12月24日 Human Existence in Tension 人間の実存
メリークリスマス!
今日の #ドラッカー365の金言 テキストは1939年初版の『 #経済人の終わり 』、『 #すでに起こった未来 』12章 #もう1人のキルケゴール 279〜283ページ 1994年版より。
聖夜を迎えるにあたり、「人間の実存」というなんだか高尚っぽいテーマです。
抽象的なテーマになるときに必ず行うことがあります。
それは、単語の意味を調べることです。
例えば、今日の話なら、
「実存」とは?
「人間の実存」とは?
と調べることです。
AIによれば、「実存」とは、
1、「実存」とは何か:多様な視点から探求する
実存という概念は、哲学、文学、心理学など、様々な分野で深く掘り下げられてきた普遍的なテーマです。一言で定義することは難しく、人によって解釈が異なる多義的な言葉ですが、ここでは、哲学、心理学、そして現代社会における実存の意味について、いくつかの側面から探求してみましょう。
「実存」とは何か。
余計わからなくなりますな〜。では、「人間の実存」とはなんでしょ?
2、「人間の実存」とは?
例えば、文学作品の中で「人間の実存」という言葉が出てきた場合、作者が表現したいのは、主人公が抱える孤独や葛藤かもしれません。一方、哲学的な文脈では、人間の自由や責任といった普遍的なテーマが強調されるでしょう。
要するに、いろんな表現、コンテキストの中で出てきた表現なので、「これ」とは決めつけられませんよ、と言うわけですわ。
3、キルケゴールの実存とは?
今回は、ドラッカーが『 #すでに起こった未来 』12章 #もう1人のキルケゴール 279〜283ページ で出てきた表現の中で、「実存」「緊張下における人間の実存」という表現が出てきています。この文脈の中から、ドラッカーの意味するところはなんなのか、それを探っていきましょう。
まずは、今日のテキストから「実存」について記されている箇所をみていきましょう。
ドラッカーが1939年に発表した処女作『経済人の終わり』に記されているのは、ドイツにおいて、経済人=「経済上の満足だけを社会的に大事なもの、意義あるものとみる人」のことで、経済的メリットのために合理性を追求し、行動する人が内包する全体主義によって、自由主義経済の資本主義が終わってしまうことでした。
この場合、合理的自由の矛盾から免れる途は1つしかありません。
それは、合理主義を放棄することです。
ヒトラー率いるナチス党は、第一次大戦の莫大な賠償金を連合国から押し付けられた上に、戦後不況、スペイン風邪のパンデミック、企業倒産・失業の憂き目に遭い、食うや食わずという、まさに、絶望という「緊張状態にある中での人間の実存」が問われる中で必死こいて生きなくてはならない現実に接している多くのドイツ国民に対して、
自由主義的信条を表向きは固持するよう見せかけるポピュリズム(=政治変革を目指す勢力が、既成の権力構造やエリート層を批判し、人民に訴えてその主張の実現を目指す運動)によって、非合理的な独裁ファシズム全体主義を、革命的であるか如く洗脳に成功し、政権奪取に成功しました。
ドイツ国民にとって、失業という絶望=「緊張状態にある中での人間の実存」が問われる中、必死こいて生きなくてはならない、そんな不都合な現実で、ファシズム政権から与えられるものは、国民に最低限のもの。それでも、国民は、そんな不満足なものでもゼロよりは良いと、そんな不自由すら、受け入れざるを得ない状況だったのです。
そのことを、ドラッカーがキルケゴールの思想に触れ、「緊張状態にある中での人間の実存」と述べているのではないかと感じるのです。
さて、ドラッカーの言葉から読み取れる意味合いを、いくつかの角度から考察してみましょう。
1. 選択の自由と責任の緊張
キルケゴールは、人間は自由な選択を与えられている一方で、その選択に対して責任を持たなければならないと説きました。この自由と責任の両立は、常に人間を緊張状態に置くものです。ドラッカーが「緊張状態」と述べているのは、この内的な葛藤を指している可能性があります。
具体的な例:
ある仕事を選ぶか、別の道を選ぶか。
自分の欲望を満たすか、道徳的な行動をとるか。
既存の価値観に安住するか、新しい価値観を創造するか。
2. 有限な存在としての不安と希望
人間は有限な存在であり、死という終わりが訪れます。この有限性に対する不安は、人間を常に緊張状態に置きます。しかし、同時に、有限だからこそ、人生に意味を見出そうとする努力が生まれるという希望も孕んでいます。
具体的な例:
時間の有限性: 時間は有限であり、やりたいことをすべて達成できるわけではないという事実。
生命の有限性: 病気や老い、死といった不可避的な出来事に対する不安。
人生の無意味感: 人生に意味を見出せないという虚無感。
3. 社会との関係性における緊張
人間は社会的な存在であり、他者との関係の中で生きています。しかし、個人の自由と社会の規範との間には常に緊張関係が存在します。この緊張状態の中で、人間は自己を確立し、社会の一員として生きていく必要があります。
具体的な例:
個と社会の対立: 個人の自由と社会の秩序との間での葛藤。
多様な価値観の共存: 異なる価値観を持つ人々との共生。
変化する社会への適応: 常に変化する社会の中で、自己を再定義すること。
4. 真理への探求と自己矛盾
キルケゴールは、真理は主観的な体験を通してのみ獲得できると主張しました。しかし、人間の認識は常に不完全であり、自己矛盾を抱えながら生きています。この真理への探求と自己矛盾の両立もまた、緊張状態を生み出します。
具体的な例:
信仰と理性: 信仰と理性は両立し難いものであり、常に緊張関係にあります。
善悪の判断: 善悪の基準は時代や文化によって異なり、絶対的な善悪が存在しないという問題。
自己認識の困難さ: 私たちは自分自身を完全に理解することはできません。
まとめ
ドラッカーが「緊張状態にある中での人間の実存」と述べたのは、キルケゴールの思想が、人間が常に直面する内的な葛藤や外部からの圧力、そして自己と世界との関係性における緊張状態を強調していることを意味していると考えられます。
この「緊張状態」は、決してネガティブなものではなく、むしろ人間が成長し、自己を確立するための原動力となるものです。ドラッカーは、この緊張状態を乗り越えるために、個人が主体的に考え、行動することが重要であると主張しているのかもしれません。
4、ドラッカーの現代社会への見解と実業家への助言:深掘り分析
ドラッカーのこの見解は、一見すると宗教的な色彩が強く、実業家への助言としては直感的には結びつきにくいように思えます。しかし、この見解の根底にあるのは、社会と個人の関係性、そして人間の存在意義に対する深い洞察です。この思想を、実業家という立場からどのように解釈し、行動に移せるのかを具体的に考えてみましょう。
ドラッカーの主張の核心
社会の合理性の解体と個の喪失: 現代社会は、合理性や効率性を追求するあまり、個人の主体性や存在意義が軽視されているという指摘です。
絶望からの脱出: 社会は、個人が生きる意味を見出し、死を恐れずに生きられるような環境を提供する責任があると主張しています。
全体主義への警鐘: 個人を社会の一部として溶け込ませることは、全体主義につながる危険性を孕んでいると警告しています。
信仰の力: 個人が生きる意味を見出すためには、信仰のような超越的な価値観が必要不可欠であると説いています。
実業家への示唆
ドラッカーのこの思想は、実業家に対して、以下の点で重要な示唆を与えています。
企業の社会的責任:
個人の成長の支援: 企業は、単なる利益追求の場ではなく、従業員が自己実現できる場となるべきです。
社会貢献: 企業は、社会の問題解決に積極的に関与し、より良い社会の実現に貢献すべきです。
長期的な視点: 短期的な利益追求だけでなく、社会全体の持続可能な発展を視野に入れた経営を行うべきです。
リーダーシップのあり方:
ビジョンの提示: 組織のメンバーが共有できる、意義のあるビジョンを提示し、モチベーションを高める必要があります。
多様性の尊重: 個人の違いを認め、それぞれの強みを活かせるような組織文化を醸成する必要があります。
倫理的な経営: 法令遵守はもちろんのこと、倫理的な観点から経営判断を行う必要があります。
従業員との関係性:
人間関係の重視: 従業員一人ひとりと誠実に向き合い、信頼関係を築くことが重要です。
働きがいのある環境づくり: 従業員がやりがいを感じ、成長できるような環境を提供する必要があります。
企業文化の醸成:
共通の価値観: 組織全体で共有できる価値観を明確にし、行動指針とする必要があります。
目的意識: 企業が社会に対してどのような貢献をするのか、その目的意識を組織全体で共有する必要があります。
実業家が注意すべき点
宗教的な要素: ドラッカーの主張は宗教的な要素を含んでいますが、企業経営においては、宗教的な価値観を強制することは避けるべきです。
全体主義: 個人を社会に溶け込ませることが全体主義につながるとの指摘は、過度に個人主義を強調することにもつながりかねません。
現実とのバランス: ドラッカーの思想は理想論的な側面も強く、現実の企業経営においては、様々な制約の中でバランスを取ることが求められます。
まとめ
今日の提言も含めて、特に、初期のドラッカーの思想は、一見すると社会的なものに加えて、宗教的な色彩が強く、実業家には遠い存在に思えるかもしれません。しかし、その根底にあるのは、人間がより良く生きるためには、社会と個人の関係性をどのように構築すべきかという普遍的な問いに対する答えです。
実業家は、ドラッカーの思想を参考に、企業が社会に対してどのような役割を果たすべきかを深く考え、自社がより良い社会の実現に貢献できることは何かを定義して行動するべきでしょう。
具体的な行動指針としては、以下の点が挙げられます。
社会課題の解決: SDGsなど、社会が抱える課題の解決に積極的に取り組む。
多様な人材の活用: 多様なバックグラウンドを持つ人材を採用し、組織の多様性を高める。
従業員の成長支援: 教育研修制度を充実させ、従業員が自己成長できる機会を提供する。
ステークホルダーとの共存: 顧客、従業員、地域社会など、様々なステークホルダーとの関係性を重視する。
長期的な視点: 短期的な利益だけでなく、長期的な視点で企業経営を行う。
ドラッカーの思想は、単なる理論にとどまらず、具体的な行動指針として、実業家の経営に大きな影響を与える可能性を秘めています。
ということで、ドラッカーとキルケゴールの「緊張下における人間の実在」という抽象的な概念に対して色々と論じてきましたが、いかがでしたでしょうか。それでは、良いクリスマスを!