性能機が投入されたこと、そして、日本海軍の暗号も解析され、戦略的な失敗が繰り返された結果、わが国は敗戦に至りました。

日本企業の60〜74年の高度経済成長も、その「謎」が解明されて、日米貿易戦争に敗れ、1985年のプラザ合意、そして、1990年のバブル崩壊から、すっかりダメになったまま中国、ドイツ、そして、インドにもGDPが抜かれるという「落ちていく」時代がすでに30年以上も経過しています。

何度ダメになっても、不死鳥のように蘇るのが、わが国です。それを共に支えるあなたの今日の活躍に期待しています。

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