痛みの 足音
高校2年 修学旅行
右足が腫れ、痛みが走る。
足はもはや自分のものではないようだった。
痛み止めさえあれば
――そう信じていた。
「これさえあれば、私は歩ける。問題ない」
そうやって飲み始めた薬は、
朝、昼、夜と
効果が切れるたびに増えていった。
それが病気を治すわけではないことなど、
あの頃の私は考えもしなかった。
高校卒業
「卒業後、何をする?」
その答えは、案外簡単に決まった。
幼少期通っていた歯科医院にいた「お姉さん」
彼女が友人のお母さんだと知り、
なんだか親近感を覚えた。
彼女が「歯科衛生士」という職業に
就いていると知ったとき、
私の未来は自然とその方向へ動き出した。
歯科衛生士 🦷 専門学校
初めての一人暮らしは、期待しかなかった。
田舎を離れ、神奈川県横浜の街に足を踏み入れた瞬間
胸は高鳴り、不安なんて一つもなかった。
授業、アルバイト、新しい友人たち。
すべてが新しく、刺激的で、毎日が目まぐるしく過ぎていった。
そして『歩き回った』。
とにかく、たくさん歩いた。
臨床実習が始まる頃、
足の痛みが再び顔を出した。
痛みはひどくなり、
毎日の生活をじわじわと侵食していった。
だが、実習生の立場で
「足が痛い」などと言うことはできなかった。
そんなことを言えば、どうなるか。
だから、私は黙って、我慢した。
ロキソニン ロキソニン ロキソニン
――それだけが、私を支えていた。
やがて、耐えきれず循環器内科のクリニックに通い始めた。
そこで初めて「弾性ストッキング」
というものを知った。
「私の病気って、なんだ?」
そんな問いが頭をよぎったが、
深く考える余裕もなかった。
医療従事者を目指す自分が、
自分の身体のことをわかっていない。
皮肉なものだ...
2年が経ち、
歯科衛生士としての道を進む準備が整った。
新たなスタートラインに立つその瞬間、
私は自分の足を見つめていた。