【読書】徳川幕閣
時代の移り変わり、新体制の構築期では、多彩な人物の壮絶な「権力争い」がしばしば起こっている。一昨年話題になった、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも執権の北条氏が権力を握るまでの「権力争い」が描かれた。
こういった時代の移り変わりでは、壮絶な「権力争い」を繰り返しながらも、新体制の「骨組み」が構築されていく。この現象は、様々な時代や国で共通してみられる印象だ。
そんな時代の移り変わりの大きな「権力争い」の例として江戸時代が挙げられる。多くの人が知っているように、江戸時代は、徳川家康が1603年に征夷大将軍に任じられて以降、約260年続いた時代だ。
この長きく続いた江戸時代の「骨組み」が如何にして作られたのか、に迫った本として、「徳川幕閣」(藤田保 著: 吉川弘文館)を読んだ。
江戸時代の政治機構である江戸幕府は、強固な「官僚機構」を持った組織として知られる。しかしながら、この強固な「官僚機構」は、徳川家康の元に集まった多彩な人物が、お互いに「権力争い」を繰り返しながら形成された組織でもある。
本書は、初代 徳川家康〜4代 徳川家綱までの「権力争い」を分析し、江戸幕府の強固な「官僚機構」が形成される経緯に迫った書籍だ。
もともとは1965年に刊行された書籍だったが、この度、吉川弘文館から再版され、私も読むことができた。
本書を読んでいると、徳川家康の元に集まった人物の、その多彩さに驚いてしまう。本多忠勝や酒井忠次に代表される武士団のみならず、僧侶の南光坊天海や金地院崇伝、商人の茶屋四郎次郎や角倉了以、外国人のウィリアム・アダムス(三浦按針)やヤン・ヨーステンなどだ。
どの人物も何気なく知ってはいたが、改めて並べてみると、江戸幕府の創世記には多種多様な人材が、活躍していたことが再確認される。
徳川家康の時代に活躍したこれらの人物は、それぞれの強みを活かして活躍していたが、本書では2代 秀忠から3代 家光、4代 家綱にかけて、人材の多様性が減少し、幕府と大名の関係が中心の強固な「官僚機構」に移行する様を描く。
本書を読んでいると、多彩で魅力ある人物がどんどん退場していき、「真面目で安定的な(悪くいうと面白味のない)」体制のできる過程が体系的に理解できて、非常に面白かった。
他の時代や国でも、同様の事象はよくみられる印象なので、色々と比較してみたいとも思える本だったね。
江戸時代初期の政治体制を理解するには、うってつけの本だった。
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