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枯れゆく魅力

私が初めて教わったお花の先生はイボンヌ先生と仰います。私が南アフリカに住んでいた20年も前のこと。

マダムイボンヌは高齢にも関わらずいつもお洒落にコーディネートした格好をしていて、お髪はいつも丁寧に整えられていました。レッスンでご自宅に伺うと室内の至る所にお花がさり気なく、咲いているように飾られていて、マダムイボンヌの人生のポリシーが感じられる空間はとても美しいものでした。

花瓶の中の花たちは自然界で咲いている時より、まるでイボンヌ邸の花瓶で咲いている方が幸せよ、と言っているように見えました。

花瓶の周りには花びらが落ち、一部は盛りを終え、俯き加減。中にはほぼ枯れているのでは…というものもありました。でも不思議と汚いとは感じなかったし、むしろ花々が咲く庭の中にマダムイボンヌの家具が置いてあるような錯覚すら覚えたほどです。

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ある日「枯れた花をなぜ飾るのですか?」と思わず聞いてみるとにっこり微笑んで仰いました。

「枯れゆくものには魅力があると思うからよ。見て。咲いている時にはないマチュア(mature)な魅力があるじゃない?人生と同じ。」
まだ20代だった私は、80代のマダムイボンヌからのその言葉に感動はしたものの、今ほどの納得の境地には到達していなかったなあと思い出されます。

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私も今は秋が好き。
青々と緑が光る庭には上に向かうエネルギーを感じ心地よいのですが、秋の庭には何事も自然に受け入れている無理をしすぎない強さとまだまだ大丈夫という包容力があるから。

秋になると枯れゆく花木に己の人生を見出します。そしてその魅力を教えてくれたマダムイボンヌを思い出すのでした。

皆さま良い実りの秋をお迎えください。

※写真は全て天然ダイヤモンドです。色合いは全て天然起源。3年前に発売した秋の新作「Antique Rose」。薔薇の蕾のようなカットを施したダイヤモンドを使っているのでそう名付けました。


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