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河野太郎は時代遅れ? 人事は他人を変えることではないよ 9月6日 Performance Appraisals 人事のための4つの問い

9月6日金曜日です。
今日の #ドラッカー365の金言 テキストは、昨日と同じく『 #経営者の条件 』1966年版 161〜162ページより

#自民党総裁選 候補者の #河野太郎 氏が解雇規制緩和について言及したそうです。

「企業は一度雇うと未来永劫(えいごう)抱え込まなければいけないから、どうしても(非正規雇用者の正規採用を)ちゅうちょしてしまう。柔軟に採用できるような枠組みをつくることが正規と非正規の格差を縮めることにつながる」と語った。
 労働基準法では労働者の権利を保護するため、解雇に一定の制限が設けられている。河野氏は「会社都合で一方的に解雇されたときに金銭補償のルールがあることが大事だ」と述べた。
 河野氏は「今の日本の経済はまず個人消費が力強くならないといけない。いかに賃金を上げていくかに焦点を絞る必要がある」として、雇用の流動化などを通じて賃上げに全力を挙げる考えも示した。 

https://news.yahoo.co.jp/articles/90130643f99ede9e3faaa951ad67cf77ed6d749f より


以前↓でもお伝えしましたが、

そもそも高度経済成長期、日本の企業は人事評価シートを使っていなかった、という事実があるのをご存知でしょうか。ドラッカーはその模様を大層驚いて以下のように記しています。

 今日、大部分の組織で使われている評価制度は、元々臨床心理学者や異常心理学者によって、彼ら自身の特定の目的のために設計されたものである。臨床学者、内視は臨床研究科というものは、病人を治療するために訓練された人である。(中略)経営者の育成に関するセミナーを開催してみて、私は、参加者の誰もがー彼らは全て、非常に大きな組織体の上層経営者たちであったがー評価というものを使っていないことを知って、非常に驚いた。「なぜ使わないのか」と私が質問すると、彼らのうちの1人が次のように答えたのである。「あなた方の使っている評価というものは、人間の持っている欠点や、弱点といったものを引き出すことにしか関心がないからです。日本においては、我々は従業員をクビにすることもできなければ、彼らの昇進のチャンスを拒むこともできないので、このような評価は我々にはあまり興味がないのです。むしろ、我々は、従業員の弱みについて知るところが少なければ少ないほどいいのです」

同書、157〜158ページより

 人事制度が改悪?されていなかった60〜70年代、日本企業は成長著しい時代でした。ところが、90年代以降?採用されてきた欧米式の人事評価制度の結果、日本企業は低成長、そして、バブル崩壊後「失われた平成30年間」となった、ということでしょうか?

確かに現在の一度雇ったら首にできない解雇規制について、経営の柔軟性がもてず、いわゆる「不良社員」を抱え続けるリスクを経営側が甘受しなければならない点は、欠点と言えるかもしれません。

しかしながら、中途採用市場が現状のような限定的でブルーカラーワークしかない状況において、ホワイトカラー職の社員を金銭を払ってクビにしたら、社会保障負担まっしぐら。国家全体としてみたら、企業のツケといったら失礼ですが、それを国に付け替えてるだけと言えるんじゃないでしょうか。

今の若い人は知らないと思いますが、昭和30年ごろ、今の経団連と労組との協定がありました。

当時は日本全体がまだ貧しい時代です。その際に、国民が豊かになるまで労使協調して頑張っていこう、公平に分配しよう、と協定が結ばれました。

 日本生産性本部には経済界・労働界・学識者の三者が参画しており、生産性運動の推進には労使の協力が不可欠との設立当時の強い思いを反映して、「生産性運動三原則」(①雇用の維持拡大、②労使の協力と協議、③成果の公正な分配)を掲げています。

生産性運動 https://www.jpc-net.jp/movement/movement.html

1.生産性の向上は,究極において雇用を増大するものであるが,過渡的な過剰人員に対しては,国民経済的観点に立って能う限り配置転換その他により,失業を防止するよう官民協力して適切な措置を講ずるものとする。

2.生産性向上のための具体的な方式については,各企業の実情に即し,労使が協力してこれを研究し,協議するものとする。

3.生産性向上の諸成果は,経営者,労働者および消費者に,国民経済の実情に応じて公正に分配されるものとする。

https://www.jpc-net.jp/movement/assets/pdf/domestic_19550520.pdf

この三原則を踏まえて、ドラッカーの『経営者の条件』を読み直してみましょう。日本の大企業経営者が人事考査を使わない理由が記された箇所に戻って読んでみると、その理由がより一層明確に理解できるでしょう。

「あなた方の使っている評価というものは、人間の持っている欠点や、弱点といったものを引き出すことにしか関心がないからです。日本においては、我々は従業員をクビにすることもできなければ、彼らの昇進のチャンスを拒むこともできないので、このような評価は我々にはあまり興味がないのです。むしろ、我々は、従業員の弱みについて知るところが少なければ少ないほどいいのです」

同書より

「むしろ、我々は、従業員の弱みについて知るところが少なければ少ないほどいいのです」

経営者側のこの態度が、失職を恐れず、従業員のチャレンジ精神を促し、それが結果的に高度経済成長を呼び込んだのかも知れないなと思います。

河野氏がどのように解雇規制について述べたか詳細不明ですが、トップダウン式のワンマン経営を意識した上で、言うことを聞かず貢献しない部下はいつでも首にしていいんだ的な浅はかな考えで組織運営したら、職場の「心理的安全性」が失われ、経営者へのイエスマンばかりで暴走を止めることのできない組織が輩出されることにならないだろうか?

確かに今も中小企業のほとんどがワンマンな経営者やリーダーが少なくないでしょう。かといって、「はい、クビ」とやっていては、若年人口減少のこの雇用情勢で新たな人材を雇うことは難しいでしょう。

人間は部品ではありません。壊れたからとっかえろ、というもんじゃないと思いますが、いかがでしょうか。

今日のテーマ:
#Performance_Appraisals (パフォーマンス(成果)の鑑定)
#人事のための4つの問い

今日の金言:
#腐った強いものほど組織を腐らせる者はいない

今日のACTION POINT:
#次の人事考査では実際にこれら4つの問いを考えてください

人事考課のための4つの問いを投げかける。
第1に、よくやった仕事は何か、したがって
第2に、よくできそうな仕事は何か、
第3に、強みを十二分に発揮させるには何を身につけさせなければならないか、
第4に、その下でわが子を働かせたいか

(『経営者の条件』1966年版 161〜162ページより)

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