面白法人カヤック×DHU企画「失敗作ミュージアム」をつくった人たちが語る、ベストを尽くした経験の大切さ
すべての失敗に、拍手喝采を。
2022年1月。デジタルハリウッド大学(DHU)と面白法人カヤック(以下「カヤック」)のコラボレーションにより、新しいオンライン展示会が誕生しました。その名も「失敗作ミュージアム」。DHUの在学生や卒業生の失敗作を通じて、失敗の多様性や面白さを味わうとともに、これからの世界をつくる若者に向けて刺激やエールを届けることを目指しています。
「過去の失敗作」と「現在作」を見比べることで、個々人の成長を感じることのできるこのミュージアム。しかし、企画・制作に携わったカヤックとDHUの担当者は「ただ過去の失敗を笑うためのものではない」と語ります。
失敗作にフィーチャーした本企画のねらいはどこに——?。企画立案からミュージアムの運営までを担当する面白法人カヤックの白井章平さん、山口真吾さんと、DHU卒業生で入試広報スタッフの安東虎太郎さんにインタビューしました。
▲左から、山口さん、白井さん、安東さん。
山口 真吾(やまぐち しんご)
1979年長野県生まれ。面白法人カヤックのCopywriter/Creative Director。新卒時に書いた「ポストが真っ赤になるようなラブレターを書こう」というおセンチなコピーが偶然誉められて書籍化されて以来、勘違いして広告の企画に長く携わる。言葉と映像が武器。
白井 章平(しらい しょうへい)
1987年愛知県生まれ。面白法人カヤックのプランナー。美大卒業後に「卒制採用」という制度でデザイナーとして入社後、社内転職でテクニカルディレクターとしてうんこミュージアムの企画/制作を経て現在に至る。
「失敗」のあり方はひとつではない。それぞれの失敗観が生きる展示を目指した
——「失敗作ミュージアム」を企画したねらいを教えてください。
DHU・安東:ひとつは、DHU生が手掛けた作品のビフォーアフターを見ることで、DHUで4年間勉強するとこんな作品がつくれるようになるんだよ、と理解してもらうため。もうひとつは「クリエイティブなことって難しそう」と考えている人たちの背中を押すためです。
大学のパンフレットやWebサイトで紹介されている作品だけを見ると、「自分がここまで上達できるのだろうか」と不安になる受験生も少なくありません。学びたてのころの作品とその解説をあえて見せることで、失敗することを恐れず、もっとポジティブに捉えてほしいという思いから、企画を進めていきました。
——作品はどのように集めていったのですか?
DHU・安東:在学生に直接声をかけたり、その学生から紹介してもらったり、教職員の中から推薦をもらったり。まさに数珠つなぎのようでした。
——学生の反応はどんなものだったでしょうか。
DHU・安東:「面白そう!」という反応が多かったですね。企画そのものもそうですが、面白法人カヤックさんとの取り組みであることに魅力を感じてくれた学生が多かったように思います。でも、想定していなかった返事がきてヒヤッとしたこともありました。
——想定していない反応?
DHU・安東:プロジェクトが走り始めたころは、協力を募るときにストレートに「失敗作はありますか?」といった聞き方をしていたんです。でも、卒業生の瀬尾拡史さんに依頼を差し上げた際、「失敗しようと思って作っていないので、失敗作はありません」とハッキリおっしゃって。
カヤック・白井:そうそう、急遽DHUとカヤックの2社で打ち合わせしましたね(笑)。でもよく考えると、瀬尾さんが制作しているのは医療分野での使用を想定した3DCG作品。人の命に関わる現場ですから、プロフェッショナルとして失敗はないと考えるのは自然なことだったんです。
カヤック・山口:それを機に、私たちも改めて失敗について考えを深めていきました。失敗学について学んだり、「失敗」をテーマにした書籍やWebサイトを改めて眺めたり……。
学生の話を聞く中でも、失敗があるから今があると話す人、楽しみながら作ったから失敗じゃなかったと振り返る人など、一人ひとりに違った「失敗観」がある。オンラインミュージアムとしての見せ方を考えるのは難しかったのですが、DHUさんと我々でディスカッションを重ねて、一人ひとりの失敗観を最大限に尊重する方向で落ち着きました。
カヤック・白井:そういえば、失敗作に対しての本人コメントもすごく面白かったですよね。「変なプライドが邪魔して復習することもなかったです」とか「イラレの使い方分からなかったんだもん。」とか(笑)。
▲「変なプライドが邪魔して復習することもなかった」の近藤諒さん作品
▲「イラレの使い方わからなかったんだもん」の天野ハナさん作品
カヤック・白井:僕は美大出身なのですが、当時の青さを思い出させてくれるようなコメントも多く、初期衝動にかられていたころの記憶がよみがえりました。
卒業制作で味わった「この世の終わり」。カヤック担当者が振り返る失敗作
——DHU生の失敗作に触れることで、ご自身の過去の失敗について思いを巡らせることはありましたか。
カヤック・山口:仕事をしているとどうしても、自分の失敗が会社の損失にもつながってしまうから、失敗を減らそうという気持ちになってしまいます。それはもちろん良いことなのですが、反面「あ~あのころにもっとやっておけば良かったな」という気持ちにもなる。
路上で許可なしで撮影してもよかったのかもしれないとか、発煙筒を焚いてもよかったのかもしれないとか(笑)。
カヤック・白井:僕が思い出すのは、卒業制作のフォグスクリーン(※板状に立ち上る霧に映像を投影すること)事件ですね。
——じ、事件ですか?
カヤック・白井:フォグスクリーンを自作しようとして、高圧洗浄機と農業用のノズルを買いそろえてなんとか作ったんですが、水圧の関係でノズルがぶち壊れて(笑)。使っていた機材が業務用だったので、10万円の損失を出しました。卒業制作のために持っていた一眼レフを売って高圧洗浄機に替えたのに。終わった…と思いました。
カヤック・山口:学生にとっての10万円は「終わり」ですね。
カヤック・白井:提出期限まであとわずかで、材料はないしお金もない。すべてを失った気分になりましたが、時間とお金が許す限り頑張ろうと思い、テーマはぶらさず表現方法をまるっと変えて完成させました。
学生時代の失敗って、この世の終わりと思ってしまうくらいの絶望を味わうことがありますよね。でもそこからどう改善し、どんな新しいものをつくっていくか、その過程は誰かが見ていてくれるはず。全力でチャレンジした結果としてのほろ苦い思い出があるからこそ、多くの人の心の琴線に触れる作品がつくれるのではないかと思っています。
多様な失敗が生まれる場=DHUで、ホームランを狙うチャレンジを。
——「失敗作ミュージアム」を通じて、DHUはどのような学校だと感じましたか?
カヤック・白井:弊社にも、失敗を振り返って評価する制度があります。失敗の数=挑戦の数と捉えるDHUや失敗作ミュージアムにも通ずる部分があるのではないでしょうか。
この取材の前に2021年度の卒業制作展にもお邪魔させていただき、卒業生たちの作品にたくさん触れたのですが、良い意味で統一されていない印象を受けました。
僕が卒業した美大では、学科ごとに展示のフォーマットを決めて、それに当てはめて展示を完成させていました。しかしDHUの学生は枠にはまらず、自分の「好き」を純粋に突き詰めてとがった作品を仕上げて展示していますよね。
DHU・安東:おっしゃる通り、「理想のクリエイターとはこうあるべきだ」といった教え方はしないですね。同じゼミ内でもデジタル・アナログ問わず、多種多様な作品が卒業制作としてあがってくるところは特徴と言えるかもしれません。
——最後に、これから失敗に立ち向かっていく高校生に向けてエールををお願いします!
DHU・安東:DHUが提供するのは知識や技術であって、それを吸収してどう表現するかは自分次第。学生が豊かに表現できる環境を私たちが全力で作っていくので、失敗を恐れず思い切りチャレンジしてください!
カヤック・山口:小さい失敗からは、学べることも小さい。ホームランを狙えば失敗しても大きなものが得られるし、成功したら「めちゃくちゃ成功」になるはずです。大きく失敗した方が気持ちも良いですしね。学生のうちに、大きなチャレンジをしてほしいです。
カヤック・白井:本気でやれば、きちんと見てくれる人がいます。とにかく全力で!応援しています!
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いかがでしたか?
デジタルハリウッド大学は、デジタル分野の専門スキルを幅広く学びながら、これからを未来をつくるみなさんの挑戦を後押しします。カリキュラムや卒業生についてもっと詳しく知りたいという方は、下記リンクへどうぞ!
▼デジタルハリウッド大学HP
https://www.dhw.ac.jp/
▼デジタルハリウッド校友会(卒業生インタビュー)
https://dhaa.jp/interview
▼失敗作ミュージアム
https://www.dhw.ac.jp/p/shippai
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